【犬の熱中症】獣医師に聞く、予防と応急処置のポイントはココ!

熱中症は発症すれば命に関わる怖い病気ですが、正しい暑さ対策によって確実に予防できます。予防と対策をTRVA夜間救急動物医療センター(東京都世田谷区)院長の中村篤史先生に聞きました。

<教えてくださった先生>
TRVA夜間救急動物医療センター 院長 中村篤史先生中村先生プロフィール_200城南地区を中心とした東京都獣医師会所属動物病院により設立された、夜間救急を専門とする動物病院。ホームドクターの診療時間外である夜間の急患に対応する。院長の中村篤史先生をはじめ、緊急処置に特化した経験豊富な獣医師や看護師が勤める。
愛犬はフレンチ・ブルドッグのちゅべくん(オス・10歳)。
TRVA夜間救急動物医療センター

 

熱中症から愛犬を確実に守る予防法とは?

夏は熱中症の危険がずっと続きます。気候のチェック、飲水の工夫、冷却グッズの用意を毎日の習慣に

気候をチェックする
温度、湿度、地域によって熱中症のリスクは変わります。迷った時は、犬の飼い主さん向けに情報配信しているサービスを利用すると安心です。

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アニコムホールディングス株式会社提供の「犬の熱中症週間予報」など、情報を予防に役立てましょう。

犬が水を飲むように工夫する
人の場合、「のどが渇いた」と思った時にはすでに熱中症。犬も同様と考えられるので、こまめな給水が大切。散歩中も同様です。あまり水を飲まない犬は、水に少量のヨーグルトや肉の茹で汁を混ぜるなど、飲ませる工夫をしましょう。ドッグフードに水を混ぜるのもおすすめです。

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ヨーグルトを混ぜた水や肉の茹で汁を凍らせてストックしておくと便利。ボトルに水と味つきの氷を入れれば、ほどよいフレーバー水になります。

冷却グッズを用意する
好みのクールマット、首に巻くクールマフラー、冷たい水を持ち歩けるボトルを用意しておきます。クールマフラーは、頸動脈を冷やすことで全身を効率よく冷やせます。いずれも冷却効果が持続するものがおすすめです。

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中村先生と暮らす、フレンチ・ブルドッグのちゅべくん(オス・10歳)。クールマフラーを巻き、給水も万全。散歩は朝4時に木陰の多い公園へ行っているそうです。

 

住環境の暑さ対策、エアコンだけでは足りない

真っ先に浮かぶ方法は、エアコンのスイッチON。でもそれだけでは暑さ対策として不十分。犬にとって安全で快適な住環境を知っておきましょう。留守中だけでなく、在宅時も同様に注意して。

室内暮らし
エアコンをかけ、できれば窓も開けて風通しをよくしておくこと。留守中にエアコンが故障しないように、定期的なチェックも重要。遠隔操作ができる機種なら、外出先からチェックできて安心です。直射日光が入らないように遮光カーテンも閉めて水はいつでも新鮮な冷たいものを飲めるように、複数箇所へ犬が好む素材のクールマットも用意しましょう。

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愛犬のジュウザ。クールマットをいくつか置いてみましたが、家にあった謎の大理石が一番お気に入り!

室内で自由に留守番させている場合は、自分で適温の場所を見つけます。誤飲事故が起きないように環境を整えて! サークルやケージで留守番させている場合は、日光やエアコンの風が当たらないところに設置すること。ベッドとトイレトレーに加え、好みのクールマットも用意しておきましょう。四方が覆われたクレートは、風通しがいまひとつなので、夏はサークルやケージがおすすめ。

屋外暮らし
風通しがよい場所を選び、日よけシートやすだれを利用して日陰を作りましょう。床はコンクリートよりも土のほうがひんやりしています。いつでも冷たい水を飲めるように、複数箇所へ置き、こまめに交換すること。都市部はヒートアイランド現象で気温が高くなる傾向があるので、夏限定で室内暮らしへの切り替えの検討も。

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異変に気づいたら、すぐに体を冷やす応急処置を!

いざという時のために、熱中症の応急処置を覚えておくと安心です。

「基本は、体温を下げ、脱水状態を改善させること。まずは涼しい場所に移動したり、エアコンと扇風機を強風でかけたりしてから、体を冷やす対策を始めます。動物病院に来る前に体を冷やしていた犬は、死亡率が低いです。できれば応急処置をしながらホームドクターや救急対応の動物病院に電話して、来院するタイミングや方法などを相談しましょう。体調が改善しても、念のため受診してください」

冷たい水を飲ませる
犬が自力で水を飲めるなら、冷たい水を好きなだけ飲ませます。自力で飲めない場合は、以下の方法で体を冷やします。

首、腋の下、内またを冷やす
これら3箇所には動脈(太い血管)があるので、そこに冷却グッズを当てることで、全身を効率よく冷やせます。冷却グッズがぬるくなったら交換して冷やし続けること。

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高体温になるとすぐには下がりません。大きめの保冷剤やアイス枕で冷や続けましょう。

水を体幹にかける
水がたくさんあれば、体幹(首と背中)にかけて冷やします。足にかけるのはNG。末端が冷えて体の中心に熱がたまってしまいます。氷水をかけるのもNG。かえって低体温になる危険があります。

濡らしたタオルを体幹にかける
水と同じく、体幹にかけます。濡れタオルはすぐにぬるくなってしまうので、こまめに交換して冷やし続けます。

 

「熱中症は身近に危険がある病気です。飼い主さんが出かける時に冷房をつけたつもりで、暖房をつけてしまったケースもありましたし、留守中のエアコンの故障もよく聞きます。また、涼しい室内に慣れた犬を真夏の海に連れて行くのも事故のもと。飼い主さんの知識と対策で、愛犬を暑さから守ってあげてくださいね」

実は私も冷房のつもりが暖房に……という事故の経験者。就寝時、枕元にエアコンのリモコンを置いておいたら、寝返りを打った拍子に暖房のスイッチON。ジュウザのハアハアという荒い息で明け方に目が覚めました。自分も汗びっしょりで危なかったかも。熱中症は予防できる病気ですが、思いがけない事故が起きてしまうこともあります。日常に潜む危険を知っておきましょう。

金子志織

編集&ライター、愛玩動物飼養管理士1級、防災士、ヒトと動物の関係学会会員、いけばな草月流師範 前職はレコード会社でミュージシャンのファンクラブ運営を担当。そのときに思い立って甲斐犬を迎える。初めての子犬の世話に奮闘するうちに動物への興味が湧き、ペット雑誌や書籍を発行する出版社に転職。その後、フリーランスのライター・編集者として独立。飼い主さんと動物たちの暮らしに役立つしつけや防災の記事から、犬のウンチングスタイルなど雑学の記事まで作成。現在も犬と猫を中心に、ペット関連のさまざまな雑誌、書籍、We…

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