食が細い、ムラ食いをする、食べずに空腹から吐いてしまう…といった愛犬の小食の悩み。野生の世界なら食べなければ待っているのは死。とくに食べ盛りの子犬期に食べないのは、真剣に向き合うべき問題です。
子犬が食べないときは、放置しないで
ムラ食いの相談は、ヨーキー、トイプー、チワワなどの小型犬に多いです。とくに子犬のときに食べないのを放置すると、低血糖から具合が悪くなることも。体に異常がないのに食べない場合は、どうすれば食べるのか、食事の与え方に配慮する必要があります。本来、どんどん食べて成長するはずの4カ月齢前で食べないなら、シリアスにとらえたほうがいいです。
どうすれば食べるのか、いろんな方法を試してみる
子犬のムラ食いで相談に来られるなかには、太ったコもいます。ブリーダーさんから、子犬のときは食べたいだけ食べさせなさいと言われ、給与量も決めず、満たされ過ぎて肥満に近いケースも。飼い主さんは食べないことを気にして来院されますが、栄養は足りているので心配はありません。どこかで帳尻が合っているのです。
逆にガリガリに痩せている場合は、真剣に向き合うことが必要です。子犬の場合、ムラ食いをわがままと決めつけないことが大切。病気が原因なら死に直結することもあるため、一度、病院で診てもらったほうがいいでしょう。病気でなければ、どうすれば食べるようになるのか、いろいろ方法を探りましょう。
まず、ブリーダーやペットショップから迎えたコなら、それまで食べていた食べ慣れたフードを与えるのが基本。また、ムラ食いするコのなかには、おもちゃの中にフードを入れると食べることがあるので、知育玩具を利用してみるのもいいでしょう。それでも食べない場合は、温めて香りを出したり、犬用のふりかけ、ささみや野菜を湯がいただし汁をかけたりして風味や香りをプラスし、食欲をそそるのも方法です。フードのブランドを替えることで、好みの風味が見つかることも。また、フードを手から与えると食べることもあります。
しかし、おやつなら食べるからと、おやつばかり与えていればドライフードを食べなくなります。ブランドを替えても、すぐに飽きて、スイッチをくり返す悪循環になることも。手から与え続ければ、手からしか食べなくなるコもいます。これらはあくまで食べる“きっかけ”づくりですから、習慣化してしまわないように気をつけてください。
飼い主さんの“構いすぎ”が、ムラ食いの原因のことも
ムラ食いの原因が、飼い主さんとの関係性にあることもあります。攻撃行動を直したいとカウンセリングを始めたダックスのコですが、ムラ食いの習慣もありました。攻撃行動を直すために、日頃、飼い主さんがベタベタと構っていた関係をメリハリのある関係に変え、トレーニングを密に行うようにしました。すると最初に変化があった行動は、フードのムラ食いがなくなったこと。飼い主さんが日頃、構いすぎていたため、甘えてムラ食いをしていたのです。トレーニングで適切な関係性を作るだけで、フードをもらうやりとりも、そのコにとって貴重な飼い主さんとの接触機会となり、食べるようになったようです。
食事の与え方にもメリハリが必要です。子犬なら、1時間置いて下げて、2時間後に与えてまた下げる、を繰り返す。成犬なら、朝に与えて食べなければ下げて、お昼に与えるなど何度かチャンスを与え、時間を決めてダラダラ食いさせないこと。心配してそばで見ていたり、食べるかどうか覗いて確認したりもしないように。
飼い主さん自身の目でボディチェックし、しっかり体重管理を
子犬から成犬になる過程で給与量は減りますが、それに気づかず、食べなくなった…と悩む飼い主さんもいます。人より鈍いとはいえ、犬にも満腹中枢はあるので、お腹がいっぱいになったら食べなくなるコもたくさんいます。ガツガツ食べるのが当たり前とか、残してほしくないという感情があるのか、犬は満たされているのに、「食べていない」と思い込む飼い主さんが多いようです。
とくにオーバーウェイトのコの飼い主さんには、犬それぞれに代謝の違いがあり、同じ量を与えても太りやすい、太りにくいがあるので、フードのパッケージに記載されている給与量はあくまで参考と伝えています。そして、ボディ・コンディションの見方を教え、上から見てくびれがあるか、肋骨は触れるか、痩せすぎて肋骨が浮いていないか…など、飼い主さんの目で確認してもらうようにしています。
ペットショップや飼い主さんのなかには、犬を小さいままにしておきたいからと、フードを与えないケースもみられます。小さい方が可愛いとか、犬種の理想サイズはこれだと決めつけている人もいますが、それは人間のエゴ。成長段階で栄養が足りていない犬は、体も小さく不健康です。大事な子犬期こそ、しっかり体重管理をしてほしいと思います。