このたび、ずーっとやりたかった“野良猫を飼うためのハウツー本”を上梓することができました。野良猫の保護のしかたから、弱った猫の応急処置、子猫の育て方、人への馴らし方までを網羅した本です。
日本で“元野良猫”を飼っているのは全体の8割以上。なのに、野良猫を飼うためのハウツー本がないのはおかしいし、飼うためにすべきことが浸透していないという現状もある。かくいう私も、何の知識もなく野良猫を飼い始め、夏にノミが大繁殖したなどの痛い思い出があります(汗)。
野良猫を飼うためにやるべきことをわかりやすくまとめた本がほしい!!私のように苦労する人を増やさないために。何より、厳しい野良生活を抜けて幸せになる猫が増えるために。
監修をお願いしたのは、譲渡数6000頭以上を誇る東京最大の保護団体、東京キャットガーディアン。代表の山本葉子さんと、出版を記念して対談させてもらいました。
野良猫を飼うためのバイブルになれば
富田:この本が出て、まわりからはどういった反応がありましたか?
山本:いまの時期はちょうど子猫シーズンで、「子猫拾っちゃったけどどうすればいいの?」というお問い合わせが非常に多いんです。そのなかで「いま『野良猫の拾い方』という本を読みながら電話してるんですが!」という方がいましたね」
富田:まさに子猫のレスキュー現場からの電話だったんですね。
山本:必要なアドバイスは猫によってケースバイケースなんですが、基礎的なことはこの本がカバーしてくれてるので、話が早くて助かりました。ほかには、「気になる野良猫がいると言っていた人にこの本をあげました」という方もいましたね。
弱った野良猫と出会ったときに、「見捨てられる人」と「見捨てられない人」がいると思うんですが、この本は後者の「見捨てられない人」のためのバイブルになったらいいなと思っています。私はこういう人を“巻き込まれ型あきらめない族”と呼んでいます(笑)。
富田:いいネーミングですね(笑)。それを言ったら、私も“巻き込まれ型あきらめない族”ですね。うっかり拾っちゃって、このまま放っておいたら死ぬよと獣医さんに言われて、そりゃ大変とお世話をし始めた。気づいたら猫に夢中になっていました(笑)。
山本:猫を飼うきっかけは「そんなつもりはなかったのにうっかり拾っちゃった」が一番多いんです。準備もないから慌てますよね。この本には、「子猫用ミルクが入手できないときの代用品」とか、カイロで体を温めるとか、何の準備もなかったときに手近なものでできることを詰め込みましたから、即戦力になるんじゃないでしょうか。
富田:冷えた子猫を温めるときの「濡れないお風呂」、通称「湯せん」は秀逸でした。お湯とビニール袋と洗面器さえあればできる。多くの子猫を助けて来た山本さんだからこそ生まれたアイデアですね。
山本:「湯せん」の方法で実際に何十頭も助けています。本当におすすめの方法です。
猫エイズをむやみに怖がらないことも伝えたかった
富田:猫は多頭飼いしている人も多いですが、先住猫がいると、新しく保護した猫が感染症を持っていないか敏感になりますよね。先住猫に病気がうつると嫌だからと、野良猫を拾うことをためらう人もいます。
山本:そうですね。確かに感染拡大は防がなくてはいけませんが、必要以上に怖がる人が多いような気がしています。もちろん感染力が強くて注意しなければならない病気もありますが、例えば猫エイズなどはそれほど感染力が強くないので多頭飼いしている人も多いし、発症せずに一生をまっとうする猫も多いんです。なのに、猫エイズという言葉が恐ろしい響きなせいか、必要以上にあちこち消毒したり、忌み嫌ったりする人も見られますね。かくいう私も、最初の頃は猫エイズの猫を1匹で完全隔離していて、かわいそうなことをしたなと後悔しています。
富田:人のエイズも、最初は「触っただけでうつる」とか、デマが流れましたもんね。
山本:「怖がるなら、正しく怖がろう」。これは、伝えたかったことのひとつです。そのためには中途半端な知識ではなく正しい知識を持ってほしいなと思います。
「人馴れさせる」にもテクニックがいる
富田:私が特に力を入れたのは「馴らす」の章です。やはり飼うからには人馴れしてほしいものですが、やはりそれにもテクニックがあるなと実感していて。たまに「全然馴れてくれない猫がいる」と言う人がいて、話を聞くと「いやいや、それじゃ馴れないよ…汗」と思うことが。普通の飼育書ではあまり触れられない内容ですが、この本には屋外で生きて来た野良猫を“飼い猫修行”させる方法が必須だなと思い、充実させました。
山本:「家庭内野良」の馴らし方ですよね。多いですよね、家庭内野良(笑)。私もかたくなに心を開かない猫と何匹も接してきましたが、そういう猫が心を開いて来たときは余計かわいいものですよ。「珍獣を手なずけた」みたいな達成感もありますし(笑)。
富田:例えば、「追うのではなく追わせる」は大事なテクニックですよね。
山本:紐つきスリッパはおすすめの方法です。歩いているだけで猫が追いかけて来る。人がつまずかないように注意が必要ですが(笑)。
山本:あと、家庭内野良は野性的だから、狩猟系の遊びが大好きなんですよ。私は、子供用釣り竿の先におもちゃをつけて遊ばせていました。釣り竿が長いから人と離れた場所で遊べてストレス発散できるんです。
元野良猫を飼っている人には一度読んでほしい
富田:この本は、これから野良猫を保護しようという人にはもちろんのこと、現在元野良猫を飼っている人にもぜひ読んでもらいたいなあと思っています。うっかり拾っちゃったりしてなりゆきで野良猫を飼い始める人は、“野良猫にやるべきこと”を知らないまま飼っていることが多いんです。何を隠そう私がそれで、寄生虫駆除せずに家じゅうにノミが大繁殖したり、猫が吐いたと思ったら白くて長い虫がウネウネしてたり、猫白血病の検査もしないまま多頭飼いしちゃってたり…。「おいおい」とつっこみたくなるようなうっかり飼い主だったんですが、そういう私がひとつひとつ学んできたことを皆さんにも伝えられればなと思っています。
山本:それと、自分では飼えなくても一時的に保護して里親さんを探す人も増えるといいですよね。1匹でも助かる命、幸せになる猫が増えれば本望です。
東京都最大の保護猫団体。東京動物愛護相談センターなどに収容された猫を預かり、里親探しを行っている。東京・大塚に猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)をもつ。本書は大塚の保護猫カフェや、ShiPPO TV通販サイトでも販売している。
➤ホームページ:https://tokyocatguardian.org/
➤わんにゃん110番:0570-032-110
東京キャットガーディアンは猫に関する電話相談を24時間年中無休で受け付けています。ご相談は無料ですが、通話料がかかります。