教えて中村先生!「歯ブラシ」を使いこなす本格ケア
オーラルケア講座シリーズ第三回は、いよいよ歯ブラシでの本格ケアに取り組みます。教えていただくのは、引き続き、ペットのデンタル教室の講師として活躍する中村先生。今回も3組・4頭の飼い主さんと愛犬たちが、最終ゴールをめざしてがんばります。さて、歯ブラシを使いこなして、無事に卒業となりますか・・・?
【講師:中村恒彰先生 プロフィール 】
中村恒彰 先生
獣医師の資格をもち、ライオン商事でペットの口腔内トラブル解消を目的としたデンタルケア製品や、歯みがき指導プログラムの開発に携わる、ペットのデンタルケア・オーラルケアのプロフェッショナル。
歯石の付着状況をチェックする
最初に、愛犬の歯石の付着度合いをチェックしてみましょう。すでについてしまった歯石は、いくら歯ブラシでみがいても取り除けません。
もし歯石がしっかり付着してしまった場合は、動物病院でスケーリング(スケーラーという器具を使っての歯石除去)を受けることをおすすめします。病院では歯石除去とともに、歯の表面をツルツルにする処置もしますので、その後、歯垢や歯石がつきにくくなります。
このように歯や歯周をいったんキレイにしてから、二度と歯石がつかないように、デンタルケアで守っていきましょう。
▲チェリーちゃん(10歳)の奥歯。飼い主さんもじっくり見たことがない部分が・・・あらら
▲かなり歯石がたまっているチェリーちゃん(口臭も気になります)。スケーリングは全身麻酔を必要とし、高齢になるほど麻酔リスクが高まります。10歳だと、「今のうちに一度きれいにしたほうがいいですね」と中村先生。
▲毎日ケアしているというCOCO君(3歳半)の第4前臼歯にも歯石が・・・。「“みがいている”と“みがけている” は違うので」という中村先生の言葉に、飼い主さんも反省しきり。
歯ブラシの握り方は軽くペンクリップで
歯ブラシの持ち方には、鉛筆を持つように握る「ペングリップ」と、手のひら全体で握る「パームグリップ」があります。
大型犬は、パームグリップのほうがしっかりみがけますが、小型犬の場合は、ペングリップのほうが力が入りすぎず、細かいコントロールもしやすいです。
▲歯ブラシは、鉛筆を持つように軽く握るのがコツ。
45度の角度で、歯周ポケットの中の歯垢をかき出すように
歯ブラシは、歯と歯肉の間の境目に45度の角度であてて、横方向に少しずつ動かしながらみがいていきます。歯と歯肉の間にできた歯周ポケットに毛先を入れて、中の歯垢をかき出すように動かします。このみがき方を「バス法」といいます。1本1本みがくのがコツです。
▲歯ブラシは、歯と歯肉の間の境目に45度の角度であて、毛先が歯周ポケットの中に入り込むようにします。
▲【バス法】 歯周ポケットの汚れを落とすのに効果的。
待て→歯みがき→ごほうびをパターン化
歯みがきはどこから始めても構いませんが、みがきやすい切歯から始めて、徐々に奥歯へと進むのが一般的です。しかし、ワンちゃんはなかなか集中力が最後までつづきません。そこで、上手に活用したいのが、ごほうびです。
まず「待て」をさせて、少しだけ歯ブラシでみがいて、すぐにごほうびをあげる。これだと、「待て」と「ごほうび」の間にちょっと嫌なことがあってもがまんできます。こうして、「待て」→「少しだけ歯みがき」→「ごほうび」のパターンをくり返しながら、みがいていきます。
うまくできるようになったら、間の「歯みがき」時間を徐々に長くしていきましょう。
「そろそろ、ごほうびちょーだい!」のパイ君(6歳)。ごほうびをあげたら、みがいた歯が汚れるのではと思われがちですが、ほんの小さなかけらであれば、ワンちゃんは丸飲みしてしまうため、歯に残る心配はありません。
▲1回あたりのごほうびは、これぐらい。
デンタルケアの最大のポイントは「奥歯」
ワンちゃんはなかなか口を大きく開いてくれないので、みがいたつもりでも、みがき残しやすいのが奥歯。そして、何度もお伝えしてきたように、奥歯こそ、最も歯石がつきやすいデンタルケアの最大のポイント(とくに上顎の第4前臼歯と下顎の第1後臼歯)です。
最初はなかなかできませんが、できるだけ意識して奥歯をみがくように心がけてください。さらに慣れて、歯の裏側までみがけるようになれば完ぺきです。
ベガちゃん(5歳)も奥歯をみがく練習。
今回、受講のワンちゃん5頭、程度の差はあれ、全員の第4前臼歯に歯石付着がみられました。
今回使った「超極細毛歯ブラシ」。ヘッド部分の幅が薄いので、ワンちゃんのお口の奥までブラッシングしやすいとの声が。