飼い主さんからよく受けるのが、「おやつがないと、言うことを聞いてくれない」「ごはんの前のマテしかできない」といったご相談。皆さんの愛犬はどうですか?
おやつがないと指示を聞けないのでは、緊急時に困りますし、おやつを介してだけの関係では、飼い主としてもちょっと寂しい。そこで、今回は、おやつがなくても言うことを聞ける犬にしていく方法を学びましょう。愛犬がつねに「この人の指示を聞きたい!」と期待感をもってくれるような、魅力的な飼い主をめざしたいですね。
おやつを見せびらかして、指示していませんか?
飼い主さんがよくやる失敗は、おやつを見せびらかして指示を出すこと。例えば、ごはん前のオスワリは、器の中のドッグフードが見えていて、言うことを聞けばもらえる状況でのオスワリ。対して、実際にオスワリをしてほしいのは、お散歩に出る前の玄関やお散歩中の信号待ちなど。こんな難易度の高い環境で、いきなりおやつなしに指示を出しても聞いてくれるはずがありません。
そして、飼い主さんが愛犬の気を引こうと、つねにおやつを見せたり、おやつの袋をカサカサ鳴らしてから指示することを繰り返していると、犬はおやつという「賄賂」なしには指示を聞かなくなってしまいます。教えるべきは、「おやつがあるから指示を聞く」のではなく、「指示を聞いた結果、ご褒美としておやつが出てくること」なんです。
では、どうやっておやつを見せびらかすことなく、ご褒美が出てくるという期待感をもたせればいいのでしょうか。ポイントは3つあります。
Point1:「褒め言葉」をご褒美にする
日曜日の夕方、サザエさんのエンディングテーマを聞くと暗い気分になるお父さん方も多いのではないでしょうか? これはエンディングテーマが休日の終わり、つまり翌日の仕事を連想させるからです。梅干しを見ただけで唾液が出るのも同じ理屈。これは「古典的条件付け」と呼ばれるもので、トレーニングにも活かせます。
まず、犬に「褒め言葉」を覚えてもらうために「いい子!」と声をかけ、「ご褒美」をあげることを繰り返します。そのうち「いい子!」と聞いただけで、うれしそうな反応を見せるようになるので、そうなれば、おやつ代わりになったと考えてOKです。
褒め言葉は、犬がやってほしいことをしたときにかけてください。例えば、「オスワリ」のトレーニングなら、できたときに必ず褒め言葉をかけてご褒美をあげることで、犬はうれしくなり、自分がとった行動が正しかったことを理解していきます。
Point2:おやつは急に「ゼロにしない」
「もうオスワリを覚えたから、おやつはいらないわね」という飼い主さんがいますが、これは人間に置き換えると、「もう仕事を覚えたから、お給料は払わないわね」というのも同然。これではやる気が出るはずがありません。では、おやつはいつまで必要なのでしょうか。
すでに覚えた簡単な指示に対しては、徐々におやつをあげる回数を減らしていきます。ポイントはその減らし方。10回できたら10回あげていたのをまずは半分の5回に減らし、正解率が落ちなければ3回、2回と減らしていきます。もし正解率が落ちるようなら、回数を元に戻して練習します。重要なのは、おやつの有る無しに関わらず、褒め言葉を必ずかけること。
Point3:犬の「ギャンブル好き」を利用する
僕たちがパチンコや競馬などのギャンブルに熱狂するのは、いつ当たるかわからないからですが、これは犬のトレーニングにも応用できます。
犬の気持ちになってみると、「オスワリをするとご褒美がもらえるけど、それがいつかわからないんだよなあ。次はもらえるかな」と、いつ当たり(ご褒美)が出るかわからないから、指示を聞くこと(オスワリ)をやめられなくなる。しかも、「一度でも指示を聞き逃したらもらえないかもしれない。気を抜けないぞ!」と集中力もアップします。
じつは、犬はギャンブル好き。ご褒美の回数を減らしてランダムに与えたほうが、必ずご褒美をあげていたときよりも覚えた行動を忘れにくくなります。これを専門用語で「部分強化」といいます。ただし、あまりにも与えなさすぎれば、「どうせくれないんでしょ!」と、やる気が途切れてしまうので注意しましょう。
クッパはおやつも好きですが、こうして走ったり、ボール遊びをすることも大好き。愛犬の大好きなことを見つけて一緒にたくさん経験していくことで、絆も深まっていくのだと思います。
なかなか耳の痛い話もあったのではないでしょうか? たしかに、犬とコミュニケーションをとるのに、おやつは絶大な威力を発揮します。大好きなものを与えてくれる人のことは、犬も大好きになるし、「その人の言うことは何でも聞きたい!」と期待感も高まります。だからといって、おやつありきの関係にならないように、遊びや褒め言葉などを上手に活用しながら、愛犬をいつもワクワクさせられる飼い主でいたいですね。