犬と本気で遊ぶ! 愛犬と楽しむアウトドア入門編

犬と一緒に遊んでいますか?アウトドアで、たっぷりお日様を浴び、森のにおいを嗅ぎ、草や土や砂を踏みしめ、川で泳ぎ、海風を感じ、雪の中を駆け回り、星空のもとでたき火を囲んでウトウトする…犬とともに楽しむアウトドア・アクティビティーは最高です。

でも、挑戦してみたいけれど、最初のとっかかりがわからない、万が一の事故も心配…などと踏み出せない人も多いのでは?そんな飼い主さんに向けて、アウトドアで犬と遊ぶためのハウツーや醍醐味をお伝えしていきます。
 

犬とアウトドア・アクティビティーをenjoyしよう

C_572-429__カヌー_写真提供:加藤智様
カヌーに一緒に乗せて、スイスイと冒険

アウトドア・アクティビティー(outdoor activity)とは、屋外で行う活動の総称で、野外活動、アウトドア活動のこと。日本ではactivityの部分を略して、outdoorだけでその意味となっていることが多いです。

屋外での活動とはいえ、一般のスポーツとは分けて、自然を満喫するものをイメージするかと思います。たとえば以下のようなアクティビティーです。

 ハイキング、トレッキング、登山、トレイルラン(舗装路以外の山野を走る陸上競技の中長距離走の一種。山岳レースとも呼ばれる)
 水遊び、川遊び、カヌー、海水浴
 雪遊び、スキー、スノーシュー(西洋版かんじきのような雪上歩行具をつけてトレッキング)
 森林浴、自然の中での散歩
遠足
(近所の河川敷や神社までお弁当を持っていくなど)
キャンプ、グランピング
お花見、天体観測
バーベキュー

自然の中で、犬が五感を使って外界にあるものを感じたり、走ったり、泳いだりするもの。まず飼い主は、運動靴や登山靴、長靴に履き替えてください。アウトドアのスタートはそこからです!
 

「動」と「静」のアクティビティーをうまく組み合わせる

さて、上記の例で、「●」 マークと「◎」 マークが付いていることにお気づきでしょうか?では、白石流に新しい定義を提案させていただきます!

「●」は、犬と飼い主が一緒に歩き、動き、活動するもので、ここでは「動」のアクティビティーと名付けることにします。
「◎」は、食べたり、眺めたり、ステイしたりする活動、つまり「静」のアクティビティーです。

C_ 572-429_カヌー__2_写真提供:舟木姿子様
小型犬だって「犬は犬」。大型犬顔負けの運動能力を持っているからたっぷり遊ばせて!果敢に泳ぐミニチュア・ダックスフントたち

「◎」の活動も自然のにおいを嗅いだりできるので、どんどん連れ出してほしいと思います。ですが、若くて健康な犬だと、こちらだけだと欲求不満になる可能性があります。キャンプ場やバーベキュー広場で、つながれている犬がワンワン吠え続けたり、盗み食いしたり、イタズラしたりするのはストレスのせいもあるでしょう。せっかく自然の中に来ているのに、遊んでもらえず、運動させてもらえず、お預け状態なのは、犬からしてみれば鬱憤が溜まっても仕方ありません。

なので、健康で元気な犬は、まずはガンガン歩かせたり、雪の中をラッセル(深い雪をかき分け、道を開きつつ進むこと)させたり、泳がせたりする「動」のアクティビティーで、しっかり運動、たっぷり自然を満喫させてあげましょう。そのあとに「静」のアクティビティーの時間に入れば犬は心身ともに満足しているので、おとなしく、飼い主のとなりで過ごすことができるはずです。優雅なグランピングも夢ではありません。

572-429_BBQ
冬のバーベキューは寒いし、日が落ちるのも早いけど、やっぱり外で食べるのは美味しい♪

かたや、老犬や心臓、骨や関節などに持病がある犬にとっては、「静」のアクティビティーでちょうどよいかもしれません。家族と一緒にいて、外の空気を吸い、日向ぼっこして、ほかの人にも撫でられたり、みんなの笑い声を聞くことは、とてもよい刺激であり、社会化にもなります。無理して「動」のアクティビティーをすることは、ケガや持病の悪化を引き起こす心配がありますが、「静」のアクティビティーであれば、認知症予防も期待できるし、健康維持のためによいと思います。

ただし、じっとしていると寒いですし、犬は飼い主のようにバーベキューやグランピングでお酒を飲まないので、冷え対策を忘れずに。また老犬や循環器に問題がある犬は、体温調節が上手くいかないこともあるので、熱中症にも気をつけます。

とにかく愛犬の年齢や体調、活動量に応じて、「動」と「静」のアクティビティーをうまく組み合わせるとよいでしょう。自分の犬のことをよく理解し、犬の好みに合わせてあげて、苦手なことは無理強いせずに、楽しく、嬉しく、リラックスできる時間を積み重ねていく。同時に、楽しそうにしていても疲れすぎていないか、ちゃんと愛犬を観察して、無理をさせないようにしてください。
 

自然は楽しくもあり、危険なアドベンチャーでもある

さらに、事前の計画・準備と事故防止も非常に重要です。さしずめビギナーは、地元小学生が行くような場所へお弁当持って遠足、デイキャンプ、低山ハイキングから挑戦してみるとよいでしょう。万が一、犬が具合が悪くなったり、何かトラブルが起きたとしても、すぐに撤収でき、動物病院に駆け込めるエリアを選ぶとよいです。

C_572-429__トレイル_写真提供:加藤智様
飼い主と森のトレイルを歩くことは、犬にとって最高の悦び!

なにしろ、アウトドア遊びはワクワクする反面、危険と隣り合わせでもあります。危ない側面があるから、犬も人も、感情が昂揚し、刺激的で、危機管理能力も養われ、経験値が豊かになるのです。ではどんな事態が想定されるでしょうか。

<飼い主の過信、管理不足、トレーニング不足から起きるもの>
迷子、失踪(ノーリード。呼び戻しトレーニングをしていない。鑑札や迷子札をつけていない)
バーベキューのときに火に近寄りすぎて火傷
無謀な計画による遭難、ケガ、体調不良
判断力のなさによる事故(川の増水、海の波の高さなど)
犬グッズの備品忘れ(ウンチ袋、犬用の水、水飲みボウルなど)  …など

<自然発生的な事故>
急な天候悪化による遭難、ケガ、体調不良(大雨、大雪、雷など)
・  ケガ(爪を折って出血など)、捻挫、骨折  …など

<野生生物との接触>
ダニ、ヒルなどの吸血生物との接触
マムシ、ムカデなど毒のある生物との接触
クマ、イノシシ、シカ、サルなど中型・大型動物との遭遇  …など

C_572-429__雪遊び_写真提供:舟木姿子様
雪の中をラッセルしてズボズボ埋まりながらも張り切って進む。しっぽがピーンと上がっているのは、雪遊びがとっても楽しくワクワクしている証拠

そこで、事故を起こさないように事前準備で回避できることについては、備えることが大事です。呼び戻しのトレーニングも完璧は無理でもそれを目指して頑張りましょう。一方、マムシに噛まれるなどの突発的な事件もまれに起きますが、被害を最小限にするように、長袖、長ズボン、長靴、ハイカットの登山靴などを着用、犬も人もクマ鈴をつける、犬用救急セット(消毒薬、粘着包帯など)を用意、犬にはダニ忌避剤をしておく、などの予防の策を講じておきます。

遊びに行くエリアのローカル情報(天候、クマやマムシ情報、近くの動物病院など)を事前にネットなどで調べておくのも必要かもしれません。ちなみに山中では、電波の入らない場所もあり、携帯電話が使い物にならないこともあるので要注意です。大切な家族を守れるのは飼い主だけ。安全に楽しい時間を過ごすことをいちばん優先させましょう。
 

マナーを守って、キラキラした瞳の犬と遊ぼう!

危機管理に加えて忘れてはいけないのは、マナーを守ること。私有地以外でノーリードにしたり、立て看版の注意事項を守らなかったりしたために、今までは犬連れOKだった湖畔やキャンプ場などが、ここ数年で犬立入禁止がなってしまったところもあります。

犬連れに限ったことではないですが、まずはルールを守って周りに迷惑をかけないことがアウトドアの大前提。自分にとっては可愛い家族でも、周囲の人から見れば「動物」です。裏を返せば「犬を連れていてもマナーのいい家族だな。いい子にしてて賢い犬だね」と思ってもらえれば、今後、犬連れで行ける場所が増えていくかもしれません。

次に来る愛犬家にいい意味でバトンをつなげるように心がけましょう。さらに、自然環境、野生動物に迷惑をかけないように配慮することも忘れずに。

C_572-429__雪_写真提供:加藤智様
トレーニングと信頼関係ができていれば、飼い主さんと一緒にスキーの併走もできる

犬とアウトドアで遊ぶことは、本当に楽しいです。犬は目を輝かせて、嬉しそうに、好奇心溢れる笑顔で駆け回ります。その顔を見られることが飼い主にとって最高の幸せ。そして、ともに行動することにより、たしかな信頼関係、絆のようなものが生まれてくるのを感じます。やはり犬は群れの動物。一緒に歩き続けることが大好きだし、自然の中で飼い主と一緒に何かをすることに悦びを感じ、相棒としての自信、満足感が溢れてくるように思えます。そのためおうちに帰ってからも、毎日の生活の問題行動が減ることもあります。

今年は、愛犬とアウトドアに出かけてみませんか!次回は、犬とアウトドアで遊ぶ先進国アメリカのドッグ・ラバーから日本の愛犬家たちへ、アウトドアで過ごす悦びを教えていただきます。乞うご期待!

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白石かえ

犬学研究家、雑文家 東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。 その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピ…

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