イヌも人も癒される「テリントンTタッチ」の本質に迫る!

「テリントンTタッチ」はマッサージなの?

テリントンTタッチは、アメリカ人のリンダ・テリントン・ジョーンズ女史が馬をはじめ多くの動物に可能な、健康面や行動面などに対して動物自らの自然治癒力・自発力を引き出すボディワークとして考案したものです。

日本に紹介されてから十年以上が経ちますが、この“テリントンTタッチ”という言葉を知っている人、ちょっとだけかじったことがある人などに聞いてみると、実はこれ、ほんとに多くの飼い主さんが勘違いしていることが多く、マッサージと思っている人がほとんどです。「え?マッサージじゃないの?…」というように。

ペットライブス

“タッチ”という言葉が入っているように、Tタッチは体へのタッチ法です。では、タッチとマッサージはどう違うの?

言葉だけで見たり聞いたりすると同じような感じに受け取ってしまいますが、タッチとマッサージは違うんです。マッサージはもむ・さする動きで筋肉などをほぐす行為です。タッチは皮膚に軽く触れて神経の伝達回路を活発にさせるのです。つまり、皮膚の神経からすると、「ん? 何? 今の動き いつもと違うよ」といった感じで“目覚め”ていくのです。バラバラだった“カラダ”が、点と点が線でつながり、全体がつながって一つの統合された体になる、といった感じでしょうか。

 

私も以前から仕事上知ってはいたのですが、よく理解できず、マッサージの一種だと思っていました。しかし、最近になって改めてセミナーに参加させてもらっていたら、あれ? これは違うぞ、幅広く応用できて奥深くて、ヒーリングにつながる! と再認識したのです。

今回、奥深さを実感させていただいた一人、Tタッチプラクティショナー2という資格(この資格は日本人で最初に取得)を持つ油木真砂子先生に取材させていただきました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAテリントンTタッチプラクティショナー2 Tタッチ・ラビット・アソシエイト認定 
油木真砂子 先生

人と生活する動物、動物と生活する人がよりハッピーになる手伝いをしたいとの思いが強く、金子真弓氏のもと家庭犬のしつけ方法を学ぶ。同時にホリスティックケアに興味をもちテリントンTタッチを学び、2011年には日本人初のTタッチプラクティショナー2として認定される。プライベートセッションを大切にしながら各地でワークショップを開催。犬だけでなく、猫やウサギなどコンパニオンアニマルに対して広く活動している。ホリスティックケア・カウンセラー養成講座会報誌のコラムを担当。
また、「優良家庭犬普及協会認定GCTサブジャッジ」としても活躍中。

油木先生はホリスティック・ケアのカウンセラーでもあり、ドッグトレーナーでもあって、ご愛犬たちは優良家庭犬普及協会グッドシチズンテストに合格するほどの実力をお持ちです(これってすごいことなんです^^;)。
また、専門学校で講義を受け持ったりしています。

油木先生にテリントンTタッチとは何ですか?と聞いてみたところ、

「体にタッチすることで、神経のスイッチを入れることです。動物自身に意識を集中させること、意識させることを感じてもらうことです。onとoffの切り替えだけで、余計なことは意識させません。このTタッチは飼い主さんが安心して安全にできるケアの一つなので、自分の愛犬に対して、病気であれば治療以外で自分に何ができるんだろう、といったときにこのタッチ法が有効なんです。

ペットライブス

例えばこれまでの私の経験で、病気で一週間の内に2回手術したコが、ほぼ寝たきりになってしまい、飼い主さんとしてはとにかく生きて欲しい、と希望しており、QOL(生活の質。Quality of Lifeの略)を上げるためにとご依頼を受けて通うことになりました。そのコの場合は数回の施術で獣医師と相談しながら、ゆっくりですが外に出て歩けるようになりました。

もちろんすべてのイヌに同じようなことが起こるとは限りませんが、『その個体』の『その時』のベストな状態にもっていくことができたのだと思っています。老齢期であれば、タッチをすることでより濃密な関係を体験することができます。Tタッチをすることで、そのコの細胞にスイッチを入れ、自然治癒力を引き出してあげることができたのだと思います

つまり、獣医師による治療以外で飼い主さんが家庭でできるケアにこのテリントンTタッチが有効なのです。

ペットライブスTタッチ

ウチの遊太の場合、気管と肺が弱いため、乾燥した季節になると動いただけで咳が頻発します。そのため、肋骨あたりや腹部に緊張があります。油木先生にTタッチを受けたところ、すぐにケフッという咳を一つして、深い呼吸ができるようになりました!

「テリントンTタッチ」
馬のトレーナーであり、動物の専門家として著名なリンダ・テリントン・ジョーンズ女史によって、1983年に誕生したタッチ法。現在はコンパニオン・アニマルにも応用されている。イヌのQOL(クオリティオブライフ)の向上、行動と性格、同時に意欲と学習能力に影響を与える。

「テリントンTタッチが効果的な症状」
● 過剰な吠え癖&噛み癖
● リードの引っ張り
● 飛びつき
● 攻撃行動
● 極度の恐怖反応&シャイ
● グルーミングに対する抵抗
● 興奮&緊張
● 車酔い
● 加齢にともなうさまざまな問題

《参考資料》
『犬にTタッチ』リンダ・テリントン・ジョーンズ著(アニマル・メディア社発行)
▶ レジュメ『テリントンTタッチ』Debby Potts著(The Integrated Animal,LLC)
テリントンTタッチ日本事務局
 
関連リンク
愛犬へのTタッチ。口と耳へのタッチ方法と効果
愛犬の行動面の改善にも。ボディラップやグラウンドワークとは?

花岡佳イ子

ドッグライフ・キュレーター、フリーエディター&ライター、サウンドヒーリング協会認定セラピスト、ペットの行動コンサルテーションHHP認定、アニマル・クリスタルヒーリング・ファシリテーター、 JAH認定アニマル・コミュニケーター 長年の編集者生活のうち半分以上をペット関連、特にイヌの月刊誌や書籍の編集に関わる。日本で最初のトリマー向け雑誌「Groomer」編集長、月刊「wan」編集部、その後、仲間たちと株式会社A.D.SUMMER’S(出版・編プロ)を立ち上げ、誠文堂新光社「DOGFAN」の創刊から…

tags この記事のタグ