「練習したのに、うまく歯みがきができない…」 と悩む飼い主さん、その原因はどこにあるのでしょうか?家庭犬しつけインストラクターの矢崎潤先生にうかがいました。
1つは「歯みがきへのステップアップが早すぎたこと。ワンちゃんが練習中にちょっとでも顔や体を引いたら、それは『まだ慣れてないよ』という合図なんです。その場合、前段階(リラックス&口まわり・歯を触らせてくれる)まで戻って十分に慣らしてから進むことが大切ですね」
もう1つは「飼い主さんのみがき方が強すぎたりして、ワンちゃんが『イヤだな』と感じているのかもしれません。焦らずゆっくり練習してみましょう」
確かに…ゴシゴシと力んでみがいていたり、歯ぐきから血が出てる…という飼い主さんは要注意!
※すでに歯周病の場合は、きちんと治療してあげてからチャレンジを。
今回は歯みがきに関する、代表的な「お悩み」についての解決策を 矢崎先生に教えていただきました。
公益社団法人JAHA(日本動物病院協会)認定
家庭犬しつけインストラクター 矢崎 潤 先生
「ほめるしつけ」がポリシーのインストラクター。犬の行動学と学習理論に基づくトレーニングスタイルで、多くの飼い主さんと愛犬を幸せにしている。しつけ教室をはじめ、動物の保護活動、自治体の研修会、書籍の監修など、多方面で活躍している。
JAHAインストラクター養成講座委員会アドバイザー/公益社団法人日本愛玩動物協会講師/日本獣医生命科学大学非常勤講師
▶JAHA認定しつけインストラクター
【今回教えていただいた、歯みがき「お悩み」】
ランキング上位の「お悩み」を一挙解決!
Q.愛犬が、なかなか口を開けてくれません
A.ガムなど、犬が好きで持続性のある「おやつ」を使って練習するとよいでしょう。
犬がリラックスする姿勢で落ち着かせて、ガムを噛ませながら首やあごの下を触ります。
① 最初は二人一組で練習するとスムーズです。ガムに夢中になっている間に首やあごの下を触ります。この状態がムリなくできるようになるまでは何日かかっても繰り返します。
② 慣れてきたら、ごほうび(小さなおやつ)&ホメ言葉 を繰り返しながら、口まわりを指で触れるように練習を。
③ 口まわりをラクに触れるようになったら、唇をめくり(「めくる動き」ができないと最終的に細かい所が磨けないので)、指1本で 犬歯か前歯を触ります。触れたら、すかさず「ごほうび&ホメ言葉」を。このトレーニングをひたすら繰り返しましょう。
一人で練習する場合は、手が届く所にあらかじめ「ごぼうび」を置いておき、できたらすぐに与えましょう。できるようになってきたら、ごほうびもだんだんいらなくなっていくハズです。
➤矢崎潤先生からのアドバイス
「人差し指をちょっと唇の中に入れたり、犬歯を触ってから、ごほうびを1個、これを1~2週間繰り返す。すぐにみがこうと思わず、口の中を触ることに最も時間をかけてください。ほとんどの飼い主さんは、ここで一気にみがき始めるので、うまくいかないのです。」
Q.愛犬が、歯ブラシを噛んでしまいます…
A.歯ブラシをオモチャだと思って噛んで遊んでしまう場合は、手の中にサッと隠す技がおすすめです。
その際、食べ物の味がすると、より噛んでしまう可能性あるため、もし 歯みがきペーストにビーフなど食べ物系のにおいが付いている場合は、使用をやめてみましょう。
今回使用している「PET KISS歯みがきジェル」は、犬が好きな草(リーフ)の香り。口臭もスッキリ!使いやすいジェルタイプで、歯垢や歯石の沈着を防ぎます。
〈今回使用した歯みがきジェル〉
PETKISS「歯みがきジェル」
① 歯ブラシは、ブラシ(ヘッド)部分に指を添えて持ちます。
② もし、歯ブラシを噛もうとしたら、歯ブラシの先端を人差し指で隠し、犬に噛ませない状況を作ります。愛犬がやらなくなるまで何度でも繰り返しましょう。
➤矢崎潤先生からのアドバイス
「ワンちゃんに、”歯ブラシ=ガジガジ遊びだ” という習慣を絶対つけないことがポイント。もし、歯ブラシが口の中に入ってくることを嫌がって噛む場合は、基本に戻って。歯ブラシを横に置いて見せながら『ごほうび&ホメ言葉』、つぎに歯ブラシを口元に近づけて『ごほうび&ホメ言葉』を繰り返します。十分に慣れてきたところで前回の『歯みがき編』で説明したようにステップを踏みましょう。」
Q.歯ブラシでちゃんと「みがく」ことができません
A. 愛犬が歯みがきをイヤがっている可能性が高いです。
ステップアップが早すぎたということなので、口まわりをなでる練習からやり直しましょう。歯ブラシでみがけることが理想ですが、最初から完璧を求めず、シートでみがくだけでもやらないよりはずっとよいです。
少しでも体を避けて嫌がったり、目・口を背けたりした場合はNGサイン。ただちに歯みがきは中止して、次回は1つ前のステップに戻って。もう一度、口に触って「シートみがき」で十分に慣らすところから練習しましょう。
➤矢崎潤先生からのアドバイス
「いくらごほうび目当てでも、ワンちゃんが耐えているという状況は作らないで。ここでイヤイヤが出たら、まだ触ることに慣れていないということ。20~30秒しかできないなら、まだ歯みがきはやっちゃダメ。触ることから慣らしましょう。」
A.歯みがきのタイミングやポーズを再確認してみましょう。
歯みがきは、ワンちゃんが疲れているとき、落ち着いているときが狙い目。お散歩やオモチャで遊ぶなど体力を発散させた後、疲れた頃に抱き上げて…がうまくいくコツです。
小型犬なら飼い主さんが椅子に座って抱っこします。犬がひざから落ちたり遠くへ行ったりしないようにリードをつけ、飼い主さんの首にかけておくとよいでしょう。
リードを首にかけて、まずは抱きしめてあげる。そして、リラックスする姿勢でゆっくり触って落ち着かせることから始めましょう。
中・大型犬は、飼い主さんのひざの間に挟むようにして座らせて。
もし、どうしてもジタバタと動いたらその時は犬を離さず、止まったら離します。犬に「ジタバタすれば終わる」と思わせないように。できれはジタバタする前に気配を察知して、その時は歯みがきはあきらめ、終わりにしたほうがよいでしょう。
犬はグラグラと不安定なところで落ち着けません。飼い主さんは太ももが水平になるように座りましょう。
➤矢崎潤先生からのアドバイス
「ワンちゃんも賢いので、暴れたり顔を背ければやめてくれると思っちゃう。大事なのは、歯みがきを嫌なことだと思わないように丁寧に練習して、受け入れたら良いことがおこると理解してもらうことが重要です。」
Q. “歯みがき”なのに、食べ物(ごほうび)をあげて良いの?
A. ごほうびをあげたら、みがいた歯が汚れるのではと思われがちですが、ほんの小さなかけらであれば、ワンちゃんはほぼ丸飲みしてしまうため、歯に残る心配はありません。
1回にあげるごほうびのサイズは、小型犬なら小指の爪の1/3程度の大きさ(大型犬なら小指の爪程度)。歯みがき効果のあるおやつならより安心です。
歯みがきトレーニングのときに、ごほうびとして食べ物を使うのは問題ありません。最初はごほうび(小さなおやつ)をたくさん与えますが、犬にとって触られること自体が気持ちよくなっていけば、だんだんと減らしていくことができます。
➤矢崎潤先生からのアドバイス
「ごほうびをゼロにしなくてもOK。歯みがきなどのお手入れ全般は一生続く習慣。ずっと楽しい時間にするために、全て終わってから ごほうび1個でもいいので与えましょう。」
犬の場合、口の中は弱アルカリ性なので、虫歯(虫歯菌は弱酸性を好む)になりにくく、逆に、歯石ができやすい環境です。犬は歯垢が歯石になるスピードが速く、人の25日に対し、3~5日といわれています。しかも、高齢になると、さらに速まります。歯石になってしまうと、動物病院でスケーリングという処置を受けないと除去できませんので、その前に歯垢を落とすことが大切です。
〈今回使用したおやつ〉
PETKISS
「つぶつぶチップで歯のケア
ちぎれるササミスティック プレーン」
※2017年4月にリニューアルしました
歯みがきは、急がば回れ。ゆっくり練習するのが成功の早道!
今まで歯みがきに失敗していた飼い主さんも、この練習でできるようになるでしょうか?
「歯みがきなどのお手入れは、無理やりやらず、ゆっくり慣らしたほうが早くできるようになります。ワンちゃんが歯みがきに嫌な印象を持っていた場合、ちょっと時間はかかりますが、もちろん成功できます!『リラックスするくらい大好き』まではいかなくても、『ごほうびをもらえるから我慢しようか』くらいにはなります(笑)。飼い主さんはあきらめないでくださいね」
「2~3ヵ月かかっても当たり前ぐらいの気持ちで、気長に練習に取り組みましょう。ここで頑張るか、10年後に歯石だらけで格闘するか、飼い主さん次第です。」
歯ブラシは習慣として、飼い主さんと愛犬が楽しくみがけるように続けましょう!
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