どの程度まで接触させていい?赤ちゃんと犬の距離感

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愛犬と赤ちゃんが一緒に暮らしている場合、どのくらい接触させていいものか、悩むところかもしれません。
ひとつは衛生面。そしてもうひとつは、安全面。
今回はふたつの観点から、これまで多くの獣医師やドッグトレーナーに取材した内容をもとにまとめてみたいと思います。

 

親ならば知っておきたい。犬が原因の感染症のリスク

まずは、衛生面について。
我が家では、娘は3歳まで囲いのついたベビーベッドで寝かせ、私は2頭のノーリッチ・テリアと一緒に寝ていました。これで、娘の就寝中に犬が顔を舐めることは皆無。
私が日中にリビングにいるときは、犬が届かないハイローチェアに赤ちゃんを寝かせました。(とくに赤ちゃんに興味がない2頭は、別に飛びつく気配もなかったのですが……)

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「うわぁ~! 赤ちゃんってミルクのいい匂いがするよ。舐めてみたいな」とでも言いたげなミィミィ。ふだんは人の口などを舐めない犬でも、赤ちゃんの口だけは舐めたりするので気をつけましょう。

 

というのは、人と動物の共通感染症に詳しい獣医師から、75%の犬の口腔内に常在するパスツレラ菌が原因で、パスツレラ症になったり副鼻腔炎などの病気が悪化した例、犬がかかった真菌症などが人にうつった例をいくつも聞いていたからです。

さらに、こんな気になるニュースも飛び込んできました。
今年6月の「ヘリコバクター学会」で、北里大学薬学部の中村正彦准教授らのグループが、ヘリコバクター・ハイルマニイと呼ばれる細菌が、人間の胃がんの原因になることを発表したのです。ハイルマニイは、主には犬や猫や豚から人間に感染すると考えられるそうです。感染リスクが上がるのは、ペットに口の周りを舐められたり、ペットが舐めたものを人間が口に入れたりすること。とくに子供は免疫が不完全なので、細菌に感染しやすいといわれます。

我が家でもありましたが、ふと気づいたら赤ちゃんが愛犬のおもちゃを口に入れてしまった……。なんてことが起きないように、愛犬のおもちゃやフードボウルなどはすぐに片付けるようにしたいですね。

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愛犬の興味がなさそうな赤ちゃん用のおもちゃならば出しておいても安心ですが、愛犬の唾液がつきそうなおもちゃの置きっぱなしは危険。共有したものは、こまめに洗濯したり消毒したりして使いましょう。

 

ちなみに我が家や友人のドッグトレーナーのところでは、親の目が届かないとき、赤ちゃんはベビーサークルに入れて遊ばせていました。愛犬を、赤ちゃんの誕生がきっかけでサークルに入れると、環境の変化でストレスを感じてしまいます。でも順応性の高い赤ちゃんならば、お気に入りのおもちゃに集中してしまえば、そこがサークル内だろうが笑顔で遊んでくれるので(笑)。リビングの一部などを、赤ちゃん用に仕切ってもよいでしょう。

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赤ちゃんはベビーサークルに、そして愛犬はストレスを感じさせないこれまでどおりの生活を。
これで、衛生面でも、愛犬を含めた家族みんなの精神面でもよい環境が整いました!

 

ペットが原因となる感染症に乳幼児がかからないように注意することは、重要です。
でも正直なところ、「愛犬を触るたびに手を洗ってから赤ちゃんと触れ合うなんて、毎回きちんとする気力と体力がない~」というのが子育て中の私の本音でした。

そんなとき、少しほっとできる研究結果を見つけたのでご紹介します。

生後1歳までに犬と生活していた子供は、アトピー性皮膚炎の発症リスクの減少が見られたというのです。(旧国立成育医療センターなどが広島市の約1万人の小学2年生の保護者にアンケートをした結果。2006年、日本アレルギー学会発表)

犬と暮らす家庭で育つ乳児は、呼吸器疾患や感染症にかかるリスクが減り、抗生物質を投与する回数も少なかったという調査結果もあります。(フィンランドのクオピオ大学病院による。2012年、米小児科専門誌発表)

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赤ちゃんは、犬との暮らしのなかで健康面でプラスの影響も受けているようです。

 

先述したとおり、最低限、愛犬の唾液が赤ちゃんの口に入らないように気をつけるべきですが、あまり神経質にならなくても、赤ちゃんはある程度の“ばい菌”にさらされることで“じょうぶ”になっていく部分もありそうです。

乳幼児が犬の散歩に一緒に行くと、日光を浴びることでビタミンDが十分に生成されたり、歩けるようになってからはたくさん運動ができたり……、ほかにも様々な要因で、犬との暮らしは乳幼児の健康促進に役立っているともいえるでしょう。

 

悲しいけれど、起こっている…愛犬が赤ちゃんを咬む事故

幸い私の身近なところでは、前回の記事で紹介したアドバイスなども実践していただくと、赤ちゃんと短期間で仲良くなれたようです。
「相変わらずほかの赤ちゃんには吠えるけど、ママと通じる匂いがあるのか(!?)、家族の一員だと理解するのか、私の子供にだけはやさしい」とか。

SNSやブログや動画サイトには、赤ちゃんと犬がとてもいい雰囲気で過ごしているシーンの数々が投稿されています。
けれども、犬のプロ同士の間では「けっこうな数の写真や動画には、犬がストレスを感じたときのサインが出ているよね。事故につながりそうな危険を感じる。犬にとって、予測不可能で急な動きをする乳幼児と接するときは緊張するから」という声もよく聞かれます。

151102_babydog5_lettercut赤ちゃんとの触れ合い時に愛犬にストレスサインが出ていないかを飼い主さんがよく見て、出ていたら赤ちゃんを愛犬から離してあげられるようにしたいですね。

 

ドッグトレーナーの友人によると、愛犬が赤ちゃんを咬む事故に関わったケースもあるといいます。
最悪なのは、お母さんが赤ちゃんを置いてトイレに行っている間に、愛犬が赤ちゃんを咬み殺していた例です。
よく耳にする例は、愛犬が食事中、フードボウルに近づいていった赤ちゃんが咬まれる事故。「私には、そんなことしたことないのに……」と嘆く飼い主さんも少なくありません。

自分の愛犬を信じたい気持ちは、私も同じです。
でも、感染症のリスクのところでも述べたとおり、やはり、私たち人間と犬は違う種の動物なのです。犬には犬のボディランゲージが存在し、それをまだ理解できない乳幼児との接触時には危険がつきものなのです。
その点を念頭に置いて、そして“犬の気持ち”も考えて、赤ちゃんの存在や行動が愛犬のストレスにならないように、生活環境や触れ合わせ方をしっかり管理してあげましょう。

今回は少しシリアスになってしまった部分もありますが、現実に目を向けて、困ったことがあればドッグトレーナーなどプロの手を借りながら、赤ちゃんと犬が仲良くなれるようにしていきたいですね。

次回は、赤ちゃん~3歳くらいまでの子供と犬が仲良く過ごせる生活の工夫点(お散歩の秘訣など)をご紹介したいと思います。

 

Writer&editor
臼井 京音(うすいきょうね)

KyoneUsuiドッグライター・写真家として、15年以上にわたり日本各地や世界の犬事情を取材。毎日新聞の連載コラム(2009年終了)や、AllAbout「犬の健康」(2009年終了)、現在は『AERA』、『愛犬の友』、『BUHI』など、様々な媒体で執筆活動を行う。オーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、2007年には、東京都中央区に「犬の幼稚園 Urban Paws」をオープン。犬の幸せを願うドッグトレーナーに支えられ、園長・家庭犬のしつけインストラクターとしても、飼い主さんに役立つ情報の発信に努めている。
自宅暗室で焼いたモノクロ写真は、ペットショップP2、ドッグリゾートWoof、ドッグサロンDogoldなどのインテリアにも使用。
東京都動物愛護推進員、東京都中央区の動物との共生推進員。

主な著書:『うみいぬ』『室内犬の気持ちがわかる本―上手な育て方としつけ方をアドバイス! 』
編集著書:
『最新版 愛犬の繁殖と育児百科』 『最新版 愛犬の病気百科』 『愛犬をケガや病気から守る本』

愛犬をケガや病気から守る本: 犬にも人にも優しい飼い方のメソッド

 

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