【ドッグトレーナー連載】犬のしつけ都市伝説 ~犬を仰向けにして服従させないといけないのか?~ by鹿野正顕

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飼い主と犬の上下関係をはっきりとさせるために、犬を仰向けに寝かせてお腹を出させ、力ずくで押さえつけたり(アルファロールオーバー)、犬の口吻(マズル)を力ずくでつかむ(マズルコントロール)ことで、犬に抵抗させず服従的な立場を認識させることが必要だといわれてきました。

しかし、これらの方法で犬を服従させることが、しつけや問題行動の改善をする上で本当に重要なことなのでしょうか?

 

服従は恐怖心によって委縮しているだけ

犬は相手に対して恐怖を感じた際、お腹を見せて服従の姿勢を見せます。この姿勢は、相手に対して自分は恐怖を感じていて、抵抗する気がないことを伝えるために行われます。もちろん、お腹や体を触ってほしくてお腹を見せる場合もありますが、その違いは服従の際にはお腹を見せるだけではなく、尻尾を股の間に挟み、体全体も硬直しています。

よく、動物病院の診察やトリミングの際に、一見おとなしくお利口にしていても、実は診察やトリミングに対して極度の恐怖を感じ、硬直して動けなくなっているだけの場合も多く見受けられます。

アルファロールオーバーやマズルコントロールを用いて犬に言うことを聞かせたり問題となる行動を止めさせたりする方法も、実はこれと同じです。犬は、基本的に自分の意志に反してお腹や口周りを触られることがあまり好きではありません。

その嫌な部分を飼い主が力ずくで押さえつけることで犬に恐怖心を与え、委縮させることで犬に言うことを聞かせるのが、アルファロールオーバーやマズルコントロールを用いた犬のしつけや問題行動の改善方法の原理なのです。

また、犬は恐怖心を感じた際、吠えたり咬みついたりといった攻撃行動を示すことで、その状況から自分の身を守ろうとします。それは飼い主に対してでも例外ではなく、アルファロールオーバーやマズルコントロールを行うことで、飼い主を恐怖の対象とみなしてしまえば、飼い主に対して威嚇したり攻撃を示す問題行動に発展する危険性があります。

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そもそも飼い主が犬とどのような関係を築きたいのか?

もちろん、人が犬のお腹やマズルを触ることは、診察やトリミング、日頃の健康管理などで必要になってきます。しかし前述したように、犬はそもそもお腹やマズルを自分の意志に反して触られることがあまり好きではないので、子犬の頃から触られることと大好きなご褒美を結び付けて慣らしてあげれば、犬は安心して飼い主を受け入れてくれるようになります。仰向け-3

以前の記事【犬は本当に飼い主のことを下に見るの?】でも書きましたが、犬は安心して暮らせるための養育を飼い主に求めています。家族の一員として犬を迎え入れたのであれば、飼い主の一方的な気持ちを無理強いし、威圧的な存在となって言うことを聞かせても、お互い幸せとはいえません。犬の気持ちを察することで安心感を与え、信頼できる存在となって犬が自発的に受け入れてくれる関係を目指すべきではないでしょうか?

 

 

ドッグトレーナー 鹿野 正顕(学術博士)

鹿野_photo_150pxスタディ・ドッグ・スクール 代表
株式会社 Animal Life Solutions (ALS)代表取締役社長麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)にて、人と犬の関係、特に犬の問題行動やトレーニングの研究を行い、人と犬の関係学の分野で日本初の博士号を取得。
麻布大学卒業後、人と動物の関係に関する専門家の育成・普及を目指し、株式会社Animal Life Solutionsを設立し、飼い主教育を目的としたしつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール」の企画・運営を行いながら、トレーナーとしても指導にも携わっている。2009年には世界的なドッグトレーナーの資格であるCPDT-KAを取得。
日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT)事業企画委員
CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer – Knowledge Assessed)
株式会社 Animal Life Solutions
スタディ・ドッグ・スクール
スタディ・ドッグ・スクール ペットドッグトレーナー育成コース

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