愛するペットのためにと思ってあなたがしてあげていることは、本当にペットの幸福につながっているでしょうか。今月の動物愛護週間(9/20~9/26)を機に、ペットとの暮らしを一度見直してみませんか?犬猫のペットオーナーを対象に実施した「日本のペットの幸福度調査」の結果をもとに、米国獣医動物行動学専門医の入交眞巳先生にお話をうかがいました。
獣医師 入交眞巳(いりまじり・まみ)先生
日本ヒルズ・コルゲート株式会社 獣医学術部 動物行動学専門医。米国獣医行動学専門医。学術博士。動物病院に数年間勤務した後、アメリカに留学。アメリカ・インディアナ州立パデュー大学で博士号取得。ジョージア州立大学獣医学部にて獣医行動学レジデント課程を修了。帰国後、北里大学動物行動学研究室専任講師、日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科講師を経て現職。
一日どれぐらい遊んであげれば満足か?
飼い主さんがペットと一日どれぐらい一緒に遊んであげるかは、ペットとのコミュニケーション度合いを測る重要な尺度。犬の場合は「1時間以上」が52.4%、「1時間未満」が47.6%とほぼ半々、猫は「1時間未満」が80.1%という結果に。
■群れの中で犬が他の犬と遊ぶ時間は一日の5~10%
まず、犬はこの遊び時間で満足しているのでしょうか。入交先生にお聞きしてみました。
「動物行動学から考えると、犬は群れの中では一日の5~10%しか、他の犬と遊ばないことがわかっています(“DOMESTIC ANIMAL BEHAVIOR”HOUPT著より)。つまり、ペットの犬も、一日1時間くらい構ってあげれば良いということになります。ペットの犬は人間の生活リズムに合わせて暮らしているので、一緒にいるときに構ってあげればOKです」
ただし、若いうちは1時間で物足りなかったり、高齢犬だと1時間では疲れてしまうこともあるので、年齢や個体差に合わせて調整を、とのこと。
■猫も実は構ってもらいたい動物
犬より自立度が高いと見なされている猫は、一緒に遊ぶ時間が犬よりかなり少なめ。はたして、これで足りてる?
「猫は群れをつくらない動物で、ベタベタした付き合いは好まないと考えられてきましたが、実は意外と社会性の高い動物で、犬と同じように構ってあげないとストレスが溜まります。一日の大半を寝て過ごしますが、起きている間は、声をかけたり、なでたり、ひもでじゃらしたり、積極的に構ってあげてください」
猫だって遊んでほしいニャ
散歩に“万犬”向けの正解はない
遊ぶ時間には散歩も含まれますが、適切な散歩時間の目安も知りたいところです。
■犬にとって散歩は大事だが、飼い主さんは無理しすぎないこと
「犬種によって異なります。ヨークシャーテリアのような小型犬を、炎天下で1時間以上散歩させてはいけませんし、ドーベルマンのような大型犬だと15分くらいの散歩を週1~2回では足りません。ただし、短くても散歩はしないよりしたほうがいい。散歩の目的は運動だけではありません。外に出て、いろんな人やものと出会ったり、他の犬のフェロモンをかいだりすることで、脳の刺激につながるからです」
とはいえ、飼い主さんが無理をしすぎるのもNG。毎日1時間の散歩をしても、飼い主さんが負担に感じてイラつくようなら、犬にとっても不幸です。入交先生からの提案は、「平日の散歩は30分でも、週末はドッグランで思いっきり走らせるなど、できる範囲で最善のことをしてあげましょう」
散歩の目的は運動だけじゃない!
■猫は室内に上下運動ができる環境づくりを
猫の場合は、「最近、運動不足かなと感じる場合は、猫が飛び乗れる場所など、室内に遊べる環境を作って、運動不足の解消を」。
猫は上下運動を好むので、キャットタワーやキャットウォークの設置もおすすめです。
しつけは、楽しいコミュニケーションタイムに
人とペットが共に快適に暮らすには、基本的なルールづくりやしつけが不可欠です。にもかかわらず、自身のしつけを「甘め」と答えた飼い主さんは、犬で68.7%、猫で76.2%も。
ペットを厳しくしつけるのはかわいそうと思う人がいるかもしれませんが、しつけは体罰を与えることではありません。
「できないからと、叩いたり、どなったりしても、ペットのストレスになるだけで、効果はありません。ごほうびを使って楽しく行うのがトレーニングのコツ。うまくできたら、おやつを一粒、報酬として与え、“いいコだね”とほめてあげる。これなら、ペットにとって、しつけの時間が飼い主さんとの楽しいコミュニケーションタイムになります」
トレーニングで、一回ごとに与えるごほうびは、小型犬で小指の爪半分くらい、大型犬は小指の爪くらいの量が目安。与えすぎには注意して。
また、報酬としておやつをもらうのが好きなのは猫も同じ。「猫にしつけ?と思われるかもしれませんが、“おいで”や“ハウス(ケージに入れ)”を覚えさせておくと、災害などの緊急時にも役立ちます」 と入交先生もおすすめ。
おやつは働いた報酬としてもらった方が、幸せ度がアップ
入交先生によれば、おやつを報酬に使ってしつけをするのは、甘やかしではなく、とてもいい「おやつの与え方」なのだそうです。
「心理学でコントラフリーローディング効果(contrafreeloading effect) と呼ぶ現象で、ゴキブリから人まですべての生き物は、仕事をした報酬でごはんをもらうほうが、ただごはんをもらうより好き ということがわかっています。この方が、脳が活性化して覚えもいい。だから、最近は動物園などでも、わざと餌を隠したり、トレーニングを取り入れて、単に目の前に餌を差し出すのではなく、動物たちが考えて働かないと食べられないようにひと手間かけて与える工夫をしています」
コングにお気に入りのおやつを入れて、ひと工夫。
ペットの犬や猫も、飼い主さんが遊んであげる時間がとれないときは、コングなどの知育トイを利用すれば、遊びながらフードやおやつが食べられ、食べ過ぎも防げます。与え方次第で、ペットの幸せ度がさらにアップするというわけです。
猫だって、スペシャルなおやつを使って知育ゲーム。食いしん坊なコには、ぜひチャレンジを!
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【記事制作協力】 日本ヒルズ・コルゲート株式会社