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補助犬環境の改善を。2020年東京オリンピック・パラリンピックを目指して

【補助犬と暮らすということ。「犬を働かせているのではなく、互いに支え合う家族」】の記事でも述べたように、国内における補助犬環境はまだ十分とは言えません。そんな状況のままに次期オリパラを迎えることには不安な部分もあります。なぜなら、海外から日本を訪れる多くの人たちの中には、補助犬ユーザーもいるだろうことは予想されるからです。そのための取組みがすでに始まっているのをご存知でしょうか?

《お話をお聞きした方》

安杖直人さん
(公益財団法人日本補助犬協会 広報担当、社会福祉士)

元陸上自衛官。2001年、交通事故のため車椅子が必要となって以後、1代目の介助犬フレザー(ラブラドール・レトリーバー、オス)を経て、現在は2代目介助犬のダンテ(ラブラドール・レトリーバー、オス、6歳)と生活を共にする。実体験から得た想いを胸に、補助犬認知のため、同協会スタッフとして、日々精力的にPR活動を行っている。
 
 
 

小原日登美さん
(2012年ロンドンオリンピック女子レスリング48kg級金メダリスト、自衛隊体育学校レスリング班女子コーチ、一等陸尉)
小学3年生でレスリングを初めて以来、めきめきと実力をつけ、世界選手権では8回優勝。一方、女子レスリングがオリンピックの正式競技と決定した折には(2001年)、競技枠から48級は外されるという不運に見舞われ、苦節10年以上を経て、見事に金メダルを獲得。女子レスリング界では苦労人として知られる。(公財)日本補助犬協会の補助犬大使、そして青森県八戸市スポーツ大使、埼玉県富士見市PR大使としても活躍しており、大の犬好きでもある。

 

要所要所で補助犬受け入れ体制をチェック

どんな取組みが進められているのか安杖さんにお聞きしてみたところ、「海外からやって来る多くの補助犬ユーザーさんたちを快くおもてなしできるよう、補助犬の受け入れ体制をしっかり確立する必要がありますが、そのための取組みの一つとして、オリパラ競技大会の組織委員会で設立されたアクセシビリティ協議会によって、主要な場所のチェックを一ヶ所ずつ進めていますとのこと。

「空港の場合は補助犬用トイレを設置してあるところも見られますが、主要な駅には、せめて植え込みの一角であっても専用の場所が欲しいと思います」(安杖さん)

たとえば、駅から競技場までのアクセスや、障害者にとってのバリアフリーはどうか、補助犬同伴の場合の対応(補助犬用のトイレを含む)はどうかなどをチェックし、その結果を協議会で検討した後、必要と思われるものについては新たに設置、または改善されることになるだろうということです。

その他、各競技場に補助犬ステッカーが貼られるのはもちろん、障害者用トイレおよび補助犬用トイレ、補助犬同伴者専用席など共通の設備が用意されることになるだろうとも。また、次期オリパラは夏季大会になることから、補助犬のための暑さ対策も必須となります。
 

子どもたちへの補助犬教育

ハード面での改善の他、ソフト面での改善も必要になりますが、実は、東京都教育委員会では、『ボランティアマインド・障害者理解・スポーツ志向・日本人としての自覚と誇り・豊かな国際感覚』の5つのテーマを設け、子どもたちの心身の成長を目的とする『オリンピック・パラリンピック教育』を2016年から開始しています*。

「そのプログラムの一環として、当協会では主に都内の小学校において補助犬セミナーを開いています。これがたいへん人気で、多いと週に2~3回くらいになりますが、本物の補助犬を間近で見ることによって、子どもたちはいい反応を見せてくれます。こうした体験が補助犬や福祉への興味や理解を少しでも深めてくれることに期待したいです」(安杖さん)

*参考資料:オリンピック・パラリンピック教育 実践事例集/東京都教育委員会 平成29年9月

介助犬の仕事例:1.ドアの開閉、2.スリッパを脱がせる、3.冷蔵庫から飲み物を持ってくる。こうした補助犬の働きは、子どもたちにとって新鮮な驚きとして映ることだろう。その純粋な気持ちが、将来の社会をよりよいものに変えていくと信じたい。
 

年1回のシンポジウム開催、関連企業団体への啓発

ホテルや旅館など関連団体の関係者を招いてのシンポジウムでは、現状の問題点や改善策について話し合われます。

近年では、多数派である健常者中心のモノづくになっている社会は、少数派である障害者が入れる余地がないに等しく、それは障害をもつ人の不利や困難を生むことにつながり、そうした社会構造こそが問題であるという考え方に変わってきている背景があります。

メールの着信を知らせる聴導犬。一般的に目にする機会が少ないとしても、補助犬と共に生活をしている人たちはどこかに必ずいるということを忘れたくない。

「そうした中で、以前より補助犬をしっかり受け入れてくれる企業や団体など増えてはきましたが、一時的で、なかなか継続しない場合もあるというのは大きな課題です」(安杖さん)

一つには、折角補助犬受け入れ体制を整えても、実際に補助犬と接する機会がないと、持続性にブレーキをかけてしまうようです。しかし、それはとても残念ことと言わざるをえないでしょう。
 

キャンペーンやPR活動の実施

当然、補助犬をもっと知ってもらうためのキャンペーンやPR活動も行っているわけですが、その中にはオープンデーと称した同協会施設の一般開放や、交通機関との共催イベント、セミナーなどが含まれます(例:航空会社の協力による飛行機搭乗訓練)。

「補助犬は賢い上に純粋な瞳をしていて、言葉がなくともこちらの気持ちを感じ取ってくれているようであり、また、ユーザーさんとの強い信頼関係が結ばれているように感じます」(小原さん)

PR活動に貢献している同協会の補助犬大使である小原日登美さんは、こうおっしゃいます。

「私にとってのオリンピックは私だけではなく、家族や周囲の人たち、みんなの夢の舞台であり、そういう人たちに支えられながら苦難を乗り越えてたどり着けた最高の場所です。そして、パラリンピックは逆境をプラスに変えて、世界を目指せる場所だと思っています。
選手だけではなく、いろいろな人たちの想いが集まる場所、それがオリパラです。
だからこそ、多くの人にそれを楽しみ、体感していただければと思いますし、そのためにも補助犬環境が少しでも整うことを願うと共に、補助犬についてもっと知っていただきたいと思います」

「人も犬も、共に暮らしやすい社会になるといいなぁと思います」と小原さん。そのために私たちができることには何があるのだろう?
 

私たち一人一人の意識

さらにもう一つ付け加えるとするなら、補助犬環境改善には、私たち一人一人の意識が大きな力となるのではないでしょうか。2016年に盲導犬ユーザーが駅のホームから転落して亡くなるという事故がありましたが、「補助犬を連れていれば100%安全というわけではない」と安杖さんはおっしゃいます。一般の人は補助犬ユーザーに対して声がけを躊躇してしまいがち。しかし、それが事故につながる場合もあるといいます。

「少しでも危険であったり、困っていたりする様子が見られた時には、ユーザーさんに声がけをお願いします」(安杖さん)

その際、自分に話しかけられているとはわからないこともあるので、聴覚障害者であるならば筆談や手話、口ははっきり開けて話す(口話がわかる場合)、視覚障害者であるなら「盲導犬を連れている方」と呼びかけるなど、少しばかり配慮も必要でしょう。

仕事中の補助犬に対して、「勝手に触る」「じっと見つめる」「話しかける」「勝手に食べ物や水を与える」などの行為はNG。温かく見守って欲しいとのこと。

もうおわかりのように、これらの取組みはオリパラ開催時のためだけというわけではありません。よりよく補助犬環境が改善できたとして、その後も持続できてこそ意味があります。それができるかどうかは、私たち一人一人の意識にかかっているのかもしれません。

写真提供:公益財団法人 日本補助犬協会、小原日登美
関連サイト:公益財団法人 日本補助犬協会

大塚良重

犬もの書き、愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー

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