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大人しくしているのはストレスの証?「学習性無力症」とは

学習性無力症
「大人しくて、とてもいい子でしたよ!」犬を飼育すると飼い主の手を離れ、預ける機会がありますが、動物病院やトリミングなどに迎えに行った時、このような言葉にホッと胸をなでおろしたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。でも、「普段暴れまわっているうちの子がいい子?」なんていう疑問を持たれた方もいるかもしれません。また、ご自宅でもブラッシングなど特定の事をしようとすると、急に大人しくといったことを伺うこともあります。では、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

 

過剰なストレスから逃げなくなる

初めて行くような場所で緊張することは人間でもあるように、犬にとっても緊張するシチュエーションの一つです。しかしながら、さっきまで元気にしていた犬が何度も足を運んだことのある場所や、ブラッシングなどの、頻繁に行う日常的な管理で急におとなしくなる場合は注意が必要かもしれません。なぜなら、動物は回避することが難しいストレス状況下に置かれた場合、逃れようとする努力すら行わなくなることがあるからです。これは「学習性無力症」という現象で、「何をしても意味がない」とあきらめる、つまり、あまりにも過剰なストレスの結果、無気力になることをいいます。

 

「学習性無力症」とは?

学習性無力症は、その昔、犬を用いた実験から明らかにされました。実験は床から電気ショックの流れる部屋の中に犬を入れて行われました(現在では福祉的な理由からこのような実験は認可されません)。犬たちは予め2つのグループに分け、異なった経験をさせました。

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一つのグループはパネルを脚で押すことで電気ショックを回避できる経験を、もう一方のグループはハーネスでつながれ、何をやっても電気ショックから逃れられない経験をさせられたのです。これに何も経験したことのない犬たちのグループを加え、計3グループの犬たちが、仕切りを超えて反対側にジャンプすれば電気ショックを回避できる部屋に入れられ、研究者たちはその行動を観察しました。

その結果、驚くべきことに過去になにをやっても電気ショックから逃れられなかったグループの犬たちの2/3は、横になってクンクン鳴くだけでショックから逃れることをしなかったそうです(他の2グループの犬たちは数試行でショックを回避することを学びました)。ちなみに虫でもこのような現象が見られます。このことから、研究者たちは犬が無気力な状況を経験によって学習することを発見し、この現象を「学習性無力症」と名付けました。

 

実生活の中では起こり得る学習性無力症

話を日々の犬の生活に戻しましょう。例えばブラッシングが嫌いなワンちゃんが、ブラッシングのたびに羽交い締めにされ逃げられない状況に陥ったとします。初めの頃は暴れて逃げようとするでしょう。どんなに逃げようとしても怒られたり、無理やり抑えられたり、それでも逃げられなければやがて大人しくなります。似たようなことはしつけの現場でも見られます。何をしても怒られる、叩かれるなどの体験をすれば、やがて動くこともなくなります。場合によっては、その場面だけに限らず、生活の中でずっと無気力になることさえあります。

一見、何もしないので大人しくお利口になった様に見えますが、果たしてこれは「良い子」と言えるでしょうか?其の実、心の中は怯えきっているだけなのです。正直、動物病院など命に関わる現場では、怖がっていても無理やりにでも対処をしなければならないケースもあります。ただ、飼い主さんは極力ワンちゃんの嫌いな物や状況を作らない社会化をしたり、苦手な状況を克服できるよう少しずつ慣らすことでこれらの問題を解決することができます。静かにしているからよしとするのではなく、ワンちゃんの心理状態まで察して対処してあげることが大切です。

参考文献:Steven F. Maier & Martin E. Seligman Learned helplessness: Theory and evidence Journal of Experimental Psychology: General 105 (1):3-46 (1976)

三井翔平

ドッグトレーナー(スタディ・ドッグ・スクール所属)、学術博士、国際資格CPDT-KA

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