猫にとって快適で安全な室内環境づくりはココがポイント!愛猫がストレスをためないために。

外に出れば、交通事故、排泄でのご近所トラブル、危険な感染症も心配・・・とあって、猫は今やほとんどが室内飼育です。しかし、本来、縄張りの広い動物なので、どんな広い家でも猫にとっては狭いし、本当は外に出たい。今回は、猫が室内で快適かつ安全に暮らすための環境づくりについてお伝えします。

猫にとって本気でうれしい、快適な室内環境とは?

●垂直に動ける・自由に移動できる
猫は垂直に動く動物なので、上下に動けるところを作ってあげることは必須。以前、伺った建築家のお宅は、猫のために造った家で素晴らしかったです。垂直面にいろいろ上れる柱を作って、2階から外にも出られる。網で覆ってあるので完全に外には出られませんが、太陽に当たれるし、風を感じられる。

キャットタワーに乗って伏せて眺める茶トラ猫

猫は高い所が好きで、高い所から外を眺めるのも大好き。そういう空間があるのは、とてもいいですね。また、猫が自由に移動できるように、家の中に猫ドアがたくさん付いているのも感心しました。

●隠れる場所をつくる
隠れる場所リラックスできるプライベートスペースも欲しい。ダンボール箱でも構いません。ただし中途半端な隙間だと、災害時、猫が入り込んで窒息したり、出られなくなって暴れて爪を折ったりしかねません。隠れるスペースは人工的に作ったほうがいいですが、閉じ込めてしまう危険がないように注意しましょう。

ダンボールに入って見上げるキジトラ猫

●風の流れがあるとうれしい
猫は家の中に風の流れがあるのを好みます。例えば、対角線に窓を開けて風がよく通るようにしてあげるだけでも全然違います。猫の祖先はリビアヤマネコで、暑くてドライな砂漠の生まれだから、湿度と寒さが苦手。体を舐めて、唾液が蒸発するときの気化熱で体温を調節しますが、湿度が高いと唾液が蒸発しません。日本の夏は湿度が高いので、エアコンのドライをかけてあげたほうがいいでしょう。

●年齢に応じた温度調節、暑さ・寒さからの逃げ場づくり
高齢になるほど筋肉量が落ちて代謝が変わり、寒さに弱くなります。家の中の温度、湿度も年齢に応じて調節してあげてください。また暖房や冷房器具を使用するときは、猫がその場所を「寒い」とか「暑い」とか思ったら、別の場所へ移動できるルートが確保されていることも大切です。
 

猫と暮らす上でとくに重要なのは「トイレ環境」

猫と暮らす上での必須案件は「トイレ環境」「爪研ぎ」、猫らしい動きができる「おもちゃ」。とくに猫にとってトイレの質はすごく重要です。

【清潔の維持】
トイレの数は猫の頭数+1個が理想ですが、無理な場合は、1個でもいいので大きめ、そしてこまめにメンテナンスすること。排泄物や汚れた部分はきちんとすくう、1〜2週間で砂を全部取り替えて、トレイも洗うことが大事です。

問題行動として粗相の相談は多いですが、トイレがその子に合ってない場合と、汚れている場合が多いです。汚れた部分がすくいきれていなかったり、砂を全部取り替えることなく何年も砂を足して混ぜていたり。猫は嗅覚がいい動物なので、これでは汚いトイレとしか感じません。

猫トイレの掃除

【トイレのタイプ】
トイレの場所、トイレの大きさ、高さ、砂の質、砂の量なども、気に入らなければ粗相の原因に。最近のトイレ商品は人間目線で作られていて、猫にとって快適でないものも多いように思います。トイレは、ホームセンターで買ってきた衣装ケースに砂を入れただけでも構いません。なるべく大きくて、洗いやすいものを。トイレの好き嫌いは個体差が大きいので、いろいろ試してみて、その子が好きなタイプを飼い主さんが探すことが大事です。

猫トイレで砂をかく子猫

【トイレの場所】
トイレの場所は、猫がアクセスしやすく、人の動線に引っかからないところ。わざわざ階段を上らないと行けなかったり、人が頻繁に行き来したり、洗濯機など音を立てて動くようなものがある場所は適しません。

また、人が凝視するのは良くないけれど、排泄の様子を確認できる場所が望ましい。トイレが長いなとか、何度も通っているのに出てないなとか、異常に気づきやすくなります。あと、トイレの場所は食事の場所と離すこと。
 

猫は非常にこだわりの強いデリケートな動物

●「爪研ぎ」はただ置いただけではダメ
猫が爪研ぎを使わないという人は、ただ置いただけでは? 爪とぎはマーキングなので目立つ場所や、寝起きに爪を研ぐことも多いため、寝床の近くなど、置き場所の見極めが大事です。

その他、幅は十分か、材質はどうか、平面置きか縦置きか、さらにおもちゃを付けたり、マタタビを振りかけたり、猫の好みに合ったものを選ぶことが大切。猫はこだわりの強い動物なので、トイレもおもちゃも爪研ぎも、使わなければ試行錯誤でその子に合ったものを見つけてあげるしかありません。

爪研ぎをする白猫

●模様替えもストレスになる
猫は細かく場所を覚えるので、部屋の模様替えをしただけでもストレスになり、粗相の原因になることも。模様替えはできるだけしないほうがいいです。引っ越しとなると、完全に空間が変わってしまうので、さらに大変です。猫は非常にこだわりの強いデリケートな動物なので、生活用品選びやその配置には、十分に配慮してあげてください。
 

猫の特性に合わせた注意点とは?

●できるだけ「水」を飲ませる工夫を
猫はあまり水を飲まない動物ですが、腎臓の病気が多いので適度には飲んでほしい。水をあまり飲まない子のための特殊陶器や噴水みたいな水飲み器もありますが、やはり好き嫌いがあるので、試してみないとわかりません。水を飲む場所も複数あったほうがいい。ウェットフードやペースト状おやつなどを上手に使って、水分を補うのもいいと思います。

●猫の行動特性に合わせた安全対策も
猫と暮らすにあたっては、ものの置き場所にも注意が必要。犬だと床しか動けませんが、猫は垂直に動けるので、棚に置いてある写真立てでも陶器でも簡単に払い落とします。知人宅では、猫が棚に置いてあった和菓子を落とし、下にいた小型犬がそれを全部食べてお腹をこわすという出来事がありました。置き場所に気をつけないと、時に命に関わることもあるわけです。

扉や網戸なども結構簡単に開けますし、ジャンプ力もすごい。脱出防止策も大事です。

ベランダから乗り出す茶トラ白猫

●暖房器具に潜む危険
最近はマイクロチップ装着の猫も増えていますが、マイクロチップが入った子はコタツはNG。コタツの中で上から赤外線が強く当たると、チップが過熱して、最悪、組織が壊死することもあります。床暖房も、皮膚に問題のない子はいいですが、乾燥肌の子はさらに乾燥が進むので気をつけて。

●多頭飼育の注意点
多頭飼育の場合は、食事は別々の場所で。また他の猫が食べないように、置き餌ではなく食事を与える時間を決めたほうがいいでしょう。多頭であるほど空間が欲しいところですが、部屋は広げられないので、垂直面を有効に活用することでバックアップしましょう。

ソファでくつろぐ2匹の猫

猫は多頭飼育がとても多いのですが、パーソナルスペースがなくずっと隠れていて、それがストレスになっていたり、犬と暮らしていて、いつも追いかけられて上にしかいられない子もいる。多頭飼育にはもっと慎重であってほしいと思います。

猫どうしでも、犬と猫でも、多頭飼育をしたいならあまり年齢を離さないこと。ほぼ同じぐらいで迎えたほうが、いざこざが起きにくいです。

石井 香絵

獣医師、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表、AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員 麻布大学獣医学部を卒業し動物病院で一般診療を行った後、動物行動学、行動治療を学ぶために渡米。ニューヨーク州にあるコーネル大学獣医学部の行動治療専門のクリニックに2年間所属し帰国。現在はワンちゃん、ネコちゃんの問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・講演活動など幅広く活躍。2013年からは、アニマル・クリスタルヒーリングのファシリテーターの養成を始める。愛…

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