分離不安は、犬が小さい頃からお留守番のトレーニングを積めば回避できますし、トレーニングは大きくなってからでも可能です。ただし、すでに分離不安になっている場合は、通常のトレーニングではだめで、分離不安を治すプログラムが必要になります。
留守中に起こす「三大サイン」
そもそも分離不安とは、どんな症状を引き起こすのでしょうか? 分離不安のコが留守中に起こす、「三大サイン」ともいえる典型的な症状があります。
(1)粗相
それも飼い主さんがいないときだけ。
(2)破壊行動
飼い主さんの物を壊したり、飼い主さんが出て行った入り口周辺で行う。
(3)悲しそうに遠吠えまじりに鳴く
「お宅のコ、長い間鳴いてたよ」などと、ご近所から言われて発覚するケースも。
これらの症状は一般の人が気づきやすいというだけで、もちろんこの3つに限るわけではありません。私は、飼い主さんに、留守中の犬の様子をビデオに撮ることをおすすめしています。すると、飼い主さんが気づいていなかっただけで、「徘徊」や「無意味な回転」、「大量のよだれ」、「飲水飲食を一切しない」など、様々な異常な症状を示していることがわかります。そのビデオを見てから治療に移ると、治療前と後の行動を比べることができ、改善されている様子を目で確認することができます。
分離不安の「治療プログラム」とは
それでは、分離不安の治療とは、どんなことをするのでしょうか? 次のようなプログラムを気長に実践していくことになります。
●薬の使用(不安を和らげる効果のあるもの)。
●「出かける」「帰宅する」をおおげさにしない。
●一緒にいるときもベタベタしすぎない。
●家から出るときに、おやつを中に入れられる知育玩具を与える。
●時間があるときは、家を出る前に運動をさせて過度に疲れさせておく。
●偽のお留守番をさせる。犬にとってのお留守番の合図は、カギを持つ、上着を羽織る、靴を履くなどだが、外出時以外にもそれをする(例えば、カギを持って上着を羽織り、キッチンで料理をするなど)。
分離不安になってすぐに治そうとする飼い主さんはあまりいません。「なんかおかしいけど、なんとかなるかな」とずるずる問題を先送りにしたり、おかしいとわかっていても、治す術を知らなかったり。でも、こうした不安から来る問題行動は、年齢を増すごとに不安が大きくなり症状がひどくなるので、早めに治すことが大切です。
治療は少しずつ、急げば必ず失敗する
分離不安は、飼い主さんがいなくなると不安で、自分が自分でいられなくなり、犬にとって気が紛れる行動(人にとっては問題行動)をとってしまうんです。治療は、犬に少しずつ「ひとりでお留守番ができる」という自信と安心をつけさせていきます。
分離不安の治療はとても時間がかかるものです。1年かかって、ようやく1時間のお留守番ができるようになるくらい。焦って急ぐと、必ず失敗して元に戻ってしまいます。また、叱ると余計に悪化します。分離不安による問題行動は、飼い主さんに対するいたずらや嫌がらせではなく、不安でしかたないという愛犬の悲痛な気持ちから来ていることを、理解してあげることが大切です。
分離不安の場合はハーブをミルサーにかけパウダー状にしてごはんの上にふりかけたり、またレメディはごはんや飲み水に滴下して与えます。ハーブは薬効成分があるため、必ず適量を守ること。5kgの小型犬だったら、ティースプーン1/3~1/4/1回を1日2回が目安です。使用するハーブは、ジャーマンカモミール(鎮静・リラクゼーション)、パッションフラワー(鎮静・不安緩和)、リンデンフラワー(緊張緩和)など。
その他、フェロモン合成物質「DAP(Dog Appeasing Pheromon)」も、犬のストレスを軽減し、落ち着かせる効果が期待できます。