人は歩くときに足の指とかかとの両方を地面につきます。かかとを地面につけることは接地面積を広げることで、安定して体を支えることにつながります。この歩き方のことを蹠行(せきこう、またはしょこう)といいます。では、犬はどのように歩いているかご存じでしょうか?
実は犬は地面にかかとをつけず、人でいえばつま先立ちの状態、つまり指のみで歩いているのです。この歩き方を趾行(しこう)といいます。ちなみに馬や牛は蹄(ひづめ)のみで歩く蹄行(ていこう)性の動物です。
犬のかかとは写真の矢印の位置でかなり高い場所にあり、丸の部分が指です。
なぜ、かかとをつかないように進化したのか?
捕食動物である犬は狩りをして獲物を捕らえることで生活をしてきました。つまり逃げる獲物を追いかけ、捕らえるために体を進化させてきたのです。趾行のメリットは大きく分けて2つあります。1つはつま先立ちすることで、できるだけ足の長さを稼ぎ「長距離を速く走れる」こと。
もう一つは、逃げる獲物を追いかけるために素早く方向転換することや、静かに忍びより獲物に近づいたり、捕らえた獲物を押さえたりすることなどに必要な「柔軟性」を持っていることです(馬などの蹄行性の動物は走ることに特化した結果、柔軟性を欠いているため物を押さえることはできません)。おもちゃを前肢で上手に押さえながら噛みちぎるように、犬の足は早く走れる割には器用な構造をしているといえます。
肉球の秘密
足の裏の肉球はクッションの役割をしています。一般に犬は汗をかかないといわれますが、肉球にはエクリン汗腺と呼ばれる水溶性の汗を分泌する器官があります。激しく運動した後にアスファルトやタイルに足跡が残るのはこのためです。後肢で地面を引っ掻き、砂や土をまき散らす動作は足裏の汗のにおいによるマーキングであるともいわれています。
犬にもかかとを使う場面がある!
歩くときにかかとをつかない犬ですが、実はかかとを地面につけることもあります。それはジャンプの時です。高く大きく飛ぶ時は指に力を入れ地面をつかむように踏ん張ると同時に、かかとを地面につけ、蹴り上げます。アジリティやドッグランなどで元気よく飛び跳ねているワンちゃんの様子を注意深く見てみるとご覧いただけるかも知れません。