シニアって何歳から? 私は獣医師として「8歳くらいから」とお話ししています。その頃から、目が白くなったり白髪が出てきたり、心臓病や腎臓・肝臓の不調も出やすくなってきます。ちょうど健康診断で引っかかる項目が増えてくる年齢ですね。
見た目は元気でも、老齢性・加齢性の変化が始まっている。大型犬はその「-2歳」と言われるので、5~6歳くらいから注意が必要です。
見た目の「老化」はこんなところから
●目が白くなる
白内障のこともありますが、「核硬化症」という目の老化現象であることも。この場合は、白くなるだけで視力を失うことはありません。
●白髪や毛のパサつき
白髪は顔まわりから始まることが多いです。毛量が減り、毛質も悪くなってパサパサしてきます。
●歯周病になる
加齢とともに唾液量が減り、口内環境が悪化して歯石が付着しやすくなります。それまで歯みがきをしなくても大丈夫だったのが、5~6歳を過ぎてから、急激に歯周病が進むことがよくあります。
それでスケーリングを頼まれるのですが、スケーリングをしても歯みがきができないと、またすぐに歯垢や歯石は付着してしまいます。できればスケーリングは、歯みがきができるようになってから行いたいものです。
●イボができる
年をとるとイボができるのは自然なこと。治療は外科手術になりますが、全身にできるので、いちいち切除する必要はありません。ただし悪性のものもあるので、ワクチン接種などで病院に行った際、獣医師に相談するといいでしょう。
悪性かどうかは、一部を切り取って病理組織検査に出さないと判断できませんが、すぐに手術が必要かどうかのアドバイスはできます。手術は高齢になるほど大変なので、まだ元気なうちに、例えばイボの切除と歯石の除去を一緒に行うのも一つの方法です。
●腰の筋肉の低下
腰の筋肉が落ちてくるのも老化の特徴です。しっかり歩いている犬のほうが衰えは遅いのですが、普段3~4時間散歩に行っているというコでも、ある時を境に急に筋力が落ちることも。痩せたと勘違いして、太らせる飼い主さんがいるので、そこは注意してください。
●行動や性格の変化
視力や聴力が衰えてくると、初期には過敏反応して臆病になり、急に咬みついたりパニックを起こすことがあります。逆に鈍くなってボーっとするようになるコもいます。
以前は怒りっぽかったのが穏和になったり、逆に我慢がきかずに暴れるようになったり、落ち着きがなく抱っこができなくなることも。老化によって性格が変わることがあります。
内なる老化は「健康診断」でチェックを
●6歳から年1回、シニアになれば半年に1回がめやす
犬は6歳くらいからが中年で、その頃から生活習慣病が出やすくなるので、年1回の健康診断を。さらにシニアになれば半年に1回をめやすに。フィラリア検査のタイミングで健診を受け、何か引っかかったら半年後にもう1回というのがおすすめです。健診で引っかかれば、早めのケアで病気や不調を先延ばしにすることができます。何も知らないで過ごすより、対処も覚悟もできます。
●10歳を過ぎれば、様子見せずにすぐ病院へ
人の数倍の速さで年をとる犬は、病気の進行もそれだけ速いということ。元気だったコが1ヵ月後には病気が見つかり、あっという間に亡くなってしまうことも。10歳を過ぎるとその確率はぐんと上がるので、今までなら様子を見ていたケースでも、早めに病院へ行くことをおすすめします。見える変化は飼い主さんが気をつけ、見えない変化は健診で早く発見するしかありません。
介護と看取りについても考えておこう
●介護に困ったら、動物病院に相談を
飼い主さんが愛犬の介護に大きな負担を感じていると、犬はすぐに亡くなってしまうことが多い。たぶん、飼い主さんの気持ちが伝わるんだと思います。逆に、傍目から見ると大変だろうなという状況でも、飼い主さんが上手に工夫して介護しているところは、長生きしてくれます。
介護に困ったら、まずは動物病院に相談するのが一番。治すことはできなくても、改善策や対応策をアドバイスできますし、そのコの環境に合ったサービスの紹介も可能です。介護に疲れたときに、有料サービスを使って一時休むのもいい方法だと思います。
●愛犬の寿命を知っておく
犬の寿命をちゃんと知っておきましょう。犬種差がありますが、15年±2歳、つまり13~17歳が一般的な寿命。どのタイミングで積極的な治療をやめるのか。病院で最期を迎える覚悟で入院させ、ギリギリまで長生きして欲しいのか、それとも最期は自宅で看取りたいのか。こういったことも考えておくべきです。もっとも、飼い主さんがあまりにも早々と覚悟を決めてしまうと、死期が早まるような気もします。
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