「歯みがき」について、気になる疑問に中村先生がお答えします
前編では、中村先生に歯ブラシを使った本格的なデンタルケアを教わりましたが、後編では、生徒さんたちの歯みがきに関する気になる疑問に、中村先生がお答えします。
【講師:中村恒彰先生 プロフィール 】
中村恒彰 先生
獣医師の資格をもち、ライオン商事でペットの口腔内トラブル解消を目的としたデンタルケア製品や、歯みがき指導プログラムの開発に携わる、ペットのデンタルケア・オーラルケアのプロフェッショナル。
Q.歯ブラシは犬専用のものでないとだめですか?
(石合チェリーちゃん:左)
A. できればペット用のものがおすすめです。人用の歯ブラシは毛先が硬すぎます。子ども向けのものでも意外と硬く、むしろ大人向けの歯周病対策用のほうが柔らかいです。ゴールデンなどの大型犬なら、これで代用できます。それと、口のサイズに合ったものを選ぶことも大切です。ヘッドが大きすぎるとうまくみがけません。
▲毛先の柔らかさやヘッドのサイズなど、歯みがき効果を十分に得るには、歯ブラシ選びも大切な要件。
Q.歯みがきすると血が出ます。強くこすりすぎですか?
(石合ベガちゃん:右)
A. よほど強くこすらない限り、普通は歯茎から出血することはありません。血が出るというのは、歯茎が歯肉炎を起こしている可能性があります。
出血におじけづいてお手入れをやめてしまうのではなく、むしろ歯茎をよくマッサージしてあげましょう。
▲歯茎に出血がみられたベガちゃん。少し炎症を起こしているようです。
チェリーちゃん、ベガちゃん、おつかれさま!習慣にしようね♪
Q. 歯みがきはいつするのがいいのでしょう?
(斉藤パイ君)
A. 夜、寝る前など、愛犬がリラックスしているときに、飼い主さんとのコミュニケーションタイムとして習慣にできるといいですね。
また、お散歩前に、ササッとお手入れするのもいい方法です。楽しいことを前にして、ワンちゃんの気持ちが高揚しているので、少しぐらい嫌なこともがまんできます。くり返し行っているうちに、歯みがきをしないとお散歩に行けないと思うようになり、歯みがきからお散歩までが一連の行為となるので、受け入れやすくなります。
▲パイ君は歯みがきジェルがすっかりお気に入り。「これがあれば、歯みがきも大丈夫そうな気がしてきました」と飼い主さん。
すっかり歯ブラシに慣れたパイ君。おつかれさま!
Q. 歯みがきは、毎日、全部の歯をみがかないといけませんか?
(待谷COCO君)
A. 毎日、すべての歯をみがくのが基本ですが、ワンちゃんの集中力がつづかないのであれば、今日は左側、明日は右側、明後日は前・・・などと、分割してみがいてもいいでしょう。ただし、ワンちゃんの歯垢は3~5日で歯石になってしまいます。そうなる前に、少なくとも3日で1サイクル終わるようにしてください。
▲お手入れしていたつもりなのに、中村先生から奥歯の歯石付着を指摘されたCOCO君。飼い主さんは、「毎日1ブロックずつ集中して、みがき残しがないようにしよう」と決意。
小さなお口だけど、がんばろうね。COCO君!
また炎症は歯だけにとどまりません。上顎の奥歯の歯根周囲の骨を溶かして目の下に穴が開いたり (外歯瘻/写真右)、下顎の骨が吸収されて薄くなり、簡単に折れてしまうこともあります(下顎骨折)。さらに最近では、歯周病が心臓病など内臓疾患の原因になる可能性も指摘されています。
(写真提供 フジタ動物病院)
こうした恐い歯周病を予防するために、日頃からしっかりデンタルケアに取り組みたいですね。ただし、すでに歯石が付着して歯周環境が悪化している場合は、まず動物病院で歯石を取り除いてからでないと、歯みがきをしても十分な効果が得られにくくなります。
本来、ワンちゃんのお口は無臭。もし口臭が気になるようなら、歯周病のサインかもしれません。一度、動物病院でデンタルチェックを受けることをおすすめします。
今回で、オーラルケア講座のシリーズは終了です。皆さん、いかがでしたか。
もしできなくても焦らないこと。
飼い主さんが心に余裕をもち、ごほうびやほめ言葉をたっぷりかけながら、歯みがきを愛犬との楽しいコミュニケーションタイムにしていってください。
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【記事制作協力】 ライオン商事株式会社
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