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花火や雷で犬猫がパニック!音・雷恐怖症の対策を行動学の専門獣医師が解説

棚の間で怯えるキジ白の子猫

夏といえば、花火や雷の季節。あの音を聞くと、脅えて逃げ回ったり、隠れて出て来なかったり、パニックを起こす愛犬・愛猫も多いのではないでしょうか。今回は音恐怖症・雷恐怖症の対策について。

そもそも音恐怖症とは

●自分で自分を管理できない状態に
音恐怖症は、犬だけでなく猫にもあります。猫は五感のうちで最も聴覚がすぐれているうえ、犬よりずっと臆病なので、猫のほうがむしろ多いかもしれませんね。ただ飼い主さんから「音恐怖症」の主訴でカウンセリングをしたことはなく、「攻撃性」の相談を受けて、調べてみると「音が怖かったから」という例が多いです。

怒る猫

犬も猫も、性格が大胆だったり、社会性がしっかりできているというバックグラウンドがあれば、未経験なことが起こっても対応できるメンタルを持っています。
ところが、臆病な性格だったり社会性が乏しいと、例えば大きな音や振動を感じたとき、それがトラウマになって、次に同じ音がしたときにパニックになってしまう。少し怖いぐらいではなく、ご飯が食べられない、パンティング(舌をハァハァさせるあえぎ呼吸)が激しい、よだれがダラダラ流れるなど、自分で自分がコントロールできないぐらいの状態になることを、音恐怖症といいます。

●音恐怖症と雷恐怖症
音恐怖症と雷恐怖症は分けて考えます。雷は自然が生み出す特殊な現象で、単に音だけでなく、気圧が変わる、空気のにおいが変わるなど、いろんな要素がからんでくる。ひと括りに雷恐怖症といっても、どのタイミングで怖いと感じるかは個体差があります。ゴロゴロと鳴って怖くなる子もいれば、雷が来る前兆を感じるだけでおかしくなる子もいる。強い雨と雷をセットで経験してトラウマができると、雷はなくても強い雨の日もだめになることがある。雷恐怖症の対処には、どのタイミングでその子がリアクションを始めるかをよく見極める必要があります。

●犬と猫では、リアクションが異なる
音恐怖症や雷恐怖症時の行動は、犬と猫で大きく括れます。
犬の場合は、逃げるか、固まるか、飼い主に依存してくるかの3パターン。逃げるの中には徘徊も含まれます。花火や雷は外から来る音なのに、なぜか多くの犬が家の外に逃げようとする。なかには扉をガリガリかいて破壊行動をする子も。そういう子は、落ち着かせようとクレートに入れると、余計にパニックになります。徘徊する子はずっとうろうろして気持ちを紛らわす。固まる子は、逃げ場を探して隠れる。バスタブに逃げ込む子が非常に多いです。あとは飼い主に抱っこをせがむ子がいる。

猫の場合は、だいたい逃げるか隠れる。あとは怖いという気持ちが飼い主や同居猫への攻撃に転嫁される、“やつあたり”。犬のように人間に依存して生きていないので、飼い主に助けを求める子は少ないです。

●とりあえず、できること
例えばミキサーの音が怖くてパニックになるなど、私たちが管理できる音なら、人間が使う場所を考えれば、その子を音から離すことができます。花火や運動会のピストルが怖いときは、花火大会や運動会の日程がわかれば、実家に預けるという方法もとれる。その点、予測がつかない雷が一番厄介といえます。

また、犬も猫も隠れるタイプの子は、室内に避難所を用意してあげるといいでしょう。隠れると危ない場所は全部ブロックしておき、隠れていいスペースを何カ所も作ってあげる。とくに猫は探すのが大変なので、逃げる場所がわかっていれば安心です。

 

時間をかけて克服を目指す!

音恐怖症や雷恐怖症の改善策は、犬や猫の感情的なパニックを抑えつつ、その音が怖くないように時間をかけて慣らしていくことです。

1)何が怖いのかを探す
まず恐怖の対象を正しく把握することから始めます。雷が怖い場合だと、どの時点で怖がるのか。雷がゴロゴロ鳴る前なのか、鳴ったあとなのか、何が怖いのかを探していきます。ひげの状態、耳の状態、体の硬直度合い等、必ずいつもと違う動きをするので注意深く観察します。

2)飼い主さんがどんな対応をしているかをチェック
それが探せたら、そのときの飼い主さんの対応をチェックします。多くの人がなだめるようですが、パニックになった犬・猫を見て、飼い主さん自身が狼狽しているのに、「大丈夫よ、大丈夫よ」と言ってもなだめにはなりません。

3)怖いという感情を一瞬でも忘れられるものを探す
それよりも、その子が怖いという感情を一瞬でも忘れて集中できるものを探しましょう。例えば「ちゅーる」好きの猫だったら、怖がっているときにちゅーるをあげて食べたら、「いい子」とほめて、雷や音のことを忘れさせてあげる。犬だったら、雷の音が聞こえたら、飼い主さんとの遊びの時間にしたり、ごはんがもらえる時間にしたり、犬にとって楽しいことへ切り替えていく。これはすごく時間がかかります。分離不安症の治療*と同じで、年単位。1〜2週間で治るものではありません。
犬の分離不安とは?3大サインと治療法|行動学の専門獣医師が解説

4)苦手な音のCDを使って慣らす
雷や花火の音に慣らすためのCDもあります。苦手な音のCDとクラシックなどのCDを一緒に聞かせます。苦手なCDは小さな音から始め、だんだん大きくして、最後はバックミュージックなしでも大丈夫に。この音が聞こえたら遊びの時間というように、楽しい経験へと置き換えていきます。ただし、このCDは雷の気圧変化が怖い子には効果はありません。

 

今、起きているパニックをなんとかしたい!

今、起きているパニックを抑えてあげることも大切。いろんな方法がありますが、一つ一つ試してみるのではなく、できることは一気に全部やってあげるのがポイントです。

●薬
頻繁でなければ、「トランキライザー」など不安を抑える薬を使うのも手。

●トレーニング用具
「マナーズマインダー」という、リモコンを操作するとピピッと音がしてフードが出てくるトレーニング用具があります。食いしん坊の子なら、雷が鳴ったときにマナーズマインダーの前に行くとフードが出てくるようにすれば、雷音を気にせずにいられるかもしれません。

●サプリメント・ハーブ等
「ジルケーン」などの抗不安サプリや「バッチフラワーレメディ」は犬・猫両方に使えます。また「トランキリティ」という脳神経系をサポートするハーブも不安やパニックに有効ですが、猫には使えません。

●フェロモン剤
フェロモン剤も心を落ち着かせる効果があり、犬なら「ドッグアピージングフェロモン」、猫なら「フェリウェイ」。

フェリウェイ スプレー 猫用 60mL

●サンダーシャツ
「サンダーシャツ」というピタッと体に密着するウェアは、適度な圧力をかけることで不安な症状が和らぐというもの。ただし服を着るのが苦手な子には向きません。


サンダーシャツ(ThunderShirt)

 

加齢とともに不安は強まる、早めの対策を

音恐怖症や雷恐怖症は、年齢とともに悪化する可能性が高く、また今まで平気だったのに、年をとったら、ある日突然始まったという例も多いです。加齢によって脳内の神経伝達物質が減少したり、体も思うように動かなくなり、心と体のバランスが悪くなる。いろんな意味で不安が強くなるんですね。メンタルのキャパシティがどんどん落ちて、新しいことに対応できなくなってくるので、ある程度の年齢になったら、メンタルキャパを増やす練習をしていくべきだと思います。

例えば犬だったら、「ノーズトレーニング」という鼻を使った脳トレや、小さい動きの中で体を使う「バランスボール」などを取り入れて、心と体の連結をよくしていく。人間も笑うとアンチエイジングになるといいますが、楽しいことをさせてあげるのも大事です。音恐怖症や雷恐怖症になる前に、こうした事前の積み重ねが予防につながります。

牧口香絵

獣医師、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表、AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員

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