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犬の混合ワクチンは毎年必要?獣医師に聞きました!

注射をされるゴールデンレトリーバーの子犬
犬の混合ワクチンは、狂犬病予防注射と同じく毎年接種するのが当たり前のようになっています。ところが人では毎年接種しなければいけないワクチンはありませんよね。どうして犬は毎年なのでしょうか?砂金ではワクチンの副作用を心配したりする飼い主さんもいます。

今回は世界小動物獣医師会(WSAVA)の「ワクチネーションガイドライン」をもとに適正な接種をすすめている獣医師の栗田吾郎先生に、犬のワクチンについて、とことん聞いてきました!

<取材・監修>
栗田動物病院 栗田吾郎院長
栗田動物病院
院長 栗田吾郎 先生

茨城県古河市で予約制の診療を行う獣医師。適正なワクチネーションの普及に努めている。災害救助犬のチームの一員として被災地での活動も行っている。

 

犬のワクチン、どんな種類がある?

まずはワクチンについて知っておきたい情報を確認しましょう。世界小動物獣医師会(WSAVA)では科学的根拠に基づき、「ワクチネーションガイドライン」(以下、ガイドライン)を定期的に発表しています。その中で動物のワクチンを「コアワクチン」「ノンコアワクチン」の2種類に分けています。

コアワクチンはすべての犬が接種するべきワクチンで、3種類あります。ノンコアワクチンは地域や生活環境によってリスクがある病気を予防するためのワクチンで、レプトスピラ病や犬パラインフルエンザ感染症など数種類あります。これらを混ぜて「5種」「8種」「9種」などにしたワクチンのことを「混合ワクチン」といいます。

混合ワクチンとは別に、法律で定められた狂犬病予防注射(狂犬病ウイルスワクチン)があります。

【ワクチンの価格】
●混合ワクチン
種類によって値段が変わり、5,000~10,000円ほど。種類が多くなるほど値段が高くなる傾向があるようです。

●狂犬病予防注射
自治体によって変わるが、値段はおおよそ3,000円ほど。加えて狂犬病予防注射済票交付手数料が500円ほど必要。

狂犬病予防注射済証
ワクチンの注射済証(手前の黄色い用紙)は大切に保管を。狂犬病予防注射で交付された注射済票(奥の青色の標識)は、鑑札とともに犬に身に着けておくことが義務付けられている。

混合ワクチンで予防できる病気の種類を見ていきましょう。

すべての犬に必要な「コアワクチン」
コアワクチンは世界で発生している重篤な伝染病を予防するために、すべての犬が接種するべきワクチンです。

【予防できる病気】
●犬ジステンパーウイルス感染症
発生率※1は全国で12.2%。感染した動物の致命率※2は最大で50〜90%と高い。発熱、鼻水、せきなどの呼吸器症状や下痢などの消化器症状が段階を経て現れる。6歳以上になって脳炎を発症することもある。

●犬パルボウイルス感染症
発生率※1は全国で36.2%。感染した動物の致命率※2は最大で1〜5%以下だが、重症化すると死亡する確率が高くなる。衰弱や嘔吐や下痢などが見られる。

●犬アデノウイルス1型感染症(犬伝染性肝炎)
発生率※1は全国で5.5%。犬伝染性肝炎の原因になる。

※1 発生率:過去2年間に該当する感染症が確認された動物病院の割合(出典:伴侶動物ワクチン懇話会

診察台のジャックラッセルテリア

地域や生活環境による「ノンコアワクチン」
ノンコアワクチンは地域や生活環境によってリスクがある病気を予防するためのもので、数種類 あります。多くの動物病院では、地域の発病状況などを確認しながら打つワクチンの種類を飼い主さんにすすめています。

【予防できる病気】
レプトスピラ感染症
2つの型に分かれ、出血型は発熱や血便を起こす。黄疸型は黄疸や嘔吐を起こし、出血型より症状が重く、死亡する危険も高い。いくつかの血清型に分かれ、発熱、出血、黄疸、腎不全など様々な症状を引き起こし死亡する例も。人にも感染する危険がある。

レプトスピラ感染症を予防できるのは、5種、8種、9種の混合ワクチン 。レプトスピラウイルスには型がいくつかありますが、9種なら日本で発症する多くの型が予防できます。

●犬アデノウイルス2型感染症
発生率※1は全国で17.2%。せきや発熱などを起こすケンネルコフの原因になるウイルス。

●犬パラインフルエンザウイルス感染症
発生率※1は全国で35.3%。せきや発熱などを起こすケンネルコフの原因になるウイルス。

●そのほか、ボルデテラ・ブロンキセプチカ感染症、犬コロナウイルス感染症、レプトスピラ感染症の別種など

※1 発生率:過去2年間に該当する感染症が確認された動物病院の割合(出典:伴侶動物ワクチン懇話会

 

犬のワクチン、毎年必要?

犬の混合ワクチンの間隔は「毎年ではなく3年に1回でよい」というニュースを目にした方もいるでしょう。実際はどうなのでしょうか?WSAVAでは毎年接種する必要がないワクチンと、毎年接種するべきワクチンも紹介しています。

「コアワクチン」は3年間隔でも可
狂犬病を除く3種のコアワクチンは、WSAVAのガイドラインで「3年未満の間隔では追加接種しない」と示されています。ただし3年の間隔が4年になり5年になり…と開いてしまうのは危険なこともあるので、3年以上間隔をあける際には後述する抗体検査をして判断するのが良いしょう。コアワクチンに指定されている病気は、命に関わるような重大な症状を引き起こす危険があるためワクチンは適正な間隔で接種し、病気を予防することが重要です。

また、狂犬病予防注射は日本では法律で毎年の接種を義務付けているため、必ず接種しましょう。

狂犬病予防注射のお知らせ
犬の登録をしていると、毎年自治体から「狂犬病予防注射のお知らせ」が届く

「ノンコアワクチン」は地域による。間隔は要注意!
WSAVAのガイドラインでは、「必要と考えられる回数よりも多く接種しない」と示されています。レプトスピラ感染症は人にも感染することや1年で効果がなくなってしまうため、感染の危険がある地域では毎年の接種が必要です。すべてのワクチンが「3年に1回でよい」わけではないことがわかります。

ワクチンによって接種の回数や間隔を変えるのが基本です。でも「病気が心配だし何回目か忘れそう。全部まとめて打っておこう!」なんて思っていませんか?ワクチンは一時的とはいえ病気のウイルスに犬を感染させるので、身体に多少の負担がかかります。体質によっては副作用のリスクもあるので、必要なければ接種しないほうが良いのです。

 

ワクチン接種時の注意点や気になる副作用は?

ワクチンの重要性をわかっていても、副作用は心配ですよね。アナフィラキシーショックのような重大な副作用は接種してから15分以内に出ることが多いため、接種後は院内でしばらく安静にさせて様子を見ると安心です。時間が経ってから出る副作用に備えて午前中に接種しておけば、異変が起きたとしても動物病院の診療時間内に受診できます。

副作用が一番多く出るのは、2回目の接種のときです。事前に動物病院と相談し、万が一に備えておきましょう。ただし初回から10回目までの全ての接種でアナフィラキシーショックが起こっていなくても、11回目の接種でアナフィラキシーショックが出た例もあるため、何回目でも気をつけることが重要です。ワクチンによる副作用の現れ方や確率、注意点を知っておきましょう。

元気のなさそうな茶色のミニチュアダックスフンド

主な副作用の症状
2007年に日本獣医内科学アカデミーで発表されたデータでは、ワクチンを接種した犬の約200頭に1頭で副作用が出ると報告されています。副作用の種類についてアンケートを行ったところ、436頭から761件の回答が得られたことから、副作用が1種類ではなく複数でた犬が多数いることがわかります。いずれも家庭で対処が難しい症状なので、異変に気づいたらすぐに動物病院へ!

犬のワクチンの副作用で多く見られる症状

副作用で亡くなった犬は、89,000頭中3頭です。約3万頭に1頭が亡くなっていることに。統計の中から犬種別や体重別で確認すると、副作用や重症のアナフィラキシーのリスクの高さに違いがあることがわかりました。

犬種別では全体的に副作用が多かったのはミニチュア・ダックスフンド、アナフィラキシーが多かったのはミニチュア・シュナウザーやジャック・ラッセル・テリアでした。体重別では4〜5kgの小型犬に多い傾向がありました。また、8歳以上の高齢犬や持病のある犬も注意が必要です。

副作用が心配だからといってワクチンを打たないと、死亡する可能性のある病気に感染する危険があります。室内飼育の犬であっても、動物病院への通院や災害時の避難を考えたらリスクは変わりません。ワクチンを打つリスクと打たないリスクを比較して考えましょう。

栗田動物病院 栗田吾郎先生

散歩やシャンプーは接種後すぐにしてもOK?
ワクチンを接種するために、散歩がてら動物病院に歩いて行くのは問題ありません。帰りも具合悪そうな様子が見られなければ、普段の散歩と同じくらいの時間を歩いて帰ってもOKです。とはいえ、はっきりした症状が出なくてもだるさなどの不調を感じている可能性があるため、当日や翌日は運動を控えて安静に過ごさせたいですね。特に体力が落ちる真夏は3日ほど安静にさせましょう。

犬を疲れさせるシャンプーやトリミングなども3日程度は避けたほうが安心。フィラリアなどの寄生虫の駆除薬もワクチン接種の前後3日間は控えたほうが無難です。接種後に異常がなければ4日目以降に行いましょう。

シャンプー中の柴犬

 

「抗体検査」で必要以上の接種を避ける

ワクチンの定期的な接種で病気を予防することは大切ですが、体内に免疫が保たれていれば、何回も接種して犬に負担をかける必要はありません。免疫の状態は「抗体検査」で調べられます。動物病院で血液を採取した後、外部のセンターで検査します。近年は動物病院内で抗体を検査できる「ワクチチェック」が開発され、東京や大阪などの都市部を中心に全国に広まっています。いずれの抗体検査も費用は動物病院によって変わりますが、ワクチンの料金と同じくらいです。

抗体検査は、ウイルスへの抗体が十分にあるか否かを調べる検査です。接種してから1年後を目安に検査を行い、十分な抗体があれば免疫が維持できているので追加で接種する必要なし!十分な抗体がなければブースターとして追加の接種を受けましょう。

※ブースター効果:体内で1度作られた免疫機能が、再度抗原に接触することによって、さらに免疫機能が高まること。

 

犬の抗体価検査結果
後日、検査機関から届いた抗体検査の報告書(動物病院や検査機関によって異なります)

注意しなければいけないのは、免疫や抗体には個体差があること!ガイドラインで「3年以上接種しない」と示されているコアワクチンですが、4~5%の犬は「抗体を3年間維持できない」というデータがあります。当てはまる犬はコアワクチンも翌年接種する場合があります。その一方「7年以上維持できた」という犬も。だからこそ抗体検査を行い、愛犬の免疫の状態を知ることが重要ですね。

 

年代別のワクチンの接種時期や回数は?

ワクチンの種類、抗体検査、接種の注意点…などを考えると、だんだんわからなくなってきてしまいますよね。ここではWSAVAのガイドラインをもとに、年代別のワクチンの接種方法(ワクチネーション)を紹介しましょう。いずれの場合も狂犬病予防注射を行なった後、1週間の間隔を開けるのが基本です。

ラブラドールレトリーバーの子犬

子犬(6週齢~1歳齢)
子犬は飼い主さんのところへ来る月齢によってワクチンの接種方法は変わりますが、推奨時期を知っておきましょう。

1回目:6~8週齢
2回目:1回目の2~4週間後
3回目:16週齢以降
4回目:6ヵ月齢〜1歳齢

3回目が終わるまでは感染症を防ぐために、動物病院では草むらなどの環境や犬との接触を避けるように指導します。16週齢までは子犬が物事に触れて適応していく「社会化期」にあたる時期なので、抱き上げたりスリングなどに入れたりして屋外へ出かけることも大切です。

犬の混合ワクチン接種証明書
混合ワクチンの接種証明書は、ペットホテルやトリミング、ドッグランなどの施設利用時に求められることもあるので大切に保管を。

成犬(2歳~)
4回目から1年後に抗体検査を受けて、免疫が維持できていればコアワクチンは3年以上の間隔で接種していきます。レプトスピラ感染症のリスクが高い地域は、動物病院からノンコアワクチンの毎年の接種をすすめられます。

老犬(8歳~)
抗体検査を受けるのは成犬と同じですが、高齢犬は免疫が低下して副作用のリスクが高くなります。動物病院に相談してワクチンの接種をやめるのも一案。

※狂犬病予防注射について
現在の狂犬病予防液の添付文書には絶対的禁忌(ワクチンを接種してはならない場合)と相対的禁忌(接種の適否を獣医師が慎重に判断する場合)が記載されています。つまり、獣医師の判断により接種が不可能と考えられた場合は、狂犬病ワクチンであっても特段の合理的理由がない限り接種ができないと考えられる例もあるのです。このような場合は、管轄する地方公共団体へ獣医師が発行した「狂犬病予防注射猶予証明書」を提示することで、接種を猶予される場合もあります。ただし、これは法律に示されていることではなく、その扱いは各地方公共団体によって少しずつ異なります。詳しくはかかりつけの獣医師や地方公共団体の窓口などにご相談ください。

高齢のミニチュアダックスフンド
ドッグランやペットホテルなどの施設では、利用前に1年以内のワクチン接種証明書の提示を求めるところもたくさんあります。抗体検査で十分な抗体があるという証明書があれば利用OKの施設もあるので、事前に確認しましょう。

※参考資料:世界小動物獣医師会「ワクチネーションガイドライン」

 

犬に負担の少ないワクチン接種とは?

ここで紹介したワクチンのガイドラインはあくまでも目安。理想はそれぞれの犬に合わせた「テーラーメイドのワクチン接種」。ところが日本のワクチンは複数のウイルスに対応したもので、1種ずつ選ぶことができません。今後変わっていくことを期待したいですね。

ワクチンの接種方法はまだ過渡期で、獣医師によってさまざまな考え方があります。WSAVAのガイドラインを踏まえて抗体検査を行い、かかりつけの動物病院と相談しながら愛犬に負担のない方法でワクチンを接種しましょう!

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