夏場に増える犬の皮膚トラブル、 家庭でできる予防と病気ケアとは?[獣医師コラム]

かゆがる、湿疹、ハゲてきたなど、夏場に増加する犬の「皮膚トラブル」。長期化したり、再発をくり返すことも多く、なかなか厄介なしろものです。犬にはどんな皮膚トラブルが多いのか、また家庭での注意点やケアについても知っておきましょう。

よく見られる犬の皮膚トラブルとその原因

■膿皮症
夏場に増えるのが、膿皮症です。膿皮症は感染症で、肌が荒れたり傷があると、そこから雑菌が入り込んで繁殖します。気温・湿度が高くなる梅雨から夏は、雑菌が繁殖しやすくなるので要注意。一過性の場合は、抗生剤で治りますが、肌荒れの根本を治さないと再発をくり返します。お手入れの仕方や食事を見直して、皮膚のコンディションを良くすることが必要です。
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■ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液成分に対するアレルギーによって起こる皮膚炎で、これも比較的よく見られます。1匹のノミに吸血されただけでも発症し、刺された個所だけでなく、体全体がかゆくなるのが特徴です。
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■食物アレルギー
季節性がなく常時かゆがる場合は、食物アレルギーの可能性も。病院では、除去食(アレルギー対応食)を使ってアレルギーか否かを調べることもできます。除去食で症状が治まれば食事性のアレルギー、変わらなければ食事以外が原因というわけです。

■脂漏症
皮膚の新陳代謝が極端に速まり、皮脂やフケが異常に多くなる病気です。通常、健康な犬のターンオーバー(皮膚が生まれ変わるサイクル)は約3週間ですが、脂漏症だと5~7日というケースも。そういうコだと週1回のシャンプーでも足りません。

■食事の影響
皮膚の健康と食事は密接に関わっています。太っているからとダイエットフードにすると、カサついたり毛づやが悪くなったり、皮膚の状態が悪化してくることも。その場合は、もとのフードに戻して量を減らしたり、サプリメントで不足成分を補ったりします。

■ホルモンの影響
避妊をしていない犬の場合、発情期間中、ホルモンの影響で、毛が抜けたり皮膚にかなり変化が出ることがあります。2ヵ月程度で落ち着くので、そのままにしておくか、症状が重い場合は薬を使うことも。また、去勢後、まれに甲状腺ホルモンの病気が出て、毛が抜けることもあります。

■免疫力の低下
加齢とともに免疫力が低下してくると、皮膚トラブルを起こしやすくなりますが、逆に花粉症のように、年齢を重ねるにつれてアレルギー反応が緩やかになるケースもあります。

家庭でできる病気の予防とケア

■「調子がよいときの状態」を把握しておく
日頃の注意点として、ブラッシングのときも地肌チェックを意識すること。毎日見ていれば、色がいつもと違えば、すぐに気づくはず。自信がなければ、同じトリマーさんに継続的に見てもらうといいでしょう。病院ではたまにしか見られないので、そのコの本来の皮膚の状態がわかりません。うちのコの「調子がよいときの状態を知っておくことはとても大切です。

■ベタッとしてきたらシャンプーのタイミング
愛犬の洗い上がりの手触りと、例えば5日後の手触り、飼い主さんならその違いはわかりますよね? ベタッとしてきたなと思ったら、皮脂が出てきて汚れているサインなので、シャンプーのタイミング。犬の皮膚はデリケートなので、シャンプーは犬専用のもので、被毛だけでなく地肌に良いものを選んでください。

■一年のサイクルを読んで早めの対策を
愛犬がある程度の年齢なら、そのコの一年のサイクルがわかるはず。皮膚トラブルの症状が出始める時期を見計らって、スキンケアを重点的に行ったり、サプリメントを飲ませるなど、早めの対策を心がけましょう。

■皮膚の保護を意識
夏場、サマーカットをしたら、1枚服を着せるなど、皮膚の保護を意識することも必要です。皮膚トラブルは体質によることも多いので、完治をめざすより、愛犬の体質を把握して、適切なケアで症状をコントロールしていきましょう。

 

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箱崎加奈子

獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルクリニックまりも 院長 麻布大学獣医学部卒。 気軽に立ち寄れるペットオーナーのためのコミュニティスペースを目指し、「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」を東京都世田谷区、杉並区に開業。病気はもちろん、予防を含めた日常の健康管理、ケア、トリミング、預かり、しつけなどを行う。2020年よりピリカメディカルグループの運営会社 株式会社notに参画。現在、ピリカメディカルグループ総院長を務める。 ▶アニマルクリニックまりも ▶女性獣医師ネットワーク

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