犬にとって安全でリラックスできるスペースになるとともに、災害時や入院、移動時など、様々なメリットのあるクレートトレーニングは、成犬になってからでもできます。この機会にぜひ取り組んでみましょう。
災害時にも備えて、今からでもトレーニングを
クレートトレーニングができていると、動物病院やペットサロンでいつもと違うクレートに入れられてもストレスが少なくてすみます。また災害時には、避難先で飼い主さんと離れてクレート暮らしの可能性もありますし、仮に外でテントを張って飼い主さんと一緒にいられたとしても、犬がずっとむき出しでは疲れてしまいます。クレートに入って休めるほうが負担が少なくてすむでしょう。
これまでクレートを使わずにきた飼い主さんも、もう成犬だからとあきらめず、これから示す方法で、ぜひトレーニングに取り組んでください。
クレートトレーニングは2種類の方法で
まずはクレートの扉を外して、中にタオルを敷いてセッティング。トレーニングには2通りあって、1つは、人がいなくても、犬が自然に入れるようにする練習。
もう1つは、人が「ハウス」とか「イン」などのコマンドを使って入れるようにする練習。この2つを並行して行っていきます。
トレーニング1:自然に入るようにする
犬が見ていないときに、クレート内に敷いたタオルにフード(おやつ)やおもちゃを隠して、犬が自然な流れで入るようにします。「ハウス」などのコマンドは使いません。一日のうちで何回もくり返すと、犬は「ここには絶対いいものがあるはず」という期待感から、何も入っていないときにもクレートに入るようになります。犬が自発的にクレートに入る行動を強化するため、朝晩のごはんを中で食べさせるのもいいでしょう。
トレーニング2:誘導して入るようにする
1.おやつで誘導し、入ったときにコマンドをつけてほめる
次は、「ハウス」とか「イン」などのコマンドをつけて、犬が入れるようにする練習です。最初は犬におやつを見せて、おやつがあることを認識させ、クレートへと誘導。全身が入ったら「ハウス、いい子だね」とほめて、おやつをクレート内に落とします。
すぐに出てきてもかまいませんが、もし中で滞在してくれるなら、また「ハウス」と言っておやつをあげる。これをくり返して滞在時間を延ばしていきます。
2.少し離れておやつを投げ入れ、入れるようにする
今度は、おやつがあることは見せますが、少し離れた位置からクレートに投げ入れます。犬が入ったら、「ハウス、いい子」。人が少し離れた位置でも、ひとりで入れる練習です。だんだん距離を離していきます。
3.おやつを投げるふりをして、入った後におやつをあげる
次の段階では、離れたところから投げるふりだけで、おやつは入れません。先程はおやつが入っているからそれが呼び水になりましたが、今度は入ったあとにおやつが来るという学習に変えていきます。犬が入ったら、「ハウス、いい子」でおやつをあげます。
4.入った状態でオスワリやフセをして、滞在時間を長くする
それができるようになったら、滞在時間を長くする練習です。入った状態で「オスワリ」や「フセ」をさせ、「いい子」でおやつ。さらに「マテ」をさせて「いい子」でおやつ。ハウス、フセ、マテ・・・で滞在時間を延ばしていきます。
5.クレートの向きや飼い主さんとの位置関係を変えてくり返す
飼い主さんがいつもクレートの正面にいてコマンドを出していると、犬は飼い主さんがそこにいないとできなくなる可能性があります。そこで、クレートの向きを変えたり、飼い主さんがクレートの背後に回るなど、位置関係を変えてコマンドを出してみます。背後からだとフードも投げ入れられないので、犬が本当にコマンドを理解していないとできません。いわばテストですね。
6.扉を付けて練習する
慣れてきたらクレートに扉を付けます。最初は全開から始め、「ハウス、いい子」でおやつをくり返しながら、少しずつ閉じていきます。最終的にパチンと閉めて、1分滞在とか、2分滞在といった練習もしていきます。扉を閉めたときに、嫌がってフンフン鼻を鳴らしたり、ガリガリかいたりする場合は、それをしている間は絶対開けないこと。おとなしくなったら開けてください。でないと、鼻を鳴らしたりガリガリしたら開けてもらえると学習してしまいます。
この2通りの練習を毎日行っていると、基本的にクレートのような形状の薄暗いスペースは、イヌ科動物にとって “ねぐら”として安心できるものなので、ひとりになりたいときや体を休めたいときなどは、中に入って寝るようになります。
また車の中でクレートを使用したい場合は、家の中とは雰囲気が違うので、別に車内での練習が必要です。やはり扉のない状態から慣らして、犬が自然に入れるようになってから使ってください。練習を省いて、いきなりクレートに押し込んで車に乗せると、どんどんクレート嫌いになりかねません。