前編に引き続き、犬猫のペットオーナーを対象に実施した「日本のペットの幸福度調査」の結果をもとに、米国獣医動物行動学専門医の入交眞巳先生にお話をうかがいました。
愛するペットのためにと思ってあなたがしてあげていることは、本当にペットの幸福につながっているでしょうか。今月の動物愛護週間(9/20~9/26)を機に、ペットとの暮らしを一度見直してみませんか?
獣医師 入交眞巳(いりまじり・まみ)
日本ヒルズ・コルゲート株式会社 獣医学術部 動物行動学専門医。米国獣医行動学専門医。学術博士。動物病院に数年間勤務した後、アメリカに留学。アメリカ・インディアナ州立パデュー大学で博士号取得。ジョージア州立大学獣医学部にて獣医行動学レジデント課程を修了。帰国後、北里大学動物行動学研究室専任講師、日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科講師を経て現職。
ペットの幸福度は健康度に比例する
「ペットの幸福度は健康度に比例する」といってもいいほど、健康は大切な要件。調査でも、飼い主さんのペットに対する健康管理意識は高く、とくに「寄生虫の予防や各種ワクチン接種」や「食事の栄養管理」には高い取り組みがみられました。
加えて、入交先生が注目するのが、ストレスケアの大切さです。
「ペットにとって最大のストレスは飼い主さんとのコミュニケーション不足。分離不安から、飼い主さんが出かけようとすると水を一気飲みして吐いたり、ふだん口にしないものを食べて気を引こうとしたり、身体の一部をなめまくってハゲてきたり・・・と、千差万別の問題行動となって現れます」
ストレスの原因究明が大切ですが、行動治療を専門とする獣医師への相談が必要になるケースも。体の健康だけでなく、心の健康にも気をつけてあげたいものです。
過度なグルーミングが、ストレスのサインである場合も…
多くの飼い主さんが、おやつの与え方を間違っている
調査では、飼い主さんの栄養管理意識は高かったのですが、その一方で、不安な点も見えてきました。それは、犬も猫も約半数の飼い主さんが、ペットに「ねだられた時」や「寂しい思いをさせた時」についついおやつを与えてしまうこと。
こんな目で見られたら、つい・・・という方多いのでは?こうした“甘やかし”に対して、入交先生は警鐘を鳴らします。
「あげたい気持ちはわかりますが、それでは栄養バランスが偏ってしまいます。犬も猫も人間の3~5歳児くらいの知能があるので、そのくらいの子供に置き換えて考えれば、どうすることがペットにとって幸せなのか、わかるはず。欲しがるからと野放図に与えていたら、どんどん太って、いずれは健康を害することになります」
ペットの約3分の1が“ぽっちゃり系”
実際、ペットの体型を「ぽっちゃり」または「ややぽっちゃり」と答えた人は、犬で36.1%、猫で33.1%。3分の1が肥満もしくはその予備軍であることが判明しました。
しかも、動物病院を対象にした調査によれば、肥満ペットの飼い主さんの約半数は、自分のペットの肥満に自覚がなく、肥満は飼い主さんの自己診断以上にまん延していそうです。
確かに、ぽっちゃり系はカワイイのですが・・・
幸せに黄信号を点滅させる“肥満”
肥満が恐いのは、様々な生活習慣病の引き金となるから。動物病院の調査では、獣医師が肥満に関連すると思われる疾患として、関節疾患や内分泌疾患(ホルモンの病気)、心臓や肝臓などの内臓疾患など、様々な病気を挙げています。
「ぽっちゃりを可愛いと感じる飼い主さんは多いのですが、肥満は健康の大敵。動物病院などで太りすぎを指摘されたら、おやつの与え方に注意したり、ペットフードを見直すなどして、早めのケアをしてください」と入交先生。
肥満の背景には、「うちのコの喜ぶ顔が見たい」とか「食べたいのを我慢させるなんてかわいそう」という、飼い主さんの愛情が絡んでいるだけに、自力でのダイエットはなかなか成功しません。早めに動物病院で相談し、食事指導を受けることが、ペットの幸せのための近道かもしれません。
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【記事制作協力】 日本ヒルズ・コルゲート株式会社
手遅れになる前に、動物病院に相談を。愛犬・愛猫に我慢させることなく健康的にダイエットできるフードやおやつを使ったプログラム も用意されている。