ペットロスになる前にor自分や身近な人がなったら ~心の専門家に聞く最良の対処法~

愛犬や愛猫を失うのは、本当につらいものです。私も20代でヨーキーを12歳で亡くしたときの悲しみを今でも思い出します。当時一緒に暮らしていた母は数ヵ月間、口数も食欲も減り、ペットロスに近い状態だったと思います。

今の愛犬ももうすぐ12歳なので、愛犬との別れについても考えるようになってきました。ペットロスにならないようにできるものでしょうか?もし身近な人や自分がペットロスになってしまったらどうしたらよいのでしょうか?

今回は、心の専門家であるカウンセラーの中台英子先生にうかがいました。

 

そもそもペットロスとは?

大切なもの(=ペット)がいなくなったこと(=ロス)から生じる喪失感が、ペットロス症候群の原因になります。ずっと身近にいた愛犬や愛猫を失うと、最初は「認められない」とショックや混乱に陥り、不安や悲しみが一気に押し寄せることでしょう。それは、誰にでも起こりうる自然な状態だと中台先生はおっしゃいます。

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ところが、その状態から長い間立ち直れないと、うつ病によく似たペットロス症候群の症状が現れ始めるかもしれません。やる気がおきない、何をしても楽しく感じられない、食欲が落ちる、眠りにつけない、寝ても夜中に何度も目が覚めたり夢ばかり見て熟睡できないなど…。

これはまさに、私の母の状態です。私よりも愛犬と一緒にいる時間がずっと長かった母。私が愛犬との別れから立ち直ってからも、ため息ばかりついている母を見ながら、なにかできないものかともどかしい思いでした。

「アルコールや食べ物に依存的になるケースもあります。さらに症状が進むと、生きることに絶望的になり自殺願望に発展することもあるので注意が必要です」と、中台先生はペットロス症候群をそのままにしてしまうことの危険性も指摘されます。

img_4511_572mb「傷つくのは自然なことですから、傷つくのを恐れないでくださいね。死に直面した際のショックを軽減するために、飼い主さんが一緒に寝るのを急にやめるなどしてペットと距離を置こうとしても、ペットのためにはならないかも…。ペットとの一瞬一瞬を大切にするほうが、きっとあとで良かったと思うのではないかしら?」

 

症状は人によって、あるいはペットを失った状況によっても違ってくるとか。

「たとえば、看病をしながら病気で失ったケースと、事故や失踪などで突然失ってしまったケースですね。後者のケースでは、心の準備なくペットを失ったので、それだけショックは強くなるでしょう」とのこと。

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また、高齢者や一人暮らしで、愛犬や愛猫を生活のパートナーにしている方や、これまで身近な人の死などに直面して乗り越えた経験をしていない方も、心の乱れは大きくなる可能性が高いそうです。このような知識を心に留めておくのも、自分や身近な人に対するペットロスへの備えになりそうですね。

 

悲しむ時間が大切

ペットロス症候群の最大の予防法は、実は『ちゃんと悲しむこと』だそうです。遠慮せず、泣きたいだけ泣いたり、気持ちをまわりの人に伝えても良いんですね。思い切り泣くと、心身の緊張やストレスから解放されると言われます。他者に話すことで心の整理がつきやすくなるとも言われます。

人の場合はお葬式があり、まわりの人と悲しみを共有できます。仏教では初七日や四十九日の法要をとおして、だんだんと死を受け入れることもできるのです。

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「ところが、ペットの死に関しては、同じようにはいきません。同じ家族でもその受け止め方に温度差があることも。『こんなに悲しんではおかしい』などと、悲しみを感じないようにする『回避』が起こると、現実を受け入れられず、いつまでもひきずる危険性が生じてしまうのです」

ちゃんと悲しむために、ときには少し引きこもる時間が大切なようです。私の母がしばらく出かけなかったのも、自分の感情に向き合うためには貴重な時間だったのかもしれません。ゆっくりと自宅で過ごす時間は、愛犬や愛猫との思い出の整理に使えると理想的です。

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ペットとの思い出を写真集にまとめたり、ブログに綴ったり…。その過程で、涙したとしてもそれは悲しみと向き合うこと。癒しにつながります。最終的にそれがひとつの形として完成したとき、心の整理もついていることでしょう。そうしたら、少しずつ日常に戻っていけば良いのです」と、中台先生は具体的なアドバイスをくださいました。

 

身近な人に対する対応方法は?

家族や、犬トモがペットロス症候群に陥っていた場合はどうすれば良いでしょうか?そっとしておいたほうが本人の心が安らぐと思いがちですが、実はこの気遣いは好ましくないとか。

私も中台先生のアドバイスのように、「ちゃんと眠れてる?」、「食事はおいしく普段どおり食べられてる?」などと、自分の状態に気づいていなかったかもしれない母に、聞けば良かったなぁ~、と思います。自分に対しても、友人や家族に対しても、早めに心身の不調に気づければ対処も早めにできますからね。もし本人が話せそうならば、「大変だったね」、「つらかったね」、「どんなだったか聞かせて?」と、まわりが声をかけてあげると良いそうです。

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ただし、話しかけるといっても、「元気出してね」、「早く元どおりになってね」、「次の子を迎えたら忘れられるんじゃない?」などという励ましの声かけは逆効果とのこと。確かに、当時の母は、元気が出なくて困っていたのですから…。それに、お別れした子のことをまず心に収める作業ができないと、次の子を迎える気持ちにはなれないですよね…。

相手が話してくれたら、『そうだよね~』などと、何を言っても受け入れる姿勢で聞くことがとても大切なんです」

 

さらなる助けを借りる必要があったら

犬トモやお散歩仲間は、かつてペットの死を乗り越えた経験をしていることも。自分がペットを失って気持ちが沈んでいるとき、身近な家族よりも助けになる可能性もあるので、私もそれを念頭に置いておこうと思います。けれども、家族や友人やペット仲間などに、ペットを失った悲しみやつらさが理解してもらえない状況であれば、自助グループの集まりやカウンセラーの力を借りても良いでしょう。

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自助グループとは、同じ経験をした人たちのグループで、その集まりでは話を聞いてもらえるのはもちろん、ほかの人の同じような体験談を聞くことで悲しみを共有したり、心の整理をつける助けにつながります。それでも心身の不調が続くようであれば、早めに心療内科などを受診するようにしたいものです。

「人は誰でも、身近で大切な存在の『生き死に』を体験することで心の成長が促され、人生がより豊かになると言われます。愛するペットの死はつらいものです。けれども、それを自分の中にちゃんと収められれば、薄紙をはがしたかのようにそれが自分の体の一部になるのです。そして、もし次の出会いがあればそれを自然と受け入れられるようになるでしょう」

中台先生の言葉が、胸に響きます。私も、今も足元で昼寝をしている、少し白髪が増えてきた11歳の愛犬リンリンを見つめながら、愛犬たちとの毎日を大切に紡いでいこうと改めて感じました。

lingling_350m足元でスヤスヤ眠るリンリン。っていうか、その枕…硬くない!?犬との生活では予想外の楽しいシーンもたくさんあります(笑)

<お話をうかがった先生>
中台英子(なかだい ひでこ)さんimg_4502_300m

カウンセラー。企業や官公庁での相談業務を担いつつ、産業カウンセラーなどの育成・指導や、企業・官公庁の職員の研修、組織・相談室のアドバイザーなども担当。事件・事故・自殺に関わる遺族に対する個別・グループ面談、グリーフカウンセリングの指導、相談員の育成や、講義・講演なども行っています。

 

臼井京音

ドッグライター、写真家、東京都中央区の動物との共生推進員 ドッグライター・写真家として、およそ20年にわたり日本各地や世界の犬事情を取材。毎日新聞の連載コラム(2009年終了)や、AllAbout「犬の健康」(2009年終了)、現在は『愛犬の友』、『AERA』、『BUHI』など、様々な媒体で執筆活動を行う。オーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、2007~2017年まで、東京都中央区「犬の幼稚園 Urban Paws」」の園長・家庭犬のしつけインストラクターとしても、飼い主さんに…

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