犬のクレート(ケージ)の選び方、使い方を行動学専門の獣医師が解説

愛犬はクレート(ハウス)を使っていますか? クレートに慣らしておくと、犬にとって安全でリラックスできるスペースになるとともに、災害時や入院、移動時などにとても助かります。犬にとって様々なメリットのあるクレートの選び方、使い方などをお伝えします。

犬のクレートって何?ケージ、サークルとの違い

犬用のハウスというと、クレートだけでなく、サークル(ワイヤーや木製の囲い)やケージ(ワイヤー製の屋根付きの檻)をイメージする人も多いと思います。明確な定義があるわけではありませんが、ここでは以下のように区別してお話ししたいと思います。

●クレート
プラスチック製や布製で、全面囲われた、犬を入れて持ち運びできるような入れ物。
 

●ケージ
金属製で、全面囲われた入れ物。折りたたみできるものが多い。

●サークル
金属製や木製、布製で、側面を囲う柵のようなもの。

犬にとってクレートはなぜ必要?

①トイレトレーニングが簡単に
子犬を迎えたときに、「ここがトイレで、ここが寝床だよ」と犬に明確に教えるために、クレートは必須です。まずサークルを設置して、その中にクレートとトイレをセット。クレートは扉を外して入りやすくし、中にタオルを敷きます。

飼い主さんがよくする間違いは、ペットシーツを敷くこと。クレートの中は排泄をさせない場所として教えないといけないので、ペットシーツを敷くのはNGです。もちろんタオルでも子犬は何回か粗相をしますが、成長するにつれ、自分の寝床が汚れるのが嫌で中で排泄はしなくなります。

クレートを用いると、寝る場所と排泄の場所が明確になって、トイレトレーニングが簡単にできるんです。

寝ている子犬

クレートの代わりにかわいいふかふかのベッドを入れる飼い主さんもよく見かけますが、犬はやわらかい感触を好むため、トイレトレーニングがすむ前だと、そこで粗相をする確率が高くなってしまいます。ふかふかベッドにしたければ、トイレトレーニングが完全になってからにしましょう。

②犬がリラックスできるスペースとして
災害時や入院、移動のときなどは、狭いところに閉じ込められることもあるので、クレートに慣らしておくことはとても大切です。アジリティなどの競技会に出るときも、クレートは必須。試合会場では興奮して疲れやすくなるので、犬がいつも使っている居心地のいい居場所があるだけでリラックスできます。

キャリーケースの中で寝るチワワ

旅行のときも、その子が慣れた寝場所があればすごく安心できます。とくに3〜4頭の多頭飼育の場合は、それぞれのスペースで安らぐ時間を設けることがとても大事。どんなに仲が良くてもそれぞれのクレートが必要です。
他にも、犬が苦手な来客や、部屋の工事などで犬がいると危険な場合など、一時的に安全を確保する場所としても活用できます。

使い勝手のいいクレートの選び方

クレートはどんな素材、構造、サイズのものを選べばいいのでしょうか?

●プラスチック製のシンプルなもので、扉が取り外せる
基本的にプラスチック製のシンプルなもので、扉が取り外せるものがおすすめです。扉がバタバタすると犬が怖がって入らないので、最初1〜2週間は必ず扉を外して使います。慣れてきたら、扉を付けて全開の状態から、少しずつ扉を閉める練習をしていきます。上部からも出入りできるタイプがありますが、犬が自分の足で歩いて入ることが大事なので、普段は使わないでください。

クレートの中でふせをして待つ白いトイプードル

●中でくるっと回れるサイズ、大きすぎるのもNG
サイズは、犬がかがまずに入れる高さ、入ってからくるっと360度回転できる大きさが必要。クレートトレーニングでは中でごはんをあげたりもするので、そのとき、体が外にはみ出してしまうようだとNG、すっぽり完全に体が入る大きさが欲しいです。

窮屈だと犬が入りたがらなくなるので、小さすぎるのは論外ですが、子犬の場合、大きすぎるのも、中で粗相をする可能性があるのでよくありません。

●大型犬は1回買替えが必要、小・中型犬は成犬時の大きさを見越して
子犬時に買う場合、大型犬だとおそらく1回買い替えが必要ですが、小・中型犬の場合は、成犬になれば今の1.5〜2倍ぐらいの大きさになるかなというのを見越して選ぶといいでしょう。

●クレートカバーの使用はケースバイケース
クレートにカバーを掛けるかどうかは、ケースバイケース。犬が人目を気にしないようにとか、外の刺激にさらされるのを避けたいときには掛けてもいいかもしれません。犬が外を気にして吠える場合は、カバーを掛けたほうが落ち着くこともあります

クレートを長時間拘束や罰として使うことは厳禁

犬が成長して、トイレトレーニングも完全になり、破壊行動もしなければ、サークルを撤去してトイレとクレートだけにしてもかまいません。

ただし、お留守番のときや夜寝るときに、犬をクレート内に閉じ込めるという使い方はしないでください。自由に排泄とお水が飲めるのが基本、クレートでの拘束はせいぜい2時間までです。お留守番時のいたずらや事故が心配な場合は、サークルを撤去せず、飼い主さんの不在時はサークルに入れておくようにしましょう。

サークルの中に入るチワワの子犬

注意してほしいのは、クレートに入ることを罰として使わないこと。悪いことをしたから入りなさいという罰に使うと、犬が入るのを拒絶するようになります。

犬にとって様々なメリットのあるクレート。ぜひ準備して活用してください。上手にクレートに慣らすトレーニングの方法は、「成犬からでもできる!犬のクレートトレーニングの方法でお伝えします。

 

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石井 香絵

獣医師、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表、AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員 麻布大学獣医学部を卒業し動物病院で一般診療を行った後、動物行動学、行動治療を学ぶために渡米。ニューヨーク州にあるコーネル大学獣医学部の行動治療専門のクリニックに2年間所属し帰国。現在はワンちゃん、ネコちゃんの問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・講演活動など幅広く活躍。2013年からは、アニマル・クリスタルヒーリングのファシリテーターの養成を始める。愛…

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