犬連れ旅をもっと快適に。旅先で犬を預けるセカンドハウスを活用しよう!

犬も一緒に家族旅行へ!でも観光地では、犬とは入れない場所もあります。そんなとき、旅先に馴染みの犬を預ける施設があったなら。熱中症の心配もなくなるし、旅の楽しみ方の幅が広がります。

犬連れ旅行はもはや当たり前

そろそろ夏休みの計画を立てる時期ではないでしょうか。健康状態に問題がないなら、ぜひ家族旅行に一緒に連れて行って。さらに自然豊かな山や湖などに行くならなおのこと。道中を一緒に過ごし、旅先でも自然を満喫させてあげてください。

諏訪湖畔に立つ2頭の犬と飼い主
諏訪湖畔は、犬の散歩道に最適。ただし日中暑くなる日もあるので気をつけて。

新しい場所のニオイを嗅ぎ、新しいことを体験する家族旅行は、愛犬にとってよい社会化トレーニングにもなります(でも急にハードルの高いことはさせないで、じょじょに慣らしてあげてくださいね。また持病があったり、シニアの場合、無理は禁物。また1歳以下の子犬も、まだ免疫力が低かったり、体力がなかったりして熱中症や低血糖などになることもあります。まずは近場から練習しましょう)。

近年では、犬と一緒に泊まれる宿も増えてきたので、犬連れ旅行に行きやすくなりました。日本でも、犬の市民権が向上してきたのは嬉しいことです。

でも犬NGの場所はある

しかし、そうはいっても犬が入れないところもあります。飲食店、美術館、博物館、食品メーカーの工場見学、寺社の境内(寺社により、犬が入れるところもありますが、禁止されているところも多いです)などです。

境内の動物禁止の立て札
有名な諏訪大社は、境内に犬は入れません。しかも境内の中が広いのでお参りするのに時間がかかります。

またフルーツ狩りやゴルフ、乗馬などの体験型レジャーは、アウトドアであってもNGなことが多いでしょう。お花畑の公園は、犬が入れるところとそうでないところに分かれるので注意が必要。そして温泉。こればかりは犬を入れるわけにはいきません。

私有地だけでなく、国有林や国有地でも自然環境保全などの観点から、犬連れの自粛を促しているところもあります。自然公園法では、リードをつけていれば、ペットの持ち込み(犬連れ登山など)は罰則対象ではないのですが、環境省のQ&Aを見ると「地域のマナーは尊重してください」と書いてあります。

たとえば「乗鞍山頂マイカー規制」のHPでは「乗鞍岳・畳平へのペットの持ち込みは禁止されております」と明記されています。富士山の場合は「山小屋内にペットを入れることやペット連れの登山は、原則としてご遠慮ください。富士山の登山道は火山砂利のため、ペットとともに登山するとペットの足にダメージを与える可能性があります」とも。法令違反ではなくても、愛犬家全体の評判を下げないためローカル・ルールを尊重することは大切です。

銀河鉄道展望公園の看板
銀河鉄道展望公園(韮崎市穂坂町)は、富士山、南アルプス、八ヶ岳が一望できる、眺めのいい小さな公園ですが、なぜか「ペットの散歩禁止」の大きな看板が(涙)。自治体によって犬への理解度はまちまちです。

さらに、愛犬の身の安全のために、たとえその場所が犬連れを禁止にしていなくても、飼い主自ら同行をやめる判断をした方がよい場所もあります。たとえば鎖場やはしごがある登山道や、木陰のない焼けた砂のビーチ(しかも水道もない)などです。

南アルプスの滝を見にトレッキング。ところが犬には難所多し!はしごに近い急階段やグレーチング(金属製の組み込み型蓋)製の橋を歩くのを嫌がる犬もいるはず。気にしない犬ならよいけれど、怖がる犬の場合は無理して同行させず、人間だけで楽しむ方が安心・安全。

旅先で預かってもらうという新しい作戦

「だったら、やっぱり今回の旅行に犬を連れていくのはやめておこう」と諦めるのは、ちょっと待ってください。旅行先で、その時間だけ預かってもらうという作戦があります。

実体験をお話ししましょう。日本百名山の甲斐駒ヶ岳を見上げる、甲州街道・台ケ原宿に、明治35年創業の「金精軒」本店(山梨県北杜市白州町)という老舗和菓子屋があります。数年前、白州に別荘を持つ犬友達から、6〜9月の土日限定で「水信玄餅」という和菓子があると教えてもらいました。「買ってきてー」と頼んだら、特別な製法の保存料なしの和菓子なので、テイクアウトはできず、この場でしか食べられないものとのこと。

老舗菓子屋金精軒の外観

これはぜひ食べてみたい!と、昨夏、白州の本店にまで行きました。……でも、駐車場は木陰なしの炎天下。そのうえ地元だけでなく、関東、東海、東北ナンバープレートのクルマも集まる大盛況ぶりゆえ、どれくらい待つかわからない。犬をクルマに残していくなんて絶対無理です。それで昨年は、泣く泣く断念しました。

しかし、よけいにも水信玄餅のことが気になって仕方がありません。今年こそリベンジしたい! そこへナイスな出会いがありました。

昨秋知り合ったトレーナーが、今年4月、犬の時間預かりのデイケア&ペットホテル「くうねるハウス」(北杜市明野)をオープン。しかも白州の金精軒本店だけでなく、もっと近所の「韮崎店」でも昨年から水信玄餅を販売していると判明。「くうねるハウス」から5分ちょっとで行ける距離です。これなら混んでいても、長時間犬を預けなくてすみます。結局、2時間デイケアで預かってもらいました。おかげで念願の水信玄餅を食べることができました。しかもゆっくり堪能〜♪

犬のデイケア&ペットホテル「くうねるハウス」
こんもりとした森の中にある、北杜市明野の「くうねるハウス」。お泊まりの犬は、富士山、南アルプス、八ヶ岳に囲まれた、広々とした田んぼ道を散歩してくれるそうです。
水信玄餅
念願の金精軒の水信玄餅! 今まで食べたものの中でいちばん柔らかい食感。豆腐よりぷるんぷるん、つるんつるん♡

また、犬も問題なくドッグランでその間楽しく過ごしていたそうなので、これをきっかけに、今まで我慢していた美術館や気になるレストランにも行ってみたい♪と思いました。八ヶ岳山麓や白州、小淵沢周辺は、毎年遊びに行くお気に入りのエリアなのですが、今まで犬がいるために旅のコースがマンネリ化していました。でも、ほんの少しの時間、犬を預かってもらうことにより、旅の楽しみ方の幅が広がるし、何よりも熱中症の心配を回避できる、というのが嬉しいです。

森のドッグランで遊ぶ犬2頭
私が水信玄餅をいただいている間、うちの犬たちは「くうねるハウス」の、森のドッグランを満喫。ここでは犬の様子に応じて飼い主と相談の上ドッグランで遊ばせたまま時間預かりもしてくれます。その間、ずっとスタッフが一緒にドッグランに入り、見守ってくれるから安心!

自宅近くで預けるよりメリットがあるかも

もうひとつの例として、ゴルフを楽しむ愛犬家を中心に口コミでどんどん広がっている、日中お預かり&ペットホテル「DOG PIT」(山梨県南都留郡富士河口湖町)があります。オーナー自身が以前からゴルフやテニスでよく河口湖に来ており、そのとき、美術館や温泉施設の駐車場のクルマの中に放置されている犬をよく見かけたそうです。それで心が痛み、ついに自分が河口湖に移住して、こうした犬用の施設を作ったといいます。

犬の預かり&ペットホテル「DOG PIT」
ゴルフ客や富士登山客もやってくる河口湖の「DOG PIT」。リピーターか口コミ客ばかり。

富士山のお膝元ということで、遠方から富士登山客の人も来ます。飼い主さんが山小屋で泊まり、富士山アタックしている日は、犬は「DOG PIT」でお泊まり。下山したらすぐ飼い主さんが迎えに来てくれるので、犬を預けている時間は最短ですみます。

富士山の見えるゴルフ場

また都内から泊まりがけでゴルフを楽しむとき、自宅そばで犬を預けると(移動時間などを含め)3〜4泊させることになるところ、河口湖で預ければ1〜2泊ですむからいい、と好評。飼い主と離れている時間が短い方が、犬の心の負担が少ないし、お財布の負担も少なくなるから一石二鳥です。

リピートしたくなる犬のセカンドハウスを見つけよう

八ヶ岳や富士山界隈に限らず、自分がよく行く、お気に入りの観光エリアに、信頼のおける「お世話係付き犬のセカンドハウス」があれば、安心してレジャーや趣味を楽しめると思います。クルマに犬を残すことを思えばよほど安全です(とくにこれからの暑い季節は本当に気をつけて!)。

そして、犬も顔見知りの施設になってくると「また遊びに来たよー!」という感じになり、飼い主不在中の不安なぞ微塵も感じさせない子が多いそう。まるで田舎の親戚のおうちに遊びにきた小学生のようで、微笑ましく思えてきます。社会化の勉強にもなります。

ドッグランでくつろぐゴールデンレトリーバー

でも「初めての場所に行って置いていくのは、なんとなく犬に悪いような気もする……」という気持ちがよぎることもあるでしょう。また預け先も信頼できる施設なのか、心配にもなります。なので、事前に電話してオーナーのお人柄を確認したり、あるいはドッグランを併設しているところであれば、初回は預けることはせず、自分も一緒にそこに滞在し、世話をしてくれる人の犬の扱い方や、施設の安全性などを確認するとよいでしょう。

それで問題がなく、保護者(飼い主)としても愛犬もその場所が気に入ったら、今後愛犬がのびのびとできるセカンドハウスになる期待大。リピートしたくなる施設を見つけることができたら、犬も飼い主も、犬連れ旅行の達人になれそうです。

【参考サイト】
乗鞍山頂マイカー規制
環境省:国立・国定公園特別保護地区における動植物の放出等の規制の実施について
●富士登山オフシャルサイト:富士登山のルールとマナー
銀河鉄道展望公園
金精軒
くうねるハウス
DOG PIT

白石かえ

犬学研究家、雑文家 東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。 その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピ…

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