野良猫を飼い始めるときは、ウイルス検査を!

我が家の猫は、全員「もと野良猫」。日本ペットフード協会のデータによると、飼い猫のうち78.8%が雑種とのことなので(2015年調べ)、我が家のように、野良猫を拾ったり譲り受けたりして飼っている人が多いようです。

ところで皆さん、野良猫を飼い始めるときに、ちゃんと「ウイルス検査」していますか?「何ソレ?」という方も、もしかしたらいるかもしれません。かくいう私も、猫飼い初期の頃は、知りませんでした…(;^ω^)

「ウイルス検査」などというと、初めて聞く方には何やら恐ろしげに聞こえるかもしれません。しかし、「野良猫ってやっぱり、変なウイルスとか持ってるの!?」なんて怖がる必要はありません。そもそも、私たち人間もいろいろなウイルスを持っています。

疲れると唇にブツブツができる人がいますが(私もそうです)、これは「口唇ヘルペス」といってヘルペスウイルスが引き起こすもの。免疫力が弱ってくると悪さをするのです。通常、いろいろなウイルスを持っていても元気であれば発症しませんし、猫のウイルスが人にうつることも、基本ありません。

 

ウイルス検査ってどうやるの?

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ウイルスにもいろいろと種類がありますが、猫エイズ(FIV)と猫白血病(FeLV)は必ず調べておきましょう。これらはいずれも、発症すると病気そのものを治療する術はなく、高い確率で死に至る重篤な病気です。

この2つは、動物病院で採血して調べてもらいます。必要な血液量はごく少量なので、子猫でも問題ありません。検査結果も10分でわかります。料金は、病院にもよりますが5000円前後でしょう。

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ウイルスがないと、陰性(またはマイナス
ウイルスがあると、陽性(またはプラス
という結果になります。

上の写真は、この夏保護した猫の検査結果。両方とも陰性で、ひと安心でした。

※その他の感染症の検査もあります。猫の症状等によって、受ける検査を獣医師と相談してください。

 

陽性(+)だった場合はどうすればいいの?

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陽性だったからといって、早とちりしないでください。陽性=すぐに死に至るわけではありません。ウイルスを持っているけれども元気な状態というのもあります。口唇ヘルペスを持っている人も、年柄年中、唇にブツブツがあるわけではありませんよね?元気なときは、発症しないのです。

また、発症することなく寿命を迎えることもあります。猫白血病は、発症するのは陽性の猫のうちわずか2割だそう。猫エイズは、無症状の時期が10年以上あることもあります。つまり、陽性でも長生きするのは可能なのです。

大切なのは、愛猫に感染があることを飼い主さんが把握しておき、適切な健康管理をすることです。そのためにも、ウイルス検査は受けておくべきです。

 

多頭飼いで陽性の猫がいる場合

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多頭飼いの場合は、やや話が複雑になります。陽性だった子は、その猫が元気であったとしても、他の猫への感染源になる恐れがあるからです。猫エイズや猫白血病は、空気感染することはなく、唾液や血液によって感染します。ケンカして咬み傷を作ったり、猫白血病の場合は食器の共有やグルーミングしあうことでうつることがあります。

「じゃあ多頭飼いできないの?」という疑問がわくと思いますが、陽性の猫がいても、多頭飼いしているおうちは実際にあります。感染ルートは上記のようなものですから、ケンカして怪我をするほど仲が悪かったり、逆に、いつもグルーミングし合うほど仲が良すぎなければ、同じ空間で飼うことも可能なわけです。感染していない子にはワクチンをして、予防することもできます。

「でも、やっぱり同じ部屋で飼うのは怖い!」という方は、陽性の猫だけ別室で飼う手もあります。(でもちょっと寂しいかも…?)

上記のような対策を講じるためにも、ウイルスのあるなしを把握しておくことは大切。新たに野良猫を家に迎える場合は、必ずウイルス検査をしましょう。陽性の猫を迎えて、何の対策もしないまま先住猫にまで感染を広げてしまうことのないようにしてください。「私の無知のせいで、この子まで感染させてしまった…」と後悔しないためにも、検査は必須です。

 

検査結果が変わることもあるって本当?

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これ、私も頭が混乱するのですが…陽性/陰性の検査結果が変わることが実際あるといいます。

◆陽性⇒陰性に変わる場合

猫白血病は、自然治癒することがあります。
これは感染した時期に関係があり、生まれたてで感染すると発症しやすく、ほとんどの猫が死んでしまいますが、離乳期を過ぎて感染した場合は、半数の猫が自然治癒するというデータがあります。1歳以上の猫で陽性の猫はわずか1割だそう。

子猫の時期は、陰性でも陽性と出ることがあります。
猫エイズの検査は、ウイルスに感染したことによって体内で作られる抗体が血液中に存在するかどうかを調べます。抗体がある→ウイルスに感染している、というわけです。しかし子猫の場合、生後6か月くらいまでは、母猫からもらった抗体が体内にあります。そのため、ウイルスに感染していなくても抗体が存在し、陽性と判定されることがあります。ですから、確かな結果を知るためには、生後6か月を過ぎて再検査するとよいでしょう。

陽性だと思っていた猫が陰性だった(感染していなかった)というのは朗報ですよね。ですから最初の検査で陽性でもあきらめず、再検査してみましょう。

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◆陰性⇒陽性に変わる場合
これは残念なパターンですが…。感染してすぐの時期は、陰性という結果が出ます。猫エイズウイルスに感染して抗体ができるまでは約2か月かかるといわれ、その前に検査するとウイルスに感染していても抗体がないため、陰性と判定されるのです。同様に、猫白血病ウイルスも、感染から1か月以内は、陽性でも陰性と出ることがあります。

ですから、野良猫を新たに迎え入れる場合で先住猫への感染を避けたければ、家に迎え入れて2か月ほどは別室などで飼い、検査で陰性とわかってから一緒にしたほうがよいでしょう。

※検査の時期はかかりつけの獣医さんとご相談ください。
※その他の感染症の感染拡大を防ぐためにも、元野良の新入り猫は最低でも2週間ほどは別室で飼うのが安全です。お世話の後は必ず手洗いや消毒をし、万が一ウイルスを持っていた場合に飼い主さんを介して他の猫にうつしてしまわないようにしましょう。
富田園子

編集&ライター、日本動物科学研究所会員 幼い頃から犬・猫・鳥など、つねにペットを飼っている家庭に育つ。編集の世界にて動物行動学に興味をもつ。猫雑誌の編集統括を8年務めたのち、独立。編集・執筆を担当した書籍に『マンガでわかる猫のきもち』『マンガでわかる犬のきもち』『野良猫の拾い方』(大泉書店)、『ねこ色、ねこ模様』(ナツメ社)、『ねこ語会話帖』『猫専門医が教える 猫を飼う前に読む本』(誠文堂新光社)など。7匹の猫と暮らす愛猫家。 ▶HP:富田園子ホームページ ▶執筆&編集した本: 『マンガでわかる…

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