後悔しない動物病院の選び方とは?飼い主・獣医師・動物看護師のチームで犬猫の健康を守る!

動物病院を選ぶときに何を基準にしていますか?家から近い、話を聞いてくれる、検査機器がそろっている…など、飼い主さんや動物によって「良い動物病院」は変わります。また、付き合い方も異なり、かかりつけの動物病院と専門診療や高度医療を使い分けている飼い主さんも少なくありません。動物の健康に関わることだからこそ、後悔しないために動物病院の選び方、付き合い方を考えてみましょう。

<教えてくださった先生>
獣医師 小林圭子先生
獣医師小林圭子先生
北里大学獣医畜産学部(現獣医学部)卒業。2015年に千葉県で往診専門獣医師として独立し、鍼灸治療やホームケアにあたる。 診療を通して、飼い主さんが獣医療者とのコミュニケーションにわだかまりを抱えていることを痛感。 現在は「獣医療と飼い主さんの架け橋」になるべく、執筆やカウンセリングにも積極的に取り組んでいる。
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相性の良い動物病院選びは、愛犬愛猫が元気なうちに!

「愛犬愛猫のために良い動物病院を見つけたい」と思っている飼い主さんは多いですよね。しかし愛犬愛猫が元気なときは真剣に探すきっかけはなかなかありません。狂犬病予防注射が法律で義務付けられている犬でも、混合ワクチン接種やフィラリア駆虫薬の処方も含めて年数回程度。猫の場合、ストレスを心配してなるべく動物病院に行きたくないと考える飼い主さんもいるでしょう。

今回お話をうかがった獣医師の小林圭子先生は、「重い病気になる前に、飼い主さんと愛犬愛猫に合う動物病院を見つけてください」と言います。

「飼い主さんが望む医療と、動物病院が提供できる医療が合わない場合があるからです。愛犬愛猫が病気になってからではミスマッチが起きたまま治療を行うことになり、後悔やトラブルにつながる可能性があります。元気なうちにかかりつけの動物病院を選ぶことがとても大切です」

2010年以降、動物病院の数が増え、年間100院近く開業するともいわれています。飼い主さんのニーズに合わせて猫専門や高度医療といった個性を打ち出す動物病院も。良く言えば飼い主さんの選択肢が増え、悪く言えば多すぎて選びきれない時代になりました。

「私がカウンセリングを始めるきっかけも、動物病院選びに迷っている飼い主さんから相談を受けることが増えたから。アドバイスはできますが、最終的に決めるのは飼い主さんです」

いちばん大切なのは愛犬愛猫の医療方針を明確にすること

動物病院を選ぶときにいちばん大切なのは、飼い主さんが治療に対する希望を明確にしておくこと。自宅からの近さや説明のわかりやすさなどを条件に挙げる方もいますが、選ぶ前に飼い主さんの考えを決めてください」

治療への考え方はさまざまで、選択肢も多岐に渡ります。たとえば「自然に任せたい」と希望する飼い主さんが多いものの、その方針は「治療をまったくしない」「積極的な治療をしない」「東洋医学の治療を行う」などの異なる意味で使われます。あいまいな表現では獣医師にも正しく伝わりません。治療に関する考えがぼんやりしたまま愛犬愛猫が高齢になり、病気になり、手術が必要になった場合、動物病院とのミスマッチが起きてしまいます。

また、家族の中でも価値観をすり合わせておくことが大切です。小林先生は「治療方針で揉める家族を見るのは医療を提供するこちらもつらい」と言います。知り合いの飼い主さんの話や高齢の犬猫と暮らす人のSNSを参考に、具体的な方針を説明できるように家族の考えをまとめておきましょう。

飼い主さんの考え方が定まったら、愛犬愛猫が元気なうちにいろいろな動物病院に足を運んでみましょう。健康であっても、爪切り、体重計測、ダイエット、健康チェックなど動物病院に行くタイミングは様々です。獣医師や動物看護師とも話して相性の良いところを探していきます。

動物病院で愛犬愛猫の症状を上手に伝えるには?

飼い主さんの中には、獣医師や動物看護師と話し合うのが苦手な方もいるかもしれません。とくに愛犬愛猫が病気のときには、不安のあまり自分の気持ちばかりしゃべってしまいがち。あとで肝心な症状などを伝え忘れてしまっていたことに気づくことはありませんか?

「思いついたことを口に出しているとまとまりのない話になり、大事なことが漏れてしまうことがあります。また、獣医師が長い話にイライラして話を遮れば、飼い主さんは聞いてもらえなかった不満が残りますよね。結果的に治療にはマイナスにしかなりません。説明が苦手であれば、『5W1H』を意識して希望を伝えましょう」

5W1Hとは
When:いつ
Where:どこで
Who:だれが
What:何を
Why:なぜ
How:どのように
例文: 30分前に 自宅で 愛犬が おもちゃをかじったあと、 震えているので 飲み込んだかもしれない。

また、愛犬愛猫の異変や気づきをノートなどに記録しておきましょう。症状や経過、検査の結果、薬や成分の名前と量を書いておくと、セカンドオピニオンを受けるときにも役立ちます。写真、動画を獣医師に見せるのもおすすめ。病気・症状によっては口頭での説明より獣医師に伝わりやすい方法です。

愛犬愛猫の状態や検査結果、服用した薬などをメモしておくと、診察時に役立つ。

「逆に獣医師に説明されたとき、わからないことや心配なことがあったら遠慮なく言いましょう。医療の技術が高い獣医師でも説明が上手とは限らないので、気になることはどんどん質問してくださいね」

飼い主・獣医師・動物看護師は愛犬愛猫を守るチーム!

「私は飼い主さんにも主体性をもって愛犬愛猫の治療に取り組んでほしいと思っています。『先生に任せておけばよい』と獣医師や動物看護師の話にうなずくだけになっていませんか?
愛犬愛猫のことをいちばん理解しているのは一緒に暮らす飼い主さんです。飼い主さんには、治療の方針の話し合いに加わり、決断する大切な役割があります。飼い主・獣医師・動物看護師は、愛犬愛猫の健康を守るチームと考えてください

大切な愛犬愛猫のため、積極的に治療に関わりましょう。そのためには、信頼できる記事や書籍で情報を集め、最低限の知識をもつことが重要です。獣医師や動物看護師と話し合いたいときには、混雑していない時間帯に行くのも一案です。また、事前に電話で伝えておくと、動物病院側も心づもりができ、時間をつくってもらえます。

複数の動物病院に通うメリットとデメリットは?

かかりつけの動物病院をもつ意識は飼い主さんに浸透してきました。具合が悪いときだけではなく、生活全般を支えてくれるかかりつけ獣医師を基盤に据えることが重要。猫であれば「キャットフレンドリークリニック」に認定された猫にやさしい動物病院を選ぶのも一案です。

「ワクチン接種などで通う近所のかかりつけ動物病院と、検査機器がそろっている動物病院を使い分ける飼い主さんもいますよね。あえて獣医師たちに複数の動物病院に通っていることを伝えるかどうかは迷うところ。無理に言う必要はありませんが、飼い主さんと獣医師の信頼関係を崩さないように伝えるのはよいと思います」

複数の動物病院に通う場合は、飼い主さんが愛犬愛猫の健康状態、検査や治療を時系列で記録しておきましょう。近年は専門診療や高度医療などの2次診療動物病院ができ、セカンドオピニオンも増えてきました。かかりつけ動物病院が紹介してくれる場合は、複数の動物病院が連携することも可能です。

複数の動物病院に行くメリット
・かかりつけ動物病院ではちょっとした不調でも気軽に見てもらえる
・2次診療(専門診療や高度医療)では詳しい検査や治療ができる
・複数の動物病院が連携できれば、動物の健康を守る心強いチームが増える

複数の動物病院に行くデメリット
・再診療や診察料などの医療費が2倍になる
・検査の回数が増えれば動物に負担がかかる
・動物病院に通う回数が増える
・治療の選択肢が増えて飼い主が判断に迷うかもしれない

ただし、あちらこちらの動物病院へむやみに通う「ドクターショッピング」は控えること。小林先生は「飼い主さんの後悔につながることが多い」と感じています。

「動物の健康を守りたい」という願いは、飼い主さん、獣医師、動物看護師共通です。飼い主さんが安心して預けられる動物病院を見つけ、お互いに信頼関係を築いてチームとなることができれば、愛犬愛猫にとっても良い動物病院と言えるのではないでしょうか。

金子志織

編集&ライター、愛玩動物飼養管理士1級、防災士、ヒトと動物の関係学会会員、いけばな草月流師範 前職はレコード会社でミュージシャンのファンクラブ運営を担当。そのときに思い立って甲斐犬を迎える。初めての子犬の世話に奮闘するうちに動物への興味が湧き、ペット雑誌や書籍を発行する出版社に転職。その後、フリーランスのライター・編集者として独立。飼い主さんと動物たちの暮らしに役立つしつけや防災の記事から、犬のウンチングスタイルなど雑学の記事まで作成。現在も犬と猫を中心に、ペット関連のさまざまな雑誌、書籍、We…

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