犬猫の病中病後・高齢期の治療サポートに特化した施設「Cure Lab(キュアラボ) 」とは?

腹腔鏡手術やCT検査で知られる、東京都目黒区の自由が丘動物医療センター内にある「Cure Lab by GREEN DOG」(以下Cure Lab)。獣医療だけでなく、犬や猫のホリスティックケア・カウンセラー やグルーマー(トリマー)が獣医師と連携して、トータルケアを行っている点でも注目を集めています。
カウンセラーに話を聞くと、10歳と14歳のシニアドッグと暮らす筆者も、ぜひ利用してみたいと思えるポイントがたくさん。病中病後や高齢犬猫にもやさしい、サポートの実際が見えてきました。

※GREEN DOGでは、爪切り・肛門腺絞り・耳掃除・シャンプー・ブロー・カットを「グルーミング」、施術を行う専門家を「グルーマー」という表現で統一しています。

獣医療だけでなく、トータルサポートが叶う施設

Cure=キュアとはケア、Lab=ラボとは研究所のこと。その施設名どおり、Cure Labは獣医療にとどまらず、犬猫の毎日の生活をトータルでサポートしてくれるシステムが整っています。

「病中病後の日常が楽しくなるような食生活を、飼い主さんに提案したいですね」と語るのは、獣医看護師としての経歴も持つ、ホリスティックケア・カウンセラー(一般社団法人 日本アニマルウェルネス協会 認定資格)の寺井さん。

Cure Labホリスティックケア・カウンセラーの寺井さん

Cure Labには、診察室とグルーミング室に挟まれた待合スペースに広いグッズコーナーがあり、寺井さんのほかにも2名のホリスティックケア・カウンセラー がいて、常に誰かが飼い主さんの相談にのってくれます。

Cure Lab物販コーナー
病気や高齢期の愛犬愛猫に特化した製品が並ぶ物販コーナーも充実

よくされる相談の例を挙げてみましょう。

<相談1>
まだ療法食までは必要ないけれども、あるいは、療法食を終えて腎臓の数値が良くなったけれども、腎臓に負担が少ないフードを継続したいので教えてほしい。
アドバイス:Cure Labのフード売り場には“腎臓コーナー”があるので、そこで愛犬または愛猫に合いそうなフードをカウンセリングしながらご提案。

<相談2>
愛犬や愛猫が、療法食を食べてくれない。
アドバイス:獣医師に確認のうえ、療法食に混ぜられるウェットフードを紹介。そのほか、愛犬や愛猫が食べたい気持ちになる日常生活の工夫ポイントや裏技を伝授。

<相談3>
シニアになってきたので、関節のケアができるサプリメントを知りたい。
アドバイス:獣医師が学会で得た最新情報をもとに、関節をサポートしてくれる必須脂肪酸のサプリを紹介。

ほかに、病中病後の犬や猫が食べられるごはんやおやつを提案するすることも多いそうです。

Cure Labホリスティックケア・カウンセラーの寺井さん

筆者の14歳の愛犬リンリン(ノーリッチ・テリア、避妊メス)は、半年ほど前の健康診断でクッシング症候群の疑いがあると指摘され、再検査では問題ありませんでしたが、念のため肝臓などへの負担を減らせる低脂肪のフードを食べるように獣医師から言われました。

そのことを寺井さんに相談すると、現在食べているフードの内容や日頃の運動量、なんでも食べるタイプかなどをヒアリングされるとともに、「ならば、これはどうですか?」と、フードとおやつをいくつか紹介してもらいました。

ドライフードサンプルとノーリッチテリア
寺井さんに「“粗脂肪 5.1%以上”で、しかも咀嚼力が少し落ちた老犬の14歳のリンリンちゃんも噛みやすい“やわらかドライタイプ”なのでおすすめ」と紹介された“ヤムヤムヤム”を完食して満足気な表情のリンリン

「犬トモが食べているフードがとても良いそうなんだけど、うちの子にもどうかしら?」と聞かれることも、カウンセラーさんたちはあるそうです。
「でもヒアリングをすると、犬トモさんと相談者のご愛犬は年齢も運動量も違うことが多々。評判が良いフードでも、どんな犬にも合うとは限りません。その子のライフスタイルをうかがったうえで、ベストマッチなフードの提案ができればうれしいですね」と、寺井さんは言います。

筆者も、愛犬に合いそうなごはんを提案してもらえ、「これならば安心!」という気持ちになりました。

高齢や病気の犬猫もグルーミングが可能

Cure Labでは、高齢であったり、病気を抱えていたり、臆病であったりする犬や猫に負担の少ない“ホリスティック・グルーミング”を行っています。
さらにグルーマーは、獣医師、獣医行動診療科認定医、ドッグトレーナーなどと連携をして動物にやさしいグルーミングを提供しています。

取材に応じる自由が丘動物医療センター院長寺村獣医師

動物にとってやさしいというのは、グルーミングの時間が短時間で、さらにグルーマーの扱い方もやさしいという意味です」と、寺村靖史院長は述べます。

Cure Labでまず導入したのが、時間短縮を実現するエアブラシ。エアブラシにかけることでシャンプーの使用量を少なくできるため、シャンプーを洗い流す時間も減り、犬に負担がかかりません。
さらに、動物皮膚科学会の一員である獣医師のアドバイスをもとに、Cure Labではシャンプー後に必ず保湿ケアを行い、皮膚を健やかに保てるようにしているそうです。

寺村院長によると、「皮膚のバリア機能が高く保てれば、皮膚疾患にかかりにくくなりますからね。すでに皮膚トラブルを抱えている犬には、薬用シャンプーを使用します」とのこと。

Cure Labでのトイプードルのトリミング

グルーマーがグルーミング前に診察に同席することもあります。
「たとえば腫瘍がある犬のケースです。なるべく腫瘍を刺激しないように、グルーミングをすることが大切です。そのため、グルーマーがレントゲンやCTの画像を見ながら、腫瘍の位置を把握したり、診察時に注意点を獣医師から直接聞けるようにしています」(寺村院長)。

Cure Labでは、破裂する可能性がある腫瘍を抱えている犬のグルーミングでも、こうして獣医師とグルーマーの連携によって受け入れられるとのこと。
さらにはトリミングサロンによっては断られることもある、高齢の犬や猫も受け入れているそうです。

行動診療科の獣医師やドッグトレーナーが同席して、グルーミング中の犬や猫のストレスケアチェックを行い、「この子は今、ストレスが高そうだから休みましょう」といったアドバイスをグルーマーにするケースもあるそうです。
どんな飼い主さんも、Cure Labならば安心してグルーミングを依頼できますね。
 

病中病後にも気軽に立ち寄れる場所に

飼い主さんに寄り添いたい。その思いが詰まった施設として、もっと充実させていきたいですね」と、Cure Labのスタッフのみなさんは口をそろえます。

芝生で飼い主を見上げるミニチュアダックスフンド

今後は、飼い主さんがこれまで愛犬愛猫にあげてきたフードの種類と、それを食べたらどのような体の状態であったかのデータを収集したり、グルーミングにおいては獣医行動診療科認定医やドッグトレーナーとの連携でストレス評価のスコア表を作成することなども計画しているそうです。

愛犬や愛猫がまだ病気になっていなくても、病気中でも、そして病気が治ったあとも。飼い主さんがフラッと気軽に立ち寄れるような、コミュニティに密着するトータルヘルスケア施設としてのCure Labに、これからも注目していきたいと思います。

 

Cure Lab by GREEN DOG

CureLab外観自由が丘動物医療センター内にあるCure Lab by GREEN DOGでは、動物医療の視点から考える食事や日常ケアと、ホリスティックケアを融合させ、病気や高齢期のペットの治療サポートに特化した食事・ケアを提案する。

自由が丘動物医療センター Cure Lab

臼井京音

ドッグライター、写真家、東京都中央区の動物との共生推進員 ドッグライター・写真家として、およそ20年にわたり日本各地や世界の犬事情を取材。毎日新聞の連載コラム(2009年終了)や、AllAbout「犬の健康」(2009年終了)、現在は『愛犬の友』、『AERA』、『BUHI』など、様々な媒体で執筆活動を行う。オーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、2007~2017年まで、東京都中央区「犬の幼稚園 Urban Paws」」の園長・家庭犬のしつけインストラクターとしても、飼い主さんに…

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