愛犬の行動面の改善にも。ボディラップやグラウンドワークとは?【Tタッチ応用編】

行動面の悩みこそ解決!

このテリントンTタッチは健康面に影響を与えるだけではありません。行動面にもよい影響を期待できます。Tタッチにはタッチワークのほかに《ボディラップ》《グラウンドワーク》といったワークもあります。それぞれを独立して行うのではなく、全部のワークを組み合わせながら行うことができます。

では、どんな問題に対して効果があるのか?

「他人や獣医師が怖い、大きな音を怖がる、怖い時や興奮で失禁する、制御できないほど吠える、多動、分離不安、臆病、飛びつき、モノを噛む、他犬への攻撃、ネコへの攻撃、リードを引っ張る、車酔いをする、グルーミングが嫌い、お風呂嫌い、爪を切らせないなどに対して、効果が期待できます」

あ~、ウチのコだって実はあるある…。大なり小なり誰もが抱える悩みや問題に対して、強制ではない、陽性強化法のトレーニング方法を取り入れていきますが、単なるトレーニングというのではなく、タッチの《タッチワーク》、体に意識を持たせるために《ボディラップ》を体に巻いたり、専用のリード類や杖、障害物を使った《グラウンドワーク》を行うことで、イヌ自身が気付き、自信を持ち、そして集中力を付けることができるといいます。

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昨年日本で行われたワークショップの模様。Tタッチをしていたり、グラウンドワークをしていたり、とても静かにトレーニング中。

 

特定のタッチやリフト、アクティブなエクササイズを組み合わせることで、ストレスをやわらげ、体の感受性を向上させる働きが目覚めていくのです。イヌを叱ることなく、やさしく体にタッチするだけ。それだけで普段使われていない脳に通じる神経回路を活性化し、新しい脳細胞を目覚めさせることができるわけです。

以前、日本担当インストラクターで、Tタッチのインストラクターの中でもトップ4の1人といわれているデビー・ポッツ先生のセミナーに参加したところ、受講者である飼い主さんたちの呼吸を整えることをとても大切にしており、受講者の一人の飼い主さんが、愛犬の散歩のときの引っ張りに悩んでいるといい、実際にグラウンドワークをデビー先生が飼い主さんにレクチャーしながら、飼い主さん自身が愛犬とグラウンドワークを続けたところ、あっという間にイヌ自身が考えて行動するようになり、驚いたことがありました。

そのときデビー先生は、飼い主さん自身にリラックスすること、そのために呼吸を意識すること、愛犬に何をしてもらいたいか飼い主さん自身が明確にすること、などを話されていたのです。

 

さて、道具を使ったワークの一つ、《ボディラップ》の紹介です。ここでは油木真砂子先生に簡単に説明していただきます。

ペットライブス
伸縮性のあるバンデージを使います。

ボディラップの目的は、イヌに自信をつけさせることです。恐怖や痛み、ストレスなどで“心ここにあらず”の意識が分散している状態を、自分の体を意識させることでバランスを取り戻させるのです。そのため、さまざまなドッグスポーツの競技会やドッグ・ショーでのパフォーマンスの向上にもつながりますよ」。

ペットライブス
“ハーフラップ”という巻き方で、ほどよい束縛感。1日約15分程度が適当。
ペットライブス
前から見たところ。

 

“サンダーシャツ”も安心感を与える道具の一つ。名前のとおり雷を怖がるコに着せると有効です。でも、雷=サンダーシャツ着る、とは結びつけないで、何でもないときに15分程度着せるのがポイント。着せてお散歩に行くことも可能です。

ペットライブス

“サンダーシャツ”を着せて様子を見ているルーサ。
ペットライブス
“サンダーシャツ”はマジックテープで固定するので毛が長いコは要注意。
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新しいアイテム“Calming Cap(カーミングキャップ)”。視界を適度に遮ることにより、不安や恐怖・興奮を状態の緩和を期待するキャップです。グルーミングや診察のときに。

 

さらに高度な学習ができるのがアジリティーのような道具(障害物)やワンド(杖)、ハーネスなどを使う《グラウンドワーク》です。このワークを行うことで、“イヌが自信をつける、集中力の向上、バランス感覚と柔軟性の向上、飼い主との信頼関係の構築”などが養われていくといいます。

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“グラウンドワーク”中のノーフォーク・テリア。サンダーシャツ、バランスリード、ハーネス、障害物を組合わせている。

実際のこのワークを目にして感じたのが、いろんなタイプ、性格のコたちが同じ会場のなかで静かにトレーニングしていること。おやつで誘導することもなく、自信を持たせて自発的に動くように気付かせていくことがとても自然で、体が持つ可能性をどんどん引き出しているんだ、と思いました。

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こちらもバランスリード、障害物を組合わせている。

Tタッチは、知れば知るほど気付くことが多く、改めてイヌたちとの関わりを見つめ直すことができます。今回、日本でのセミナーの合間をぬってデビー先生のコメントをいただくことができました!

『日本では年々、Tタッチを勉強したいという方が増えています。プラクティショナー・コースの受講もウェイティングリストができるほどです。関心が高くなっているということは、飼い主さんとイヌとの向き合い方が変化してきているのではないでしょうか。

このTタッチは一言で語ることは難しく、オーナー、獣医師、ドッグトレーナーなどそれぞれの立場、状態で受け止め方が違ってきます。それが良さでもあり、どんな人にもイヌにも対応できます。アクティビティが多いので、どのような影響があるのか分かると取り入れたくなります。

これは訓練の技術ではなく、体のつながり(細胞や神経回路といった)を考えることで動物を深く観察・理解することができます。特別な準備が必要なわけでもなく、いつものようになでたり抱っこするときに、このタッチにすると自分の呼吸も整い、バランスがとれてきますよね。例えば、外出や仕事から緊張した状態で家に帰って動物と短時間でも触れ合うと、気持ちが違ってくるでしょう。そのときにTタッチの手法で触れてみたらどうですか?ということなんです。今日は何分やらなくちゃ、と気負うのではなく、動物に触れるときにこの手法でやってみるだけです』。

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昨年11月に山梨で行われたセミナーで。(右から)通訳の山崎恵子(ペット研究会「互」主宰)さん、デビー・ポッツ先生、ローレン・マッコール先生(アニマル・コミュニケーター)、通訳のジュリー・ドレフュス(女優)さん

確かにTタッチをしているときは呼吸が深くなります。お互いに癒し癒される状態になるので、関係性もよくなっていくのでしょうね。このTタッチは人用もあるのですが、日本ではまだ広がっていません。ぜひ、レクチャーしていただきたいものです!

 
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OLYMPUS DIGITAL CAMERA〈今回教えていただいた先生〉

テリントンTタッチプラクティショナー2
Tタッチ・ラビット・アソシエイト認定 

油木真砂子 先生

人と生活する動物、動物と生活する人がよりハッピーになる手伝いをしたいとの思いが強く、金子真弓氏のもと家庭犬のしつけ方法を学ぶ。同時にホリスティックケアに興味をもちテリントンTタッチを学び、2011年には日本人初のTタッチプラクティショナー2として認定される。プライベートセッションを大切にしながら各地でワークショップを開催。犬だけでなく、猫やウサギなどコンパニオンアニマルに対して広く活動している。ホリスティックケア・カウンセラー養成講座会報誌のコラムを担当。
また、「優良家庭犬普及協会認定GCTサブジャッジ」としても活躍中。
花岡佳イ子

ドッグライフ・キュレーター、フリーエディター&ライター、サウンドヒーリング協会認定セラピスト、ペットの行動コンサルテーションHHP認定、アニマル・クリスタルヒーリング・ファシリテーター、 JAH認定アニマル・コミュニケーター 長年の編集者生活のうち半分以上をペット関連、特にイヌの月刊誌や書籍の編集に関わる。日本で最初のトリマー向け雑誌「Groomer」編集長、月刊「wan」編集部、その後、仲間たちと株式会社A.D.SUMMER’S(出版・編プロ)を立ち上げ、誠文堂新光社「DOGFAN」の創刊から…

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