秋の夜長に犬映画(3)『ベル&セバスチャン』


今秋は犬映画が豊作。
泣き、笑い、切なくなる犬映画特集、3回目。

雄大なアルプスの景色と健全なピレネー・マウンテン・ドッグを堪能
『ベル&セバスチャン』

1965年に発表された児童文学『アルプスの村の犬と少年』(原題:Belle et Sebasten)が原作。本国フランスでは小説をもとにテレビシリーズが制作(1965〜70年)され、大ヒットしました。でも私たち日本人にとって何よりなじみ深いのはTVアニメ「名犬ジョリィ」(1981〜82年)でしょう。そう、この映画はあの懐かしのジョリィと同じ原作なのです。

この映画は、第二次世界大戦中のナチス占領下のフランス、アルプスの麓の小さな村が舞台。孤児のセバスチャンは、血のつながってないおじいさんのセザールと、セザールの亡くなった妹の娘アンジェリーナと暮らしていました。いつかママが帰ってくると信じている孤独なセバスチャンは、学校にも行かず……そこへ家畜や人を襲う「野獣」と恐れられている大きな灰色の犬(川で泳いだら、美しい真っ白な犬に戻りました♪)と出会い、「ベル」と名付けて心通わせ、友達になります。もう、序盤のこれだけで泣けます(どうして犬となると、こんなに泣けてしまうのでしょう?)

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白い大きなベルは、フランス原産のピレネー・マウンテン・ドッグという犬種。日本やアメリカではグレート・ピレニーズと呼ばれています。ピレネー山脈周辺の山岳地で、羊などの家畜を守る仕事をする優秀なガードドッグです。だから強くて、勇敢で、知らない動物(人にも獣にもほかの犬にも)警戒心が強く、家族にだけ忠実。映画ではまさに古きよきピレネー・マウンテン・ドッグの健全な姿を見ることができ、これまた犬オタクにはたまりません。アルプスの美しい風景の中にいるベルを見ていると「ああ、本来のピレネー・マウンテン・ドッグはこういうところに暮らしていて、こういう飼われ方をしていたんだなぁ」と、思いを馳せることができます。

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本作は、2015年9月19日から東京で公開が始まり、いま全国各地で順に公開中。すでに上映終了のところもありますが(紹介が遅くてごめんなさい)、朗報があります。本作はフランスでは2013年のクリスマス・シーズンに上映され300万人以上を動員しましたが、その大ヒットのおかげでしょう、2015年末には続編映画「Belle et Sebasten, l’ aventure continue」が公開されます。続編も日本で公開されますように。またベルに会うのが楽しみです。

Belle & Sebastien

『ベル&セバスチャン』
9月19日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA
映画『ベルとセバスチャン』公式サイト

eiga

 

白石かえ

犬学研究家、雑文家 東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。 その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピ…

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