誰しもが何かしら苦手や怖いという感情をもつ動物がいるかと思います。私は蛇が大の苦手で、見ることもできないくらい大嫌いです。蛇については本能的に苦手・嫌いな人が多いようですが、犬についてはどうなのでしょうか?
実は多い???犬が苦手な子ども
小学校の授業で犬を介在させたプログラムを実施する際に、保護者の方にアレルギーの調査に加えて、子どもたちの犬に対する気持ちについて回答してもらいます。1クラスで平均3名くらいは苦手・怖いという気持ちを持っている子どもがいて、多いところでは10名くらいが怖い・苦手と感じている子どもいました。過去に最も多かったのは、30名のクラスで、27名が怖い・苦手と感じているというところもありました。怖いと感じる理由としては、「吠えられた、かまれた、追いかけられた」という経験がほとんどですが、かまれるかもしれないという恐怖心や触れ合った経験がないからわからないという回答もありました。
何が怖いのか?
子どもたちの様子を見ていると、怖いと感じる子どものほとんどが犬の顔が向けられることに対して怖いと感じ、逃げようとします。歯が見えると途端に恐怖を感じたりするようです。犬歯を見せると、怖いと思っていなかった子も、一瞬引いている様子が伺えます。
また、動きに対しても敏感で、座った体勢から立ちあがるだけで、驚いて怖がったりもします。大型犬の方が恐怖心は高いようですが、小型犬でも動きが早い犬は怖がる傾向があります。不意な動きに怖さを感じるのかもしれません。
さらには、毛の色でも恐怖心に影響があるようです。被毛が黒い犬に対して怖さを感じ、大きければ大きいほど恐怖心が高まるように感じます。以前、バーニーズマウンテンドッグの犬がふれあいに参加しましたが、ある子どもがその犬を見ただけで「大きくて怖い」といって泣き出してしまいました。大きさと黒い毛の両方が怖かったのでしょう。その子は他の小さい犬と笑顔でふれあっていました。
オオカミだと言われ怖がられている、我が家の殿くん(左)、殿と正反対の容姿で毛がふわふわで触りやすいが大きいことで若干怖がられる柔(右)
経験からくる恐怖心
小学校に入るまでに、犬にかまれたり、吠えられたり、追いかけられたりした経験のある子どもは、犬そのものが恐怖になってしまいます。通学路で犬とすれ違うことが当たり前にある日常が、その子どもにとって恐怖の日常となってしまいます。幼少期に犬に対して怖い思いをすると、その後克服するきっかけがない限り、犬のすべてが怖いと思ってしまいます。幼少期に犬と接する機会がない場合でも、未知なる生き物としての恐怖心が芽生えてしまうようです。どちらにしても、なるべく早い時期に、やさしいふれあいが持てる犬たちと交流することで、恐怖心や苦手意識を克服することが可能になると思います。時期を逃すと、怖さが定着してしまうので、ずっと怖い思いをしてしまうかもしれません。
やさしくさわることは、小さいころから教えてあげるとよいですね
恐怖心を克服した子どもの自信に満ちあふれた顔はとってもよい顔をしています。「犬はいいヤツだ」と感じてくれたら、犬好き人間としてはとても喜ばしいことです。
学術博士 鹿野 都
動物介在教育指導者養成講座委員
セラピーアニマル評価者養成講座委員
動物介在教育マスターエデュケーター
麻布大学共同研究員▶スタディ・ドッグ・スクール
▶スタディ・ドッグ・スクール ペットドッグトレーナー育成コース