犬はさまざまな理由や感情から吠えるので、それぞれに合った対処法をとらないと吠えは直りません。今回は、他の人や犬に吠える「防衛吠え」と、飼い主さんに吠える「要求吠え」について考えてみましょう。
「防衛吠え」は、速やかに感情を切り替える
他の人や犬が苦手で、来客や散歩中のすれ違い時などに吠えてしまうのが「防衛吠え」。よくみられる吠えですが、間違った対処をしている飼い主さんが多いです。
例えば動物病院の待合室で、他の犬が苦手でワンワン吠えているケース。愛犬を撫でながら、「○○ちゃん、大丈夫よ~」と猫なで声でなだめている飼い主さんがいますが、これは最悪の対処法。吠えてマナーの悪い犬に対し、間接的に「いいコね」と言っているのと同じで、その犬のマナーをさらに悪化させてしまいます。
この場合は、まず犬の名前を呼んで「オスワリ」や「フセ」の指示を出し、自分にフォーカスさせて、犬の感情を速やかに切り替えます。でもちろんぶっつけ本番ではできませんから、日頃からのトレーニングが大切です。そのトレーニングができていなかったり、激しく吠える犬の場合は、「ジェントルリーダー」(ひっぱり癖や飛びつき、吠え癖に対応したしつけ用リード)の使用をおすすめします。これも事前に慣らしておくことが必要です。
防衛吠えのベースにある「社会化不足」
防衛吠えの根っこにある問題は「社会化不足」です。子犬のうちから、しつけ教室やパピーパーティなどで、これから屋外で遭遇するであろう刺激、人、犬に繰り返し接触させて慣れさせること。人に興味をもたせたり、犬は敵ではないことを教えていくことがたいへん重要です。社会化がきちんとできていれば、問題行動が出ることはほとんどありません。
吠えられた方にも、ダメージが残る
ところで、散歩中、もし自分の犬が他の犬に吠えられたら、その後、愛犬のフォローをしてあげていますか? ほとんどの飼い主さんが、愛犬が他の犬に吠えられることでダメージを受けるということをわかっていません。ケンカ腰の声を浴びせられたわけですから、気分がいいわけがありません。
そんなときは、「遊ぼうか?」などと声をかけて、愛犬の気持ちの切り替えをはかってください。吠えられたばかりに、それまで普通にできていた“すれ違い”ができなくなることもあります。いやな印象は一刻も早くいい感情で塗り替えることが大切です。相手に吠えられても愛犬が吠え返さないようでしたら、その行動を誉めてあげることも忘れないでください。
「要求吠え」は、無視する
愛犬が飼い主さんに向かって吠える場合、これはほとんどが「要求吠え」です。飼い主さんは「無視」して要求に応えないこと。吠えたから抱っこする、散歩する、ごはんをあげる…ということをしていると、どんどん吠えがひどくなってしまいます。
無視とは、見ない、触らない、しゃべらない。犬がごはんを要求して吠えたら、飼い主さんは背を向けて、知らんぷりして他の場所に行ってください。犬が吠えている間は放置して、吠えが止まってしばらくしてから、ごはんをあげます。吠えても要求は通らない、ごはんは飼い主さんの都合で与えられるということを学習させていきます。
ここで、飼い主さんに知っておいてほしいのは、無視をした直後は、一時的にムダ吠えは必ず増加するということです。今まで吠えれば要求が通っていたのに、急に通らなくなったため、10回吠えてだめなら20回吠えてみようと、エスカレートしていきます。ただ、ある時点で、どれだけ吠えても要求が通らないことを犬が理解したら、ストンと治まります。理解に要する時間は個体差が大きいので、早ければ数回でわかるし、遅ければ数週間かかることも。無視が効かない犬もいるので、その場合はアプローチの方法を変えなければいけません。
「長く引きずってしまった吠え」への対処
ムダ吠えは、問題が発生してから長期間経つほど、直しづらくなります。何年も引きずっている場合は、ジェントルリーダーやムダ吠え防止首輪など、道具を使うことが必要になります。ただし、吠えると超音波が出たり、いやなにおいが出る首輪など、犬にとって嫌悪刺激となる道具を使う場合は、1~2週間の短期間で直すことが必須。ダラダラ使っていると慣れて効果がなくなり、必ず失敗します。吠えている心理が「分理不安症」や「恐怖症」など不安が関与している場合は罰を使用することは逆効果になりますので、吠えている心理を正しく判断して適切な対処をしてください。
吠えが出やすい「犬種」もいる
吠えやすい、攻撃行動が出やすい犬種もたくさんいます。オオカミはワンワン吠えませんが、私たち人間が用途に合わせて、体を大きくしたり、小さくしたり、防衛本能を強く入れたり、執着心を強くしたりと改良して、400種以上の犬を作り出したわけです。活動レベルが高い犬、作業犬として作られた犬は吠える傾向が強く、今、日本で人気のダックス、チワワ、プードルはいずれもよく吠える犬種です。
とくにダックスは穴の中で作業をさせるので、穴の中で吠えて、犬がどこで作業しているのかハンターが分からないと、生き埋めになりかねません。命を守るために、「吠え」が強化された面もあると思います。逆にシーズーやバセンジーなどは吠えの少ない犬種。そうした犬種特性も知ったうえで、犬を選ぶことも大切ですね。
子犬のときから「予防」を心がけて
ダックスなどでは3カ月齢ぐらいから吠え始める犬もいますが、通常、吠えが問題化してくるのは5~6カ月齢を過ぎてから。パピーパーティで、「うちのコは吠えません」と自慢する飼い主さんもいますが、「吠えるのはこれからだから、予防していきましょうね」とお話ししています。
「予防」はとても大事です。例えばダックスなら、将来、吠えが出やすいので、もし今、電話やチャイムに吠えないのなら、ほめてあげましょう。また、散歩で人や犬とすれ違ったときに、吠えなかったり友好的だったりすれば、積極的にほめてあげてください。それが、将来、吠えを予防することにつながります。
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愛犬がムダ吠えをした時、自動的にその吠え声を感知し、愛犬の苦手なシトロネルの香りを鼻先めがけて「シュッ」とスプレー噴射します。愛犬はその苦手な香りと「シュッ」という大きなスプレー音、鼻先にかかるひんやり感に驚き、3つの相乗効果でムダ吠えを控えるようになります。
このような道具は犬にとって罰になりますので、できるだけ短い期間活用することが大切です。また道具にだけ頼らず、道具の効果があり吠えを我慢しているときは、ご家族が愛犬を誉める作業を同時にしていくことが大切です。
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