秋の夜長に犬映画(2)『犬に名前をつける日』

『犬に名前をつける日』(c)スモールホープベイプロダクション

今秋は犬映画が豊作。
泣き、笑い、切なくなる犬映画特集 2回目。

限りなくドキュメンタリーに近いドラマ。日本の殺処分の現状がリアルに伝わってくる 『犬に名前をつける日』

ドキュメンタリーを得意とするテレビ番組の制作や脚本等を手がける山田あかね監督が、愛犬ゴールデン・レトリーバーとの死別をきっかけに、より深く動物のことを考察したいと考えた末、4年もの年月をかけて、200時間を超えるドキュメンタリー映像を撮りました。本作はそれをベースにして作られた映画です。

保護犬たちと彼らを救おうとする人々に感銘を受けた女優・小林聡美さんが、実際に保護施設に行き、台本もないまま、取材者を演じるという手法で撮られています。どこまでがドキュメンタリーで、どこからがフィクションなのか、もう境目がわからない演技を見せてくれます。彼女は以前、プライベートでラブラドール・レトリーバーと暮らしていて、たいそう可愛がっていたと聞きます。そのせいか映画の中でも、犬のリードを持つ手つきが慣れているし、保護犬を見つめるまなざしも切なく、本当に等身大の犬への気持ちが伝わってきます。

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また小林聡美さん演じる久野かなみの、元夫である前田勇祐役を演じる上川隆也さんは、実際に保護犬だった黒い犬(ノワールという名前)と現在プライベートで暮らしています。本作で劇中、上川さんが一緒に連れている犬が、まさにそのノワール本人(本犬)。飼い主と愛犬の共演なのです。

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さらに映画の最後の方で登場し、久野かなみが迎えたという設定の、イエローのラブラドールと日本犬のミックスのようなピンク色の鼻をした薄い茶色の大きめの犬は、山田あかね監督のいまの愛犬。やっぱり元保護犬出身です。きっとこの映画のストーリーと同じく、いま山田監督のおうちで幸せな第2の人生(犬生)を謳歌しているに違いありません。

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動物愛護の問題や日本の殺処分の現状を理解するために、この映画は重要な役割を果たしてくれると思います。犬と暮らす人、今から暮らしたいと思っている人含め、たくさんの人に見てほしい映画です。「犬の幸せはどんな人と出会うかで決まる」。本当にそうです。小学校や中学校など、子どもたちの命の教育の教材としてもいいと感じる秀作です。

映画館に行くときは、タオルハンカチをお忘れなく(マスカラはウォータープルーフで)。号泣まちがいなし。

『犬に名前をつける日』
シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
(c)スモールホープベイプロダクション
映画『犬に名前をつける日』公式サイト

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犬に名前をつける日

白石かえ

犬学研究家、雑文家 東京生まれ。10歳のとき広島に家族で引っ越し、そのときから犬猫との暮らしがスタート。小学生のときの愛読書は『世界の犬図鑑』や『白い戦士ヤマト』。広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。 その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。犬を「イヌ」として正しく理解する人が増え、日本でもそのための環境や法整備がなされ、犬と人がハッピ…

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