コロナウイルスによって在宅勤務や自宅で過ごす時間が増加する中、身近な癒しをペットに求め飼育する人が増えています。実際に我々のしつけ方教室でも、子犬のためのしつけ方教室であるパピークラスは大人気で、予約待ち状態。また、子犬の飼育に関するお問い合わせも増えています。
その一方で、安易な飼育が招く「飼育放棄」があるのも事実です。放棄の一つの理由には、飼育や犬種に対する認識不足、ライフスタイルとのミスマッチが挙げられます。ですから、必ず犬を飼う前に犬種が作られた歴史や役割を知ることが必要です。
多くの場合、犬種図鑑やインターネットなどで調べることになりますが、人の履歴書のように短所はポジティブな言葉にすり替えられ、なかなか本質が見えてこないのも事実。今回はドッグトレーナーとして様々な犬種を見てきた経験を活かし、犬種図鑑の読み解き方についてお伝えします。
「賢い」犬は魅力的だけど…
盲導犬や警察犬などの“働く犬”に使われることが多い「賢い」というワードは魅力的な言葉の一つです。実際に我々も「賢い犬種だ」とか、「この犬は覚えるのが早い」などと口にしますが、これは放っておいてもいい子に育つのではなく、「犬が何か自分にとって有益なことを覚えるのが早い」ということで、必ずしも人にとって都合の良いことを覚えるのが早いわけではありません。つまり「賢い」=「ズル賢い」でもあるのです。ですから、犬・人双方にとってメリットのあることをきちんと教えなければなりません。
「賢い」とされる犬は人とコミュニケーションを取ることに特化してきた犬種が多いため、きちんと教えれば素晴らしいパートナーになってくれること間違いなしです。
ちなみに、よく見る「賢い犬ランキング」は覚えた単語数をもとに算出されており、人間との生活を支障なく送れるかどうかは全く関係ありません。
類義語:物覚えがいい、聡明、訓練性能が高いなど
よく表記のある犬種:プードル、ボーダーコリー、レトリーバー系など
「自立(独立)心がつよい」犬は手がかからない?
「自立(独立)心がつよい」は、柴犬などの日本犬によく使用される言葉です。飼い主に依存することが少なく、やりたいことがあれば飼い主よりもそちらを優先する傾向が強いです。つまり、人によっては「いうことを聞かない」と感じることもあります。
頻繁にスキンシップをとったり、常に一緒にいたいと考えているならちょっと待った!犬にとっては迷惑でギャップの原因となります。ベタベタすることを嫌い、多少放っておかれても大丈夫な性格なので適度な距離感が大切です。しかしながら、きちんとコミュニケーションを取らないと「飼い主?誰のこと??」となりかねませんので注意が必要です。
類義語:頑固、マイペースなど
よく表記のある犬種:日本犬、シベリアンハスキー、テリア系など
「人懐っこい」犬はいい事だらけ?!
人懐っこさこそ、他の動物にはない「犬」の代名詞と言っても過言ではありません。犬を飼う醍醐味の一つとして、遊びなどを通してコミュニケーションを図ったり、抱っこや撫でるなどのスキンシップを求める人も多いのではないでしょうか。犬側も飼い主が帰宅すればしっぽをフリフリ大歓迎、お腹を出して「なでて!」と、人懐っこい犬はきっと相思相愛の理想の関係が築けることでしょう。
しかし、一見いい事だらけの人懐っこさですが、裏を返せば「人がいないと不安で仕方がない」となってしまう場合も…。しっかりとコミュニケーションを取りたい犬が多いので、留守がちで、あまり遊べない場合などはストレスとなってしまうことも珍しくありません。
また、留守番はもとより、例えば病気や手術などで入院しなければならない場合(人、犬双方)や冠婚葬祭など、どうしても飼い主と犬が一緒にいられない場面も多くあるのが現実です。そういった場面でもストレスを感じないよう、飼い主に依存させすぎない飼育が必要です。
人が好きすぎて、散歩中に出会った人と挨拶したり触ってもらわなければ気が済まない、などの問題にも繋がりかねないため、場合によっては我慢してもらうなどメリハリが必要です。
類義語:明るく活発、陽気、遊び好きなど
よく表記のある犬種:ミニチュアダックスフンド、ゴールデンレトリーバー、コーギーなど
「飼い主に忠実」な犬は、飼い主以外にはなつきにくい?
こちらも犬の性質をよくあらわした代名詞と言える言葉。ハチ公物語や名犬ラッシーなどに代表されるように、犬の「忠実さ」をあげた話は世界中にも枚挙にいとまがありません。では、なぜ「飼い主に」であって「人に」ではないのでしょうか?
答えは警戒心が強く、飼い主以外になつきにくい可能性があるから。家族の中でも主に世話をしてくれる人にしか気を許さない場合があります。だからこそ、家族で協力しながらみんなを好きになってもらえるように日々のお世話をすることが大切です。
類義語:従順、献身的、忠誠心が高い
よく表記のある犬種:ジャーマンシェパード、柴犬、シェットランド・シープドッグなど
良い犬、飼いやすい犬の定義は人によって違う
そのほかにも「穏やか」→「ボーっとしている」、「勇気がある」→「強気で喧嘩っ早い」、「立派な番犬」→「警戒心が強い」などと捉えることもできます。また、ひと口に良い犬と言っても人によって定義は変わります。
例えば、一般の家庭では「元気が良すぎる」とされる犬でも、“働く犬”に携わる人であれば「モチベーションが高く良い犬」とされますし、反対におとなしい犬は“働く犬”となるとイマイチですが、家庭では「手がかからず飼いやすい」となることも珍しくありません。
大事なことは、ポジティブな表現を(都合よく)鵜呑みにするのではなく、正しくその犬の特性を知り、自分が犬とどんな風に暮らしたいか(ドッグスポーツがしたい、まったりと過ごしたいなど)やライフスタイルと照らし合わせること。そして、ネガティブなことが書いてあるところは特に注意して「犬育て」をしていくことだと思います。
▼筆者が所属する「スタディ・ドッグ・スクール」のYouTubeチャンネルでは、犬種の特性・犬の能力・しつけなどに関する動画を配信中。ぜひご覧ください!