猫を飼っている方が野良の子猫を保護した場合、
先住猫と子猫はしばらく会わせない
屋外で暮らしていた野良猫は寄生虫や感染症のウイルスをもっている可能性が大。先住猫にうつしてしまわないために、しばらくは猫どうしを接触させないようにしましょう。
保護した子猫は先住猫を入れない部屋でしばらくお世話するのがベストですが、隔離できる部屋がない場合は、ケージを段ボール板や布などで覆い、猫どうしが接触できないようにします。パーフェクトな方法ではありませんが、次善策です。「隔離できる部屋もないし、ケージもない!」という人は、とりあえず洗面所や風呂場で子猫をお世話。そして急いでケージを入手してください。ネットショッピングなら早ければ当日届けてくれます!
縦に長い1~2段ケージもありますが、隔離期間が終わるまでの一時的なお世話であれば、1段ケージでOKです。
飼い主さんがウイルスを媒介しないように注意!
猫どうしを直接接触させなくても、飼い主さんが保護した子猫を触った手でそのまま先住猫を触ると、ウイルスをうつしてしまう恐れがあります。これを避けるためには、お世話のたびに使い捨て手袋を使ったり、割烹着を着てその都度洗うという方法がベストですが、そこまでするのが面倒であれば、最低限、お世話が終わったら必ず手を洗って消毒を行ってください。
弱いウイルスならこれで死滅するのですが、死滅しないウイルスもあります。最も恐ろしいのは感染力が強く、死亡率も高いパルボウイルスです。パルボウイルスの症状は発熱や嘔吐、血便など。具合の悪そうな保護猫は先住猫と接触させないのはもちろんのこと、元気そうに見えても潜伏期間を経て発症する恐れがあるため、最低でも10日間は接触を避けてください。トイレ掃除用のスコップや食器を先住猫と共用するのもNGです。
<参考までに>
私は猫のお世話をしたあとや触ったあとに「バイオチャレンジ」という製品で手を消毒しています。パルボウイルスにも効果があるという除菌液で(100%の効果ではないようです)、ペットの体を清潔にするのにも使える製品。メーカー側は人の手などの消毒を推奨してはいませんが、私は「ペットの体に使えるんだから人間にも大丈夫だろう!」という勝手な判断で手にも使用しています。トイレやケージの掃除にも使えます。
*読者の皆さんが同様に使用する場合は自己責任でお願いします。
先住猫と子猫を対面させるのはいつ?
さて、保護した子猫はどれくらいの期間隔離したほうがいいのか?ですが、意見はさまざまあります。私の場合は、
●寄生虫駆除薬の投与が終了
*参考記事「子猫を拾った!ドタバタ育猫奮闘記(1)ノミ駆虫編」
●内部寄生虫がいないことを便検査で確認済
●猫エイズ・猫白血病の検査で陰性と確認済
*参考記事「野良猫を飼い始めるときは、ウイルス検査を!」
●ワクチン接種済
*ワクチンの種類によって免疫ができるまでの速さが異なるので接種の際に確認
●鼻水やクシャミ、下痢などをしておらず元気そう
●保護して3週間以上経った
であれば、先住猫と対面させています。
先住猫と子猫を同じスペースで飼育する4つのメリット
子猫の里親探しをする場合、子猫は別室で隔離したままでもいいのでは?という疑問があるかもしれません。
たしかに、お世話が大変でなければ隔離したままという選択肢もアリです。また子猫が感染症をもっていて一緒にできない場合や、どちらかがストレスで体調を崩すなどの場合は、隔離してお世話し続けるしかありません。
でもそうでなければ、子猫を先住猫と一緒にお世話するメリットはいくつかあります。
①子猫の社会化不足を回避できる
兄妹猫や親猫と一緒ならまだよいのですが、1匹だけだと猫どうしのルールを学ぶことができず、噛みグセなどが残りやすくなります。また幼い頃にひとりきりで過ごす時間が長いと情緒が不安定になります。
②他の猫と仲良しであることが、里親さんへのアピールになる
他の猫の存在に慣れることで、すでに猫を飼っている里親さんには、プラスのポイントとして受け取ってもらえる可能性があります。
③子猫の “人馴れ” が進められる
隔離部屋に飼い主さんがずっと居ることはできないはず。リビングなど人の姿が目に入る環境にいることで自然と人馴れが進みます。また、飼い猫として生きていくためには、テレビの音などの生活音に慣れさせることも大切です。
④子猫の運動不足を回避できる
別室がなくケージ内でお世話し続ける場合、運動不足になる恐れがあります。
先住猫&子猫、双方がそれほどストレスにならなければ、以下の方法で慣れさせ、同居を試みましょう。
失敗しない、先住猫と子猫の対面のさせ方
まず理解してほしいのは、新しい猫の存在はお互いに脅威になり得るということです。猫にとって一番大切なのはなわばり。そこに現れた新参者には、警戒して当たり前。ですから「ホ~ラお友達よ~」なんて言って抱っこして会わせる、というのは最悪です。慎重のうえにも慎重を期す必要があります。
STEP1:子猫をケージに入れた状態で対面させる
保護した子猫は必ずケージに入れた状態で先住猫と対面させます。ケージ越しなら、猫どうしがケンカしても傷を負うことはありません。ケージがある部屋を開放して先住猫が入れるようにしてもいいですし、先住猫の飼育スペースに子猫のケージを移動してもかまいません。飼い猫と同じスペース内でケージでお世話していた場合は、ケージ周りの布や段ボールを一部取り外します。これで互いに姿が見える状態になります。
先住猫を抱っこしてケージに近づける、などは避けてください。なかなかケージに近づかない先住猫もいると思いますが、あくまで猫の意思を尊重することが大切です。
どちらかがシャーシャー威嚇したりするかもしれませんが、「コラッ、だめじゃない!」なんて言って収めようとするのはNG。猫にとっては、「威嚇して当然なのに人にも怒られた」という理不尽な状況です。ケガはしないのですから、冷静に見守ることです。私の経験では、数日経てば威嚇しなくなることがほとんどです。
STEP2:子猫のケージの扉を開ける
次のステップはケージ外での対面です。ケージの扉を開け、自由に外に出ることができる状態にします。子猫は怖くなったらなじみのあるケージに戻れるような状態です。ここでも「ホラ、お外に出てごらん!」なんて言って引っ張り出すのは厳禁。あくまで猫の意思に任せます。なかなか出て来ない子猫もいると思いますが、その場合はしばらくしたら扉を閉めてOK。次回に持ち越しましょう。
はじめのうちは何か起きると怖いので、子猫がケージ外に出ているときはそばで見守っていてください。出かける必要があるときは子猫をケージに戻して「また明日ね」でかまいません。これを数日間くり返して、先住猫と子猫をなじませます。問題ないようなら、ケージを開けっ放しにしてよいでしょう。
普通、自分より小さい子猫に威嚇し続ける成猫は少ないものですが、警戒心が強くシャーフーいう先住猫には、子猫のおしりのにおいを嗅がせるのも有効です。おしりのにおいを先に嗅がせる=下の立場の猫だというサインになりますし、においを確認して相手が何者か知ることができると安心できる猫も多いものです。
ケージ越しの対面で友好的な雰囲気が見られなくても、「互いに気にしていない」状態なら、同じようにケージ扉を開けて対面させてみてください。
ちなみに私は、食事のときは保護猫をケージの中に戻して与えることが多いです。子猫が飼い猫のフードを狙ったりして揉めることが多いので。。。人間が寝るときも目が届かないので、保護猫はケージで休ませています。
もっと詳しく知りたい人は、『野良猫の拾い方』(大泉書店)をご一読ください。