ゆる〜く活動しつつ、2周年! 「東京犬パルクール部」


私はただのライターで、トレーナーさんでもなんでもないんですが、2年前の4月、急に思い立って(正確には、スウェーデン在住の犬ライターとお喋りしてて)、ニッポンの、とくに都市部にすむ犬たちのQOL(生活の質)をあげることを願って、「東京犬パルクール部」を立ち上げました。ニッポンの犬と飼い主がもっとハッピーに暮らすひとつの手段になればいいなぁと思って。ちなみに「東京」に深い意味はありません。「日本犬パルクール部」でもよかったのですが(笑)それでは話が大げさすぎるのでとりあえずTOKYOにしてみました。

パルクールとは?

そもそも「パルクール」とはなんだ?と思いますよね。パルクールとは、フランス発祥の、走る・飛ぶ・登るなどの移動動作で身体を鍛える運動方法と言われています。映画やCMで見たことありませんか。階段をくるんと1回転しながら飛び降りたり、ビルとビルの間を飛び越えたり、自動車の屋根の上を渡って逃げたり(それは映画だけにして〜)。

競技ではなくて、自主運動、個人の遊び、個人の運動。それを拡大解釈して、障害物を利用しながら、犬と一緒にトレーニングがてらする運動、それを「犬パルクール」(略して「犬パル」)と名付けました。

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倒木をジャンプ。犬ののびのびとした美しさに加え、カメラの腕もすごい

犬と暮らしていても、トレーニングする時間もお金もない、やり方もよくわからないという人、本音では多くいるのではないかと思うのです。私もそうです。またアジリティなどのドッグスポーツをやったら楽しそうだなぁ、メルも喜ぶだろうなぁと思うけれど、そういう施設は高速道路に乗って郊外に行かねばならず、なかなか通えません。またトレーニング代に1回5000〜8000円かかってしまうってのも正直しんどい。

ヨーロッパでは、地元のワーキングドッグクラブやコミュニティなどで、安価でトレーニングを受けるチャンスが多いそうで、だから「犬とトレーニングする」ということはごく当たり前のことであり、市民権を得ているのではないかと思うのです。しかし残念ながら日本では、「トレーニングって警察犬や盲導犬がするものでしょ」とか「小型犬にはトレーニングなんて可哀想」と思っている人がまだいるようです。

inuparu-2那須岳の上で風にあおられながら岩の上でマテ。トイプードルも逞しい!

いやいや、トレーニングって、そういうことじゃないんです。犬にとって、楽しいことなんですよ。むしろ、やらない方が、刺激のない生活で可哀想なんです。トレーニングとは、犬と一緒に遊ぶゲームやスポーツみたいなもの。アイコンタクトして意思の疎通ができると、犬も飼い主もすごく嬉しい!ということを、犬パルをきっかけに気がつくことができたら楽しいなー、と思ったのです。まあ、私もまだまだひよっこでして、クーパーと悪戦苦闘の毎日なわけですが、だからこそ犬と飼い主の共同作業の楽しさを日々自分で実感しています。

 

犬パル部の活動

さてさて、発足から2年。おかげさまで廃部にもならず(笑)、ゆるゆると部活動は継続しています。部員は、296人になりました。ゆるい部活なので、写真や動画などのみんなの投稿を見るだけの幽霊部員(笑。でもそれでもOK)もいますが、真面目な部員たちが毎回季節折々の魅力いっぱいの力作を投稿してくれます。部員の条件は、犬が好きで、愛犬と一緒に犬パルを楽しみたい人。たとえば、いまは犬を飼っていないけど、犬パルの写真を見たい人、それでもいいのです。

東京犬パルクール部って「東京」とついているけど、どこに住んでいてもOKです。発足時の会則に「都市部に暮らす」と入れていたのは、豊かな自然のある場所で苦労なく遊べる場所がいっぱいある地方の犬に比べて、都市部の犬は何かと制約が多いだろうから、街中に住んでいる犬でも楽しめるように、と思ったからなんだけど、結局、どの犬でもみなハッピーになってほしいから、どこに住んでいても問題なし。

いまでは日本全国、さらには香港、オランダ、イタリア、スウェーデンなどの海外部員もおります。地方色豊かな風景の中で工夫して、すました顔して写真に映る犬たちを見るのも、犬パルの意外な楽しみにもなっています。

inuparu-6オランダのブラッコ・イタリアーノ。このでっかい丸太ターゲットがヨーロッパっぽい

もちろん犬パル部は、非営利の部活動なのでお金はかかりません。facebookに参加してもらう必要がありますが(facebookに入るのは無料です)、そこで自分と犬が散歩中に頑張った写真を投稿し、部員と見せあいこをします。月に一度くらい、ゆる〜い部長(=私)が今月のお題を出します。たとえば「(どこかに)タッチしてマテ」とか、「台の上に登って、マテ」とか「ジャンプ」などです。老犬などでジャンプは足腰に悪いなぁと思ったら、そのお題はパスすればいい。できる課題を、無理しない程度に、楽しみながら挑戦すればいいのです。

inuparu-5「ノッテ、マテ!!」ならシニアでもできる。ブルテリアのグーフィーは撮影当時15歳、現16歳。シニア犬でも楽しめるのが犬パルの懐の広さ

 

犬との暮らしを楽しむために!

★コンセプト:「お金をかけず、都会の犬にも、刺激と運動を。飼い主との共同作業の悦びを!」

毎日の散歩の時間に、ジャンプしたり、乗ったりする障害物(ターゲットと呼んでいます)を探して、工夫して、おやつを使ったり、誘導しながら、教える。すると、これが意外なくらい、できるんですよ。親バカ!?いや、ほんとにそうなんですよ。飼い主がやってみてなかっただけで、犬って実は能力が高い。それを実感するのもすごく楽しいです。

inuparu-13パパと一緒にターゲットをジャンプ!一生懸命なパパに拍手!

そして、犬も誉められて、ニコニコでアイコンタクトしてきます。犬も「できた!」ってわかるんです。どや顔します(笑)。意思の疎通ができた瞬間、すごく嬉しいです。

★お約束:「犬に、飼い主に、地元に、みんながハッピーになる方法で」

犬に強要したり、無茶させちゃだめ。足腰を痛めないように、心を折らないように、楽しく行う。ほかの犬と勝ち負けじゃないから、飼い主も必死にならずに、ゆる〜く楽しく。

そして、街にも迷惑をかけてはいけない。公園のテーブルやベンチ、子どもの遊具に土足で乗ったりしないでください。街のみんなに迷惑かけないよう、マナーを守るのが約束です。そうしないと犬パル部自体が排除されてしまうので気をつけてください。住宅地や公園でノーリードもやめましょう。そういうときはロングリードを上手に使ってください。

inuparu-11歩道の縁石は最も身近なターゲットのひとつ。まずこれで「タッチ」の練習を

でも犬パルの活動によって、都市部にすむ犬のストレスが軽減され、吠え声などの問題行動が減ったら、これは街にもメリットのあることだと思います。身体と脳に刺激を受けたら、犬は満足して、家に帰ったらよく寝るものです。たっぷり外で遊んで、犬パルをさせて、毎日刺激的な生活を犬に与えてあげてください。

★いちばん大切な目的:「街に暮らす犬を幸せにするために」

犬が幸せになれば、飼い主も街も幸せになると思います。犬と暮らすことがマンネリ化して、日々の散歩に変化がなく、犬も人もつまらないまま仕方なく短い散歩をしている…。何のために犬を飼ったのか、なんで犬と暮らしたかったのか見失っているように見えます。スマホをいじりながら、犬を全然見ないで散歩していたり。

でも、ちょっと犬パルをしようと考えながら散歩すると、「あれはターゲットに使えそうだな」とか「ちょっと誘導してみたら、あっさりできて、びっくり」「お、おまえ、そんなこともできるのか!えらいなー、賢いなーー!」など、嬉しい発見がたくさんあるのです。犬パルは、犬と暮らす楽しさを再発見できます。

inuparu-8桜の木に「タッチしてマテ」。桜が似合う可愛いベドリントン・テリア

 

犬パルは、誰でも参加できます。来る者拒まず、去る者追わず(ゆる〜い部活なんです)。ただ練習の際は、ハーネスを使ってくださいね。首に負担を与えると頸椎などを痛める原因になるかもしれないですし、また誘導しやすくなります。それをわかりやすく紹介するスウェーデンのパルクールのビデオがありましたのでご紹介します。

(でも日本ではベンチに乗る練習は禁止ですぅ)

そしてついでにスウェーデンのドッグパルクールのビデオもご紹介します。イメージしやすいと思います。

「dog Parkour」などで検索すると、いろいろすごい犬が登場して、面白いです。でも、東京犬パルクール部は、そんなすごい高等な技は目指してはいません(笑)。とにかく、犬とどんどん外で遊んで、ゲームを楽しむようにトレーニングにチャレンジしてくれればOKです。ただし、可愛いワンちゃんの記念写真ではだめですよ。

inuparu-10ブロック塀の上に甲斐犬2頭並べてノッテ→マテさせて撮影するのは、ほんと大変。グッジョブです!!

ちゃんと、飼い主がコマンドをだして(たとえばノッテ→スワレ→マテ)、それを犬が意味を理解して岩や切り株によじ登り、スワレと言われてオスワリし、そしてマテで待っているところで、写真をパチリです。大事なことは写真を撮った瞬間の姿ではありません。飼い主に指示されたことを理解して実行し、共同作業できたプロセスが重要、それが犬パルです。

 

犬パル部に入部希望の方はいつでもどうぞ

犬とパルクールを楽しんでみたい人、いまは犬を飼っていないけどいつかは飼って犬パルをしてみたい人、犬が好きな人なら大歓迎です。犬種もサイズも年齢も関係なし。ただし、犬が好きじゃない人、この部活動を利用してお金儲けを企む人は、部長(私)が承認しませんのであしからず。ゆる〜い部活動ですが、今後ともゆるゆるとおおらかに続けていきたいと思っています。

inuparu-3.4ターゲットは、ママの背中!おんぶを練習したダルメシアン

▶Facebook  「東京犬パルクール部

 

白石かえ

犬学研究家、雑文家 東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。 その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピ…

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