春から初夏にかけては、道端で野良の子猫を見かけることが多くなります。地域やその年の気候にもよりますが、春先に交尾をした猫が、2ヵ月の妊娠期間を経て出産し、子猫たちが歩けるようになるのがこの季節。栄養状態のよい猫は1年のうち2~3回繁殖するといいますが、最大の繁殖期が春先なので、生まれる数も多くなります。
さて、道端で子猫を見つけたら、どうしたらいいでしょうか。「そのままにしておくのが猫のため?」「拾ってもウチでは飼えないし…」動物好きな人なら、さまざまな考えがぐるぐる頭を回って、どうしていいかわからなくなるかもしれません。この記事では、その指針のようなものをお伝えできたらと思います。
1.簡単に保護できる子猫は弱っているはず
私は元気に逃げ回る猫でも、捕獲器などを使って積極的に捕まえてしまいますが(笑)、そこまで積極的ではない方々が「子猫を拾う」状況というのは、おそらく…子猫が弱っていてあまり動けなかったり、よちよち歩きの子猫がミャーミャー鳴いて助けを呼んでいる状況ではないでしょうか(母猫がそばにいたら叫ぶようには鳴きません)。
つまり、危機的状況ということです。そのままにしていたら、たぶん…命を落とします。気になるなら、ぜひ保護してあげてください。「母猫が戻って来るかも」とそのままにしておくのは、私からすれば楽観的すぎます。子猫が必死に鳴いているのに母猫がそばにいないのは、育児放棄された可能性が高いです。
唯一、そのままにしておいたほうがよいかもしれないケースは、乳飲み子が母猫と一緒にいるときです。そのような猫を発見することは少ないと思いますが、もし発見したら、そのまま母猫に子猫を育ててもらったほうがよい場合が多いでしょう。乳飲み子を人の手で育てるのはスゴク大変ですし、うまく育たない場合も多いのです(愛護団体などは母猫ごと捕獲して室内で全員の面倒を見たりもしますが、一般家庭でそれを行うのはハードルが高いかと思います)。
ちなみに、すたすた自分で歩けるような子猫はもう乳飲み子ではありません。まだお乳を吸っているかもしれませんが、キャットフードを食べられる時期です。つまり保護して問題ない子猫です。
2.保護した猫を動物愛護センターや警察に持ち込まないで
あなたがその子猫を救いたいと思っているなら、動物愛護センターや警察に持ち込まないでください。動物愛護センターは確かに動物の譲渡業務も行っていますが、里親さんが見つかる可能性は多くはなく、期限内に里親さんが見つからなかった動物は、殺処分されてしまいます。
特にお世話に手間のかかる乳飲み子は、「徐々に弱っていくよりは」と、早々に殺処分されてしまうことが多いのです。忙しい職員さんに乳飲み子をお世話する余裕はないからです。(職員さんだって、好きで殺処分するわけではありません。そういうシステムになっていることを、私たちが変えなければならないと思います)
警察に持ち込まれた動物も、その後動物愛護センターに行くので同じこと。つまり、行政が何とかしてくれるという考えは捨ててください。猫を救いたいと思ったら、あなたが何とかするしかないのです。
3.自分では子猫を飼えなくても、救うことはできる
「自分で飼えないなら猫を拾うべきではない」という人がいますが、いやいや、そんなことはありません。世の中には「里親募集」というものがあります。いまは、インターネットで希望者を募ったり、一般人が参加できる譲渡会もあります。私も、この方法で多くの里親さんを見つけてきました。もちろん、知人や親戚に飼ってもらえれば一番いいかもしれませんが、知り合いのなかから里親さんを探すのはなかなか難しいと(実体験として)思います。
信頼できる里親さんを見つけるためには、ワクチンや寄生虫駆除、ウイルス検査などひと通りの獣医療を済ませているほうがよいと思います。人懐こい猫に育てることも必要です(子猫から育てれば普通、人に馴れてくれますが、人馴れしていない猫はやはり里親探しが難しくなります)。
譲渡の際には、終生飼育などの内容を盛り込んだ契約書を結びましょう。自宅に伺って飼育環境を確認させてもらったり、譲渡後に定期連絡をもらったりできると安心です。
また、個人的にはかかった医療費を譲渡費用として里親さんからいただいたほうがよいと考えています。自分が里親になるとしたら、その猫にかかった医療費を負担するのは当然と思いますし、虐待目的の人などを避けることにもつながります。
里親探しは慎重に。疑り深くなる必要はありませんが、見極める目は必要です。おかしな人に譲渡してしまうと、一生後悔することになりかねません。暴力やネグレクトに遭うくらいなら、野良猫のほうがまだマシです。そのことを心に留めて里親探しを行ってください。慣れないうちは、経験のあるボランティアさんにアドバイスをもらうのもよいでしょう。
4.弱っている猫、乳飲み子はどうする?
弱っていて看護が必要な猫で、あなた自身がお仕事などで看護できない場合、動物病院に入院させてもいいと思います。もちろん入院費がかかってしまうので、出費が痛いかもしれません。そのために地域猫活動や保護猫活動に理解のある動物病院を見つけておくと、多少出費が抑えられるかもしれません。
乳飲み子は、数時間おきに授乳と排泄のお世話が必要になります。これも、働きに出ている人がお世話するのは難しいかもしれません。動物病院に頼めるならよいのですが、看病以上に手間がかかるので、なかなか引き受けてくれるところがないのではと思います。
家族や知人にも頼めないようなら、近くの動物愛護団体を探してみてください。こうしたところも人手が足りず引き受けてくれる可能性は少ないですが、ダメモトで当たってみましょう。もし引き受けてくれたら、心付けを渡してほしいなと思います。相手は時間と費用を使って子猫のお世話をしてくれるのです。感謝の気持ちを表しましょう。
5.子猫を見つけた場所はその後もチェック
子猫がそこにいたということは、母猫や兄妹猫もその場所にいるかもしれません。そのままにしておくと、半年後にはまた子猫が生まれます。そうしたらまたイチからやりなおし…です(汗)
同じことの繰り返しにならないためには、母猫たちを不妊手術する必要があります。多くの自治体では保健所や役所で捕獲器を借りることができるので、自力で捕獲して動物病院で手術し、元に戻す(TNR*)こともできますが、経験がないと難しいかもしれません。近くの愛護団体に協力してくれるところがないか、探してみましょう。
*TNR:Trap(捕獲)、Neuter(避妊去勢)、Return(元に戻す)の頭文字。
もっと詳しく知りたい人は、『野良猫の拾い方』(大泉書店)をご一読ください。
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