動物愛護法の改定によりいわゆる「8週齢規制」が盛り込まれたことで、「社会化期」という言葉が一般の方に耳にも入る機会が多くなってきました。
社会化はいつからいつまで?
犬が人間社会で暮らしていく上で遭遇する人や他の犬、物や出来事に馴らす「社会化」が注目されて久しいですが、社会化は新規の刺激に対し比較的恐怖心を抱きにくい、子犬の時期からはじめられるに越したことはありません。
特に、3~12週齢の「社会化期」に行うことで、人や犬、物事、場所などに対し愛着を形成し、適切な振る舞いを身につける事ができます。母子分離やワクチンの時期など種々の問題を考慮すると、現実的には飼い主さんのもとに来るのは早くても社会化期の後半、そして社会化教育が始まるのもこの時期からとなります。
パピークラスに参加すればいいのか?
子犬の社会化を目的としたしつけ方教室はパピークラスとよばれ、以前と比べ開催される場所や機会も増え、多くのワンちゃんが参加していることから、日本でも社会化に対し高い意識が持たれはじめているのではないかと思います。
パピークラスはご自宅にワンちゃんを迎え入れてすぐの3~5ヵ月齢程度のころに参加されるケースが大半で(参加の上限を5~6ヵ月齢とする場合が一般的)、しつけ方教室によって違いはあるものの、多くの場合6、7ヵ月齢前後で終了する事になります。
では、この期間にいろいろな経験をさせればその後困らないのでしょうか?
答えは「NO」です。パピークラスはもちろん重要ですが、それだけでは足りない部分も多くあります(もちろん、パピークラスが無駄な訳ではありません。社会化期の適切な過ごし方やパピークラスの経験がなければ重大な問題に直面することもあります)。数学的に言うならば、パピークラスへの参加はあくまで必要条件であって必要十分条件ではなく、その後の過ごし方もとても重要なのです。
若齢期も大事!
パピークラスを卒業するであろう6~7ヵ月齢の時期は「若齢期」と呼ばれる時期のまっただ中です。
若齢期とは12週齢以降から、犬種差はありますが、概ね1歳前後の性成熟するまでの期間をいいます。この時期は体内のホルモンバランスが成犬に近づくことで物事の感じ方や行動に変化が出てきます。つまり、以前は問題なかったことでもこの時期に顕在化することがあるのです。例えば、発情期を迎えた雌犬が目の前にいたとしても雄の子犬は交尾したいとは思いません。しかしながら、成長に伴いホルモンバランスが変化することで若齢期の雄犬は次第に雌犬に興味をもち、発情期の雌犬がいようものならコントロールができないといったこともあります。
また、徐々に警戒心が増すことで、インターホンに吠えるといった行動(自分の縄張りを侵そうとする対象への警戒)がこの時期に顕著になることがあります。ただ、これらの行動は覚えていたことを忘れてしまったのではなく、感じ方が変わったためにおこる問題です。「今まで平気だったのになぜ?」ではなく、体の状態や感じ方が違うから反応が違うことは当たり前なのです。では、どうすればいいのでしょうか?答えは単純ですが、「継続的な社会化」です。ですから、「昨日までは大丈夫だったからさっきの反応は何かの間違えだ」ではなく、好きなものや、何とも思っていないものでも、苦手にならないように継続的に慣らすことが必要になるのです。特に、6~12ヵ月齡は一気に大人に近づく、変化の大きい時期(人間でいえば思春期)ですから、繰り返していくことが必要なのです。
ただし、感じ方が変われば目標が変わることもあります。例えば、今までは仲良く他の犬と遊んでいたが、性成熟がはじまる半年過ぎぐらいから他の犬(縄張りや異性など生きる上での資源がかぶりやすい同性の場合が多い)があまり好きではなくなってしまったというケースでは、仲良く遊ぶことが目標ではなく、同じ空間にいても興奮せず、落ち着いていられることが目標になります。つまり、何かに馴らすとことは変わりませんが、時期や犬の反応に合わせた継続した社会化が必要になるわけです。
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