犬と本気で遊ぶ!「すべての犬は冒険家であり探検家」


犬と自然とアウトドアをこよなく愛する創業者が生んだ「アウトドア・ドッグギア」の草分けブランド、アメリカのRUFFWEAR(ラフウェア)。今回は、来日された同社のインターナショナル・ビジネス・マネージャー、Tripp Sickler氏にお話をお聞きしました。自然豊かなオレゴン州に本社を置くラフウェアのトリップさんが語る、犬と過ごすアウトドアの悦びとは。

ラフウェア社のインターナショナル・ビジネス・マネージャーのTripp Sicklerさん。
アウトドア好きにはたまらない自然の宝庫オレゴン

アメリカ・オレゴン州で有名なのはポートランド。背後に雪をかぶった美しいマウント・フッドが見える人口60万人ほどの小さな街にも関わらず「全米ベストシティランキング第1位(2013年)」「35歳以下が最も住みやすい街ランキング第1位(2013年)」「全米で最も環境に優しい都市」などと、とってもエコでサスティナブルでリベラルなシティ。環境に優しい街は犬にも優しくて、ドッグフレンドリーな街とも言われます。ポートランド通勤エリアには、世界的なスポーツブランドであるナイキや、アウトドアウェアブランドのコロンビアスポーツウェアの本社もあります。

そのポートランドからマウント・フッドを超えて内陸に向かうと、ベンド(Bend)という街があります。ここはポートランドより雨が少なく、西にはウィラメッテ国立森林公園(Willamette National Forest)、北西にはオーココ国立森林公園(Ochoco National Forest)が広がります。キャンプ、ハイキング、サイクリング、ラフティング、カヤック、スキー、釣り、ロッククライミング、ランニングなどのアドベンチャーがすぐに楽しめる、素晴らしい自然環境。そんなアウトドア好きにとってたまらないベンドの街に、ラフウェアの本社はあります。

スタッフはもちろん犬連れ出勤OK。うちからクルマで30分くらい走れば、スキー、トレッキングなどが思う存分楽しめます。商品のテストもすぐ近くの大自然の中で、犬と一緒にとことん行っているそうです。

GO OUTするのに必要なのは、犬と足とエネルギーだけ

トリップさんの愛犬は、ドゥードル(レトリーバー×プードル)のエディ、4歳。取材が始まるとすぐに彼はすぐにスマホを取り出し、エディの写真を見せてくれました。

さて、本題です。

―なぜ犬は、アウトドアで遊ぶと喜ぶのでしょう?

すべての犬は、冒険家であり、探検家だと思います。だから、今まで見たことのない世界へ、犬を連れ出してほしい。森、雪の原っぱ、公園、シンプルな散歩道…どこでもいいんです。どこでも喜びます」

―アメリカの人は、犬とどんなことして遊ぶのですか?小型犬でもアウトドア・アクティビティーを楽しんでいますか?

「もちろん。ハイキング、キャンピング、ランニング、カヤック……人ができるアクティビティーなら、犬はなんでもできます。背丈や体力が足りなかったりで、小型犬にはできないものもあるかもしれないけれど、基本、大きさは関係ないですよ。2kgの小型犬だろうが、50kgの大型犬だろうが一緒です。むしろSUP(スタンドアップパドル・サーフィン)は、小さい犬の方がバランスがとりやすくて得意かもしれません」

補助ハンドルが付いたウェブマスターハーネスをひょいと持ち上げ、使い方を教えてくれたトリップさん。犬を抱え上げる際、体重が分散してバランスがとりやすいハーネスなので、いざというときにアウトドアで役に立つ。老犬の歩行補助グッズとしても使えそうだ

―ビギナーには、どんな道具の準備が必要でしょうか?

「犬と自然の中で楽しい時間を過ごすためには、たいしたモノはいらないです。犬と足とエネルギーだけ(笑)

―では、なぜ犬のアウトドアグッズを作っているの?(笑)

「たいした道具はいらないけれど、やはり安全のためや、犬も人も快適になるためにあるとよいグッズはあります。犬と人のヘルプになるような、何か問題があったときの解決策となるグッズをプロダクトしたいと考えています。そのグッズがあることにより、今までできなかったことができるようになったらいいですよね、たとえば、夏のアスファルト道路は熱くて散歩に行けないのならと、犬用の靴を作りました」

―どんなことを意識してアウトドアグッズを作っているんですか?

「常にいちばんハードユースな条件を想定して、素材を吟味しています。リードも、登山用のザイルやカラビナなど頑丈なものを用い、耐久性や強度にこだわっています。そのため多くの犬に協力してもらって、引っ張りなどに対する強度、摩耗などのテストをしていますよ。まあ、会社の周りが自然だらけですから、テストする場所には困りません(笑)。とにかく、人よりもまず犬目線。犬が不快に思うものはダメです。だから100頭以上に配ってテストします」

―たとえばラフウェアの商品で、ビギナーにオススメのグッズはどれでしょう?

「まずは<ビーコン>かな。林の中、夜間でも愛犬を見失わないようにするセーフティLEDライトです。付属のUSBケーブルで充電できるから繰り返し使えます。

セーフティLEDライト「ビーコン」
「あと湖や海で泳ぐことに挑戦したいなら<フロートコート>犬用のライフジャケットです。犬かきのジャマをしないようにデザインされているし、安定した浮力もあります。」

フロートコート。背中にハンドルが付いているから、愛犬を水面から引き上げることもできる。XXS〜XLまで6サイズあり、小型犬から大型犬まで対応


犬用ライフジャケット「フロートコート」
「2018年春夏の新作では、愛犬とのランニングやトレイルランニングを楽しみたい人向けに<トレイルランナーシステム>を作りました。ウエストバッグに付属のリーシュをつないで使います。」

トレイルランナーシステム。犬と一緒に手放しでランニングするという、とてもアメリカンな発想。日本では公園内のトレイルや河川敷など、道幅の広いところで利用するとよいだろう

両手が自由に使えるウエストベルト「トレイルランナーシステム」
「もうひとつ新作でおもしろいのがノット ア ヒッチ。キャンプなどで2本の木があれば、そこをつなぐ簡易係留システムです」

ノット ア ヒッチ。洗濯ロープのように2本の木をつないで、犬を係留する道具。ノーリードにできないキャンプ場は多いけれど、これなら犬も自由に動き回れてストレスが溜まりにくいはず
ノット ア ヒッチは、白石オススメ。他社になくユニーク。犬もこれがあればキャンプ場で無駄吠えしなくなりそう

―たしかに「あるといいな」というグッズばかりですね。では、トリップさんは、どんなアウトドアをエディと楽しんでいるんですか?

「いろいろするけれど、いちばん好きなのは、森の中のウォーキング。住宅地の“Side walk”(歩道)での散歩はもちろん毎日、朝晩するけれど、森に行って20分〜2時間くらい歩くのが好きなんです。急ぐこともなく、特定の目的もなく、ゆっくり森の中を犬と歩くのが、いちばん幸せ。仕事などがあり、なかなか毎日は森には行けないのだけど、できれば週2~3回は行きたいですね」

―急ぐこともなく、目的もなく、のんびり森を歩くのは、いちばん贅沢な時間かもしれません。アメリカでは、森の中はどこでも犬も入れるのですか?どこでもノーリードにできるのですか?

「いえいえ、こちらもいろいろルールがあります。ナショナルモニュメントとナショナルパークについては、犬不可という訳ではなく、リードつきならOKなエリアなど、それぞれの公園ごとに細かく決められています。
ドッグフレンドリーといわれる公園には、ナショナルパークやアーカディア国立公園などがありますが、アーカディア国立公園のホームページにはガイドラインや犬OKなエリア、犬が制限されているエリアが分かりやすく載っています。一方、ナショナルフォレストについては、管轄が異なるため、規制が比較的少ないです。きちんとコントロールできるのであれば、スイミングエリア以外でノーリード可になっています。」


―なるほど。やはりアメリカとはいえ、どこでもノーリードが許されているわけではないんですね。ルールやモラルを守ることは、どこでも大事だとわかりました。
では最後に、日本のアウトドア・ビギナーのドッグラバーに向けてメッセージをお願いします。

一緒に、楽しく、安全にGO OUT!(お出かけ)してください。自然の中は、ハッピーでピースフル。人も犬も同じで、外に出た方が幸せです。そう、ボクらは信じています。安全性、耐久性に配慮された道具を利用し、アウトドアへ踏み出してください」

~ とても気さくに朗らかにお話ししてくれたトリップさん。ラフウェアの、自由でのびのび、そして何よりも犬優先の社風を感じました。「自然の中は、ハッピーでピースフル」。素敵な言葉です。

そしてアメリカでも、やはりルールはいろいろあるそうです。アウトドアを楽しむときは、ルールを守り、自然に迷惑をかけないようにするのは万国共通の約束事でした。ただ、日本でも国有林が部分的でもノーリードOKになったらいいなぁと個人的に思いました。犬も自由に走ったり、マイペースで歩いたり、自然の森のニオイを嗅いだりできれば、日本の犬ももっと幸せになるはずです(もちろん呼び戻しのトレーニングやマイクロチップと迷子札は必須ですが)。

さて、日本では、春はすぐそこまで来ています。さあ、そろそろワクワクと妄想しながらアウトドアへGO OUTする準備を始めてみませんか。まずは「形から入る」のも悪くないかもしれないですよ!?

▶ RUFFWEAR(ラフウェア)公式ブランドサイト

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白石かえ

犬学研究家、雑文家 東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。 その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピ…

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