犬バカの集い♪悦びと学びの多い「犬オフ会」に行こう!

「犬のオフ会」。行ったことはありますか?
愛犬家が集い、犬談義で盛り上がり、情報交換もできる、とても有意義な場です。暑くもなく寒くもない新緑の季節は、まさに犬オフ会のベスト・シーズン。ちょうど同じ日(2018年5月20日)に、2犬種のオフ会が開かれるというので、はしごして楽しい気分を味わってきました。
 

さまざまなジャンルの犬オフ会がある

私たち愛犬家が集うものは「犬オフ会」「犬オフ」などと言われます。でも、ひとくちに犬のオフ会(以下、オフ会)といっても、中味はいろいろ。同じドッグスポーツを楽しむ人たちの会だったり、犬用車椅子を利用している犬たちの会だったり、サイト・ハウンド(1犬種ではなく、同じグループの犬種)の集まりだったり、超大型犬種限定の会だったり、自分の飼っている犬と同じ犬種ばかりが集まる単犬種オフ会だったり、多岐に渡ります。

最もポピュラーであろう単犬種オフ会のいいところは、同じ犬種を愛する飼い主同士、心が打ち解けやすいことでしょう。たとえばコーギー好きならば、自分のうちの犬も最高に可愛いけれど、よそのうちのコーギーだってやっぱり可愛くてメロメロになってしまう。それでこそ本物のコーギー・ファンシャー(愛好家)!同じ犬種を好きな者ならではのシンパシー(共感)を感じやすいのです。

テラスでおやつをもらうビーグル犬たち
よそのうちのビーグルだって、みな可愛い!それでこそビーグル・ファンシャー

また同犬種であれば、基本的な気質、行動パターンなどが似ているので、よその犬でも行動を予測しやすいということもあります。また参加者がたいていその犬種の扱いに慣れているから、接触事故やトラブルを未然に防ぎやすいメリットもあります。

くわえて単犬種オフ会の素晴らしい点は、貴重な情報交換の場となること。犬種特有に多い病気、共通した問題行動の悩み、日々の毛の手入れ方法、体型・被毛・体質・気質などに合うグッズ、いつか来る老犬介護の話……そうした情報を、飼養経験が豊かな先輩諸氏から直接聞けるまたとないチャンスなのです。
 

笑顔のビーグルたちがワラワラと!

では、実際のオフ会はどんな感じなのでしょう。そこでお邪魔したのが、ワンとヒトの充電施設『りとんち』(山梨県北杜市)で開かれた「関東ワラワラBeagle’s」(神奈川県相模原市)のオフ会です。このグループでは3か月に1回、オフ会を開いているそうです。メンバーは24家族。「うちの会は、会えない人の入会はお断りなんです。顔の見えるお付き合いを大切にしています」とのこと。今回は大人5人、ビーグル7頭が参加しました。

従来は貸切ドッグランで集まることが多かったそうです。「だいたい2〜3時間貸し切るのですが、でも交通事情などで遅刻したりするとすぐに時間がなくなってしまう。ここの施設は1日貸切制なので、時間を気にしなくて遊べるのがいいです。バーベキューもできますしね」。ビーグル談義をしながら、よそのビーグルを愛でつつ、みんなで食べるバーベキューは格別でしょう。

ドッグランで群がるビーグル犬
食いしん坊なのはビーグルのチャームポイント。即席「ビーグル使い」になれます

気をつけているのは会場選び。「初めての場所だと、到着したあと興奮して吠えちゃうビーグルも多いんです。それもビーグルらしさのひとつなのですが、近隣には気を遣います。ここなら空間も広いし、おとなりさんも犬が好きなので助かっています」。オフ会を開く場所は、よそ様に迷惑をかけないためにも、犬種特性に合わせて熟考することが大切です。

かたやビーグルは、もともとパック(群れ)で働く獣猟犬なので集団行動が得意。元来、協調性があり、友好的で、大らかな性格の犬なので、オフ会で初めて会う犬同士が多数が集まっても、もめ事が起きにくい犬種です。ワラワラといるビーグルたちが、あっちこっちクンクンしている光景は、ビーグル・ファンシャーでなくても、見ていて幸せな気持ちになります。
 

木漏れ日の中をトレッキングするスプリンガーたち

次に、急いで富士見パノラマリゾート(長野県諏訪郡富士見町)へ移動。こちらでは、ESSCJ(イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル・クラブ・オブ・ジャパン)のオフ会がありました。欧米に比べて日本ではマイナー犬種のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(以下、スプリンガー)ですが、犬質を国際レベルに高め、健康なパートナードッグとして日本に広めたいという高い志から始まったクラブです。会員は、北は新潟県〜南は大分県まで約40人。今回は、11人(犬同伴なしの人を含む)と8頭が参加しました。

2頭のスプリンガースパニエル-犬
遺伝性疾患を淘汰する努力を欠かさず、アメリカのショーでもチャンピオンを輩出し、健全なイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルを日本に広めたいという熱い想いを抱くESSCJのメンバーの犬(写真提供:ESSCJ)

ESSCJのオフ会は、遺伝性疾患などの勉強会のときもあれば、今回のようにアウトドアで遊ぶときもあるそうです。スプリンガーは鳥猟犬だから、森や湿原をトレッキングするのは大好き。ただし豊かな被毛ゆえ暑さが苦手な子が多いので、時期や場所選びには配慮が必要です。その点、富士見パノラマリゾートは、犬も乗車OKのゴンドラで一気に標高1780mに連れて行ってくれるので、下界と違って涼しく過ごしやすい!犬のオフ会には好立地といえます。

ゴンドラに乗るスプリンガースパニエル-犬
富士見パノラマリゾートは、犬もゴンドラに乗れます(写真提供:ESSCJ)

みんなでトレッキングしたあとも、ランチをしながらお喋り。”スプリンガーあるある”をみんなで言い合い、盛り上がったそうです。

晴天の中トレッキングするスプリンガースパニエル-犬
ゴンドラを降りるとスーッと涼しい爽やかな高原の風が吹く。澄み切った青い空、新緑も美しい

ESSCJでは8年間こうしたオフ会を続けています。「最初はガウガウしちゃう子もいたんですが、犬も経験を積んでよくなってきました。オフ会がよい社会化トレーニングになっています」。スプリンガーの飼い主同士だから、ちょっとガウガウしたり、されたとしても、冷たい視線を浴びせられることもなく、先輩飼い主が適切なアドバイスをくれたり、犬たちの距離を上手にコントロールしてくれたりするから、社会化の練習ができるわけです。犬も飼い主もともに勉強ができます。

入笠湿原をトレッキングするスプリンガースパニエル-犬
生後11か月の若犬から10歳を超えたシニアまで、みんなで揃って入笠湿原をトレッキング(写真提供:ESSCJ)

 

犬オフ会に参加する際の注意点

犬が好きな仲間と集い、おしゃべりし、情報交換を行い……などと実のある機会ですが、ただし注意したいこともあります。

最も配慮したいのは、愛犬の気持ちです。人間にとっては楽しく有益なオフ会ですが、愛犬にしてみれば「ありがた迷惑」のことも。知らない環境に連れて行かれ、初めて会う大勢の犬たちに囲まれることは、大きなストレスになる可能性大。「みんなと仲良く遊ばせ、お友達を作りたい」と思う飼い主さんの親心もわかりますが、犬は別段そう望んでいないことも多いのです。一緒に遊べなくても、その場で平常心が保てれば十分。社会化トレーニングとしては上出来です。

それなのに無理に急接近させると、防衛本能で吠えたり、噛んだりしてしまうかもしれません。そういうトラブルが起きると、楽しいはずの会が後味の悪いものになってしまいます。愛犬の社会化レベルなどを考慮し、同伴するべきなのか考えてみましょう。ただ前述したように、オフ会に参加することが社会化の練習になる側面もあります。事前に主催者に相談し、参加頭数や場所の広さ、犬同士の距離がどれくらいとれるのかなどを確認しておくと安心です。

同伴した際も、現場では愛犬の様子をつねに観察し、ストレスサインが強いようなら途中退席してもよいと思います。愛犬に負担がないようにしましょう。

スプリンガースパニエルと飼い主たち-犬
まだまだ尽きぬ犬談義。この夏は水遊びオフ会、冬には雪遊びオフ会を企画中とのこと。ファンシャー同士の交流はとにかく楽しいし、とても勉強になる!

そのほか欠かせないのは、日頃からのマナーやしつけ。おしゃべりが盛り上がっても、自分の犬からは目を離さないで、何かあったら瞬時に対応できるようにします。もちろん健康管理も重要です。不特定多数の犬が集まる場ですから、病気や寄生虫などをうつさないように(うつされないように)、ワクチン接種後に元気なきれいな体で臨みましょう。当然ですがヒート(発情)中のメスの参加はできません。自分の犬を守るとともに、ほかの犬の行動に影響を与えないように配慮することも大事なことです。

ほかにも注意すべきことは、各オフ会によって違います。詳細は事前に主催者に尋ねてみましょう。とにかく、愛犬への愛はもちろん、参加しているすべての犬に愛を持って接する、それこそが犬バカの極み。準備を万端にして、オフ会を楽しんでください!今まで自分の知らなかった、新しい犬の世界の広がるはずです。

 
【取材協力】
●関東ワラワラBeagle’s(入会希望はメンバーからの紹介のみ)
ESSCJ(イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル・クラブ・オブ・ジャパン)
ワンとヒトの充電施設『りとんち』

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白石かえ

犬学研究家、雑文家 東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。 その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピ…

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