愛犬がごはんをおいしそうに食べる様子を眺めるのは、飼い主の喜びのひとつ。今回は、手作りごはんにチャレンジしたい初心者から、愛犬の食が細いことに悩む飼い主さんまでに役立つ情報を、犬ごはんの専門家である南村友紀さんに教えていただきます。愛犬の心身のヘルシー生活のために、ぜひお役立てください。
南村友紀さん
初代のゴールデン・レトリーバーの愛犬の手作りごはんを始めたことをきっかけに、2002年に犬専用のデリカテッセンであるKitchen Dog!を東京の自由が丘にオープン。現在は店舗はありませんが、ネットショップKitchen Dog!でデリカデッセンや手作りごはんのための材料を販売。商品の企画開発のほか、犬のための料理教室、講演などで活躍中。
愛犬の目もキラキラ、手作りごはんの良さ
手作りごはんの良いところは、なんといっても、新鮮な食材を愛犬に与えてあげられること。ドライフードなどの加工したフードでは、どうしてもフレッシュさは得られません。筆者もしばしば2頭の愛犬に手作りごはんを与えるのですが、フードボウルから立ち上る肉の香りに気づいたときの目の輝きと興奮度が、やはりドライフードとは違う!と実感しています。
ところが、毎食手作りするのは筆者も実際は面倒で…。さらには、手作り食は栄養バランスを保つのがむずかしそうだと悩んでしまうのも事実。そこで、キッチンドッグの南村さんに、犬ごはんの気になるところをどんどん聞いてみました。
南村さんはまず、「手作りごはんって、ドライフードと違って水分を一緒に摂れるのもメリットなんですよ。人間も含めて動物は、やっぱり水分があるものをおいしく感じるはずだから」と、教えてくださいました。
実はハードルが高くない、手作りごはん
南村さんによると、「手作りごはんって全然むずかしくないですよ。犬には、肉などのタンパク質を一番多めにして、あとは炭水化物と野菜を同率くらいで加えてあげればOK」とのこと。
メインとなるタンパク質の給与量の目安としては、体重5kgの犬で1日に肉を125gほど。
犬の体重1kgにつき5~6g(※若齢の犬や運動量の多い犬では6~7g、腎臓などが悪い犬は3~4g)のタンパク質が必要で、肉の約20%がタンパク質だと言われているからです。
ちなみに計算式は、以下のとおり。
25g×5=125g ←1日に必要な肉の量(タンパク質の含有量は肉の1/5なので、5倍する)
「カロリーの計算も、しなくて大丈夫。そのかわり、愛犬の肉付きや体調を日々よく観察しておいてくださいね。活動量や、季節や愛犬の体質によっても消費カロリーは変化するので、日によって給与量の調整をしましょう」(南村さん)。
旬の食材を茹でるか蒸して細かく刻む
南村さんによると、愛犬用には、どんな食材も茹でるか蒸すのがベストだそうです。
「焼くよりもビタミンや栄養素が残りやすく、水分も摂れるからです。野菜ならば、人のごはんを作るついでに、ブロッコリーやセロリやキャベツやニンジンなど、2~3種類と肉を茹でるか蒸して。このとき、白米を一緒に浸してしまえばラクですよ。最後、野菜はみじん切りに、肉は愛犬の一口大にカットすれば出来上がり。ヘルシーな亜麻仁油などのオイル類を入れれば、あとから白米を入れても混ぜやすいのでオススメです」。
野菜を細かくするにはフードプロセッサーが便利だと聞き、筆者もさっそく試してみようと思います。細かくした野菜類は冷凍保存しておくと、便利です。
以前の獣医師に聞く、犬のアンチエイジング5つの秘訣!の記事でもご紹介しましたが、南村さんも、旬の食材を積極的に与えたいと述べています。
秋のイチオシ食材は、サツマイモとマイタケだとか。
「サツマイモやナスの皮はポリフェノールが豊富なので、シニアドッグにも最適。マイタケやハナビラタケには、ガン細胞の活動を抑制する物質として知られる、βグルカンが含まれています。我が家では、キノコ類は少なめの水で煮て、その煮汁を愛犬に与えています」(南村さん)。
冬には大根やカブや白菜なども犬に良いそうなので、筆者もぜひ愛犬たちに与えてみます。
食べない&食が細い悩みを解決!
愛犬の食が細いことに悩む飼い主さんも、少なくありません。南村さんに対策を尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。
「我が家の場合、夏場はごはんをあげる場所を変えたら解決しましたよ。暑気がこもる2階にキッチンがあるので、試しに涼しい1階であげたらパクパク食べるように(笑)。人間同様、暑さで食欲が落ちていたのかも。犬によっては、落ち着ける場所だったり、食べやすい器や高さで与えると食べるかもしれません。とにかく、愛犬の“食べたくない気持ち”をまずはわかってあげてくださいね」。
前述のとおり、水分がなくて食欲がそそられないとか、水分が不足していてフードが喉に詰まって食べづらいという可能性もあるでしょう。野菜が苦手な犬には、肉と野菜を一緒に入れて蒸し焼きにすると、肉のにおいが野菜につくので食べるようになることが多いそうです。
南村さんが知る例では、生肉を与えたら急に食べるようになったシベリアン・ハスキーもいたとか。ハスキーはプリミティブタイプと呼ばれる、野生に近い犬種だからかもしれません。犬種や愛犬の性格によっても、食の好みが違うそうなので、それも見極めたいものです。
ドライフードをトッピングに使う
南村さんへの相談で多いのが、「ドライフードは完璧な栄養バランスの食事では?でも肉や野菜をトッピングしたり、完全手作り食にすると栄養バランスが崩れてしまいそう」というもの。
それに対して、「私たち人間も毎日の栄養バランスを毎食計算していませんし、完璧なバランスで摂取するのはむずかしいので、愛犬の場合も気にしないで。栄養バランスが心配ならば、手作りごはんにドライフードをトッピングとして使ってください」と答えているとのこと。
こうして南村さんにうかがえば、ハードルが高いと思っていた手作りごはんも、ドライフードも臨機応変に使いつつ気軽にチャレンジできそうです。
みなさんも、愛犬の笑顔を引き出す愛情ごはんを、この記事を参考にぜひ作ってみてください。