犬猫の皮膚・耳の専門病院「hiff cafe tamagawa×pet skin clinic」の小林真也です。今回は、「猫のアレルギー性皮膚炎」についてお話しします。
猫のアレルギー性皮膚炎が最近増えてきているのはなぜ?
最近「猫のアレルギー性皮膚炎」の猫ちゃんに遭遇するケースが増えてきているように感じます。それはなぜでしょう?
1.室内飼育の猫ちゃんが増えてきた。
2.キャットフードやおやつなど食べ物が多様化してきた。
3.猫ちゃんブームで飼育頭数が増えてきた。
4.飼い主さんの意識が上がった。
どれも正解だと思います。
アレルギー疾患はもともと遺伝的な背景がある皮膚病です。皮膚のバリア機能の低下によりハウスダストに感作※1されることや、食事に対する有害反応が起こることで皮膚トラブルが引き起こされます。
室内飼育ではハウスダストにさらされる機会も増えますし、最近ではさまざまなフードやおやつが市販されていますので、猫ちゃんがアレルゲンに触れる機会が多くなったと思います。
猫ちゃんの飼育頭数も増え、何しろ一緒に生活する飼い主さんが猫ちゃんの皮膚の異変にすぐに気づくようになったことで、動物病院に連れてきてアレルギー性皮膚炎と診断されることが多くなったと感じます。
猫のアレルギー性皮膚炎の原因は?
猫ちゃんのアレルギー性皮膚炎の原因は主に3つあります。
1.ノミアレルギー
ノミに吸血されることで起こるアレルギーで、ノミの唾液が原因といわれています。ノミ・マダニ予防をしていない猫ちゃんは注意が必要です。
2.食物アレルギー
食物に反応して起こるアレルギーで、主にたんぱく質源や炭水化物源が原因とされています。様々な食材を使用したフードやおやつを与えている猫ちゃんは注意が必要です。
3.ノミや食物に関連しないアレルギー(いわゆる猫アトピー)
ハウスダストやホコリ、花粉など空気中に浮遊しているものに対して起こるアレルギーで、室内飼育の猫ちゃんは注意が必要です。
猫のアレルギー性皮膚炎の症状は?
猫ちゃんのアレルギー性皮膚炎はヒトや犬と違って典型的なタイプがなく、4つのパターンで皮膚トラブルがでます。
1.頭頚部の掻痒(そうよう)感
頭部や頚部を異常に痒がり始め、掻き壊すことで出血してかさぶたができます。ひどい場合には潰瘍化してしまうこともあります。
2.粟粒性(ぞくりゅうせい)皮膚炎
主に腹部や腰部に赤いブツブツした湿疹が出てきます。
3.外傷性脱毛
舐めることで毛が切れて脱毛し、左右対称に症状が出ることが一般的です。ストレスと間違われることも多い症状です。
4.好酸球性肉芽腫群
口唇に潰瘍が出たり、舌に結節※2が出たり、腹部など様々な場所にプラーク※3ができたりと、いろんな病型がある複雑な症状です。
※3 プラーク:日本語で局面と呼ばれる、脱毛して皮膚が赤く盛り上がった湿疹
以上の様に猫ちゃんのアレルギー性皮膚炎の病型はいろんなタイプがあり、診断が難しいです。皮膚に異常を見つけたら、まずは動物病院に相談しましょう。
猫のアレルギー性皮膚炎の治療法は?
●通年でノミ・マダニ予防をしましょう
ノミアレルギーはノミ1匹にでも刺されると異常な痒みが引き起こされます。刺されてからでは手遅れですので、1年を通してノミ・マダニ予防をすることをお勧めします。
●除去食試験で食物の関連性がないかチェックしましょう
食物のアレルギーの場合、低アレルゲンフードに切り替えることで皮膚炎が治ることがあります。まずは2ヶ月間、低アレルゲンフードと水以外のものは与えないで皮膚炎が治るかチェックしましょう。もし改善しなければアトピーが疑わしいでしょう。
●お薬で痒みを止めてあげましょう
アレルギー性皮膚炎の症状は“痒み”です。痒みを抑えるのは基本的にはお薬しかありません。現在よく使用される痒み止めは、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン製剤)や免疫抑制剤(シクロスポリン)が一般的です。効果や副作用、飲ませやすさなどを考慮して服用しましょう。
猫のアレルギー性皮膚炎は予防できる?
アレルギー性皮膚炎は遺伝的な病気ですので、予防することは難しいですが、悪化させない様に対策してあげることはできます。
●室内飼育
外の環境にはいろんな危険が潜んでいます。ノミ・マダニ・疥癬虫※4などの外部寄生虫やエイズ・白血病などのウイルス感染症、ケンカによる外傷、紫外線など環境的な問題もあります。直接的にアレルギー性皮膚炎に関係しないものもありますが、室内飼育は猫ちゃんの健康管理をする上で重要なことです。
※4 疥癬(かいせん)虫:ヒゼンダニ
●ノミ・マダニ予防
仮に室内飼育であっても、ノミ・ダニが感染しないとも限りません。飼い主さんが他の動物に触れたりすれば、ノミを家に持ち帰ってしまうこともあります。予防薬はスポットタイプや経口薬があり、最近では1回の投薬で3ヶ月間効果が持続するものもあります。予防できることを積極的にすることが、何より病気を予防することだと思います。
●食事管理
最近肥満傾向の猫ちゃんもよく見かけますが、いろんなフードやおやつを与えすぎているかもしれません。いろんなフードやおやつを与えてしまうと、その分アレルゲンに触れる機会も増え、結果的にアレルギーが発症してしまうこともあるかもしれません。与えるものの原材料をチェックしておくと、原因を特定しやすくなります。
アレルギー性皮膚炎は体質が関係している皮膚病なので、生涯にわたって付き合っていかなければなりません。飼い主さんも病気のことをよく理解し、獣医さんと飼い主さん、そして猫ちゃんとで一緒に頑張って治療していきましょう。