「犬を飼いたいんだけど、どの犬種が飼いやすい?」といった相談を受けることがあります。こういう時、僕は必ず犬と何をしたいのか考えてもらっています。なぜなら、ドッグスポーツをしたいのか、一緒にアウトドアを楽しみたいのか、ドッグカフェでゆったりしたいのか等によって犬側に求める能力も変わってくるからです。くれぐれも見た目だけで選ばないように(日本人はこの傾向が強いように感じます)!
ハンガリーの牧羊犬プーミー
例えば、ハンガリーの牧羊犬にプーミーという犬種がいます。モジャモジャで可愛らしい容姿は日本で人気が出そうな犬ですが、実際に見せてもらうと、とても俊敏で活発な犬でした。また、地元のトレーナーさんによると牧羊犬としては素晴らしい能力を発揮するが、町中で飼育するには運動量が多すぎるし、よく吠えるので向いていないとのことでした。
つまり、犬の能力が飼い主やその住環境にマッチしないのです。「こんなはずじゃなかった」とならないためには自分のライフスタイルに合った犬種を選ぶ事が必要なのです。
犬種だけではない犬選びに必要な知識
犬種は人間が意図的に作出してきましたが、いたずらに種類を増やしたのではなく、ラブラドールは鳥猟犬、ボーダーコリーは牧羊犬といったようにそれぞれ役割があります。柴犬はもともと日本の猟犬です。今でもそれらの仕事を与えられている犬もいますが、大半は家庭犬として飼育されています。しかしながら、選択育種で身につけた能力は全く失われてしまったわけではありません。ですから、その性質を考慮して飼う必要があるのです。
ここまでは少し犬に詳しい方であれば聞いたことのあることだと思いますが、今回はもう一歩踏み込んだお話です。
犬種の中に、更に「タイプ」(系統)があり、その見た目や性格、能力に違いがあるのです。タイプは大まかに分けるとその犬種のスタンダードな見た目を追求した「ショータイプ」と、犬種本来の仕事を遂行する能力を重視されてきた「フィールドタイプ」に分けられます(この他にも国や地域によりタイプが存在します)。
ショータイプは犬種図鑑に載っているような見た目といえばわかりやすいでしょうか?きれいな被毛や、立ち姿、歩様などその犬種の美しい見た目を追求したタイプといえます。ショータイプは一般的におっとりとした性格の犬が多いとされています。
対して、フィールドタイプは仕事をする能力(訓練性能)を重視されてきたので、活発な子が多いです。
体つきは、例えばジャーマンシェパードでは両タイプの見た目がかなり異なります。これはショータイプのシェパードは腰が落ちたような見た目を好まれてきたからです。
フィールドタイプのジャーマンシェパード:筋肉質で腰が落ちていない
ショータイプのジャーマンシェパード:腰が落ちた外見
同じようにゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーも系統により体型が異なり、フィールドタイプの犬はショータイプと比べて小柄、細身で本来の仕事である野山を駆け回るのに適した筋肉質な体つきをしています。使役の役割のあった犬種は大抵この2タイプに分けられるそうです。
自分のライフスタイルに合わせ慎重に
一見、フィールドタイプの犬は訓練性能、運動能力が高く非の打ち所がない様に見えますが、能力が高い分、様々な刺激に敏感に反応したり、運動したいという欲求も強いので、必然的に飼い主が多くの時間を犬に費やす必要が出てきますし、人間側にもそれ相応の犬の欲求を満たす飼育スキルが求められます。言ってみれば、乗りこなしが難しく、日々の細かいメンテナンスが必要な高性能なスポーツカーといったところでしょうか。
初めて犬を飼うという方には向きません。ただ単に、「血統のいいところから犬を迎えるのがいい」という知識だけだと、フィールドタイプの能力が高い犬にあたってしまうこともあります。
「いい」が何を意味するのか(見た目、性格、訓練性能、運動能力など)よく情報収集することが必要です。近頃は両タイプの交雑が進み、明確に分けられなくなっているのも事実ですが、家族に迎え入れる前に両親や系統がどんな性格や特徴をもっているか聞いてみると良いでしょう。