犬の首輪・胴輪・リードの選び方。犬目線でチェックしてますか?|行動学の専門獣医師が解説

犬は、外ではノーリードで歩かせてはいけないというルールがあるので、首輪や胴輪(ハーネス)の着用は必須。最近は、さまざまなタイプが登場し、飼い主さんも選ぶのに迷うかもしれませんね。今回は、首輪・胴輪・リードの選び方についてのアドバイスです。
 

首輪がいいの?胴輪がいいの?

●首輪と胴輪の使い分け
私が行うパピークラスの飼い主さんには、必ず首輪とリードの持参をお願いしています。トレーニングのときは、胴輪は犬が引っ張りやすく、コントロールしづらいからです。ただし、気管の弱い子、首にプレッシャー(圧力)がかかるとえずきやすい子、ブルテリアのように首にくびれがなく首輪が抜けやすい子などは、胴輪でもOKです。

●胴輪の向き・不向き
胴輪は力が出やすくなるので、大型犬には少し厳しいかもしれません。もっともシニアであれば大丈夫。うちの子もずっと首輪でしたが、10歳を超えてからは胴輪にしています。年をとれば筋肉も落ちて、あまり引っ張らなくなるので、年齢によって切り替えてもいいと思います。

フレンチブルドッグやボストンテリアなど首が太い犬種は、首輪だと抜けやすいので、すっぽ抜け防止策としては胴輪がおすすめです。

 

「首輪」の選び方のポイント

首輪でチェックしたいポイントは、
「太さ(幅)が合っているか」
「長さがきつすぎたり緩すぎたりしていないか」
「素材が硬くて首にフィットせず、犬にとって苦痛になっていないか」
など。

●太さ
首輪が細すぎて、食い込んでしまっている子を見かけます。目安として、小型犬だと幅1~1.5cm、10kg以上の中型犬なら2cm、1cm以下の細い首輪は、小型犬の子犬やチワワ、猫用のサイズになります。例えば1.5cmは、トイプードルや子犬の柴犬ならOKですが、成犬の柴犬には細すぎます。

例えばイタリアン・グレーハウンドのように首が細くてきゃしゃな子は、細い首輪だと食い込みやすいので、少し太めで厚みがあってクッション性の高いものを…など、犬種特性への配慮も大切です。
太い首輪をつけたイタリアングレイハウンド

●サイズ
首輪のサイズは、着けたときに指2〜3本が入る程度で。指1本ではきつすぎます。子犬の場合は成長とともにどんどん首が太くなるので、サイズの見直しを忘れずに。

●素材やデザイン
素材は柔らかくて、犬の首に負担がかからないこと。ナイロン製のものがおすすめです。革製はオシャレだし丈夫だからと選ぶ人が多いのですが、柔らかくなるまで時間がかかるし、洗えないし、臭くなる。ナイロン製ならジャブジャブ洗えるのも魅力です。

個性的なデザインも増えています。例えばブルドッグなど少しいかつい系の犬に人気なのが、革製のベルトにメタルのトゲトゲ(スタッズ)が付いた首輪。トレーニング性はないし、重くて犬に優しくもない。写真撮影のときなどにオシャレとして楽しむのはいいですが、毎日レギュラーで使うものではないと思います。

 

「胴輪」の選び方のポイント

胴輪でチェックしたいポイントは胴輪は、体型によってはすごく抜けやすいので、「抜けにくい」ことが第一条件。引っ張る子は、細めの胴輪だと食い込むので、「ある程度太くて、クッション性がある」ものがいいです。犬が歩くのを見ていて、「歩きづらそうだったり、擦れて痛そうだったりしないか」も要チェック。
形も様々なものがあり、
「胴輪とリードの一体型」
「メガネ型」
「洋服型」
「H型」
などがあります。

私のおすすめは、ナイロン製で、太くてクッション性もよく、首にテンション(緊張)がかからないタイプです。

●胴輪とリードの一体型
胴輪とリードが一体型で分離できないタイプがあります。トレーニングでは、犬同士で遊ばせるとき、何かあればすぐにつかまえられるように首輪や胴輪をつけておきたいのですが、一体型だとリードを外すと全部裸になってしまうのが問題です。

●メガネ型
細いメガネ型のタイプは、体型によってフィットしにくいのが難点。また細いと擦れてしまうことがあるので、引っ張る子には不向きです。
メガネ型ハーネスをつけたチワワ

●洋服型
最近は、洋服にそのままリードを着けたような胴輪も出ています。洋服と胴輪を着けるとかさばるので、いっそ一緒にしたほうがオシャレという発想なのかもしれません。

しかし、こうした体を覆う面積の広い胴輪は、動きをじゃまする可能性も。作る側は買ってもらいたいから、飼い主さんが喜びそうなファッション重視の方向に行きがちですが、そうすると機能が落ちる。犬具は、あくまで犬目線で選んでください。

洋服型のハーネスをつけたプードル

●H型
猫用によく使われているのは、H型と呼ばれるタイプ。2つの輪で首と胴を固定するので、すっぽ抜けしづらく実用的です。

H型ハーネスをつけたプードル

 

「トレーニング用首輪」とは?

ハーフチェーン、チョークチェーン、スパイクチェーンなどは、犬の引っ張り癖を直すのに使われるトレーニング用の首輪。飼い主さん自身が選ぶというより、訓練士さんから指示されるケースが多いと思います。

ハーフチェーン、チョークチェーン、スパイクチェーン

私は大型犬のトレーニングでハーフチェーンをたまに使うことがありますが、チョークチェーンとスパイクチェーンは使いません。うまく使わないと犬に伝わらないし、使い方を誤れば虐待になりかねません。ハーフチェーンは首が完全に締まることはありませんが、チョークチェーンは引っ張るほどにどんどん締まって、犬が窒息して失神することも。

比較的使いやすいハーフチェーンでも、耳元のピシっという音で怖がる子もいるので、繊細な子には不向きです。私は小型犬には絶対使いません。

 

室内で首輪着用は必要か?

震災があって、一時期、首輪とネームタグを常時着けておかなければという意識が高まったんですが、今はもう外している人が多いのではないでしょうか。マイクロチップをつけていても、中で壊れたり部位がずれたりすることもあるし、スキャンする道具も全動物病院に行き渡っているわけでもないので、犬が飛び出す可能性のある住居であれば、着けていたほうが安全かもしれません。

しかし、首輪生活で心配なのは、どこかで首輪が引っかかってケガをしたり、パニックになってトラウマが残ったりすること。お留守番中に首輪が引っかかって亡くなったケースもあります。首輪の常時着用にはメリットとデメリットがあるので、どちらを取るかです。

猫の場合は、高所に上るなど、犬とは異なる動きをするので、首輪が引っかかる可能性はより高くなります。とはいえ、脱走の心配は猫のほうが大きい。もし猫に首輪を着けるなら、引っかかったときに外れやすい「セーフティ」首輪を選びましょう。

猫のセーフティ首輪
ある程度の強い力が加わると、バックルがパチンと外れるタイプ。もしもの時にも安心です。

 

「リード」の選び方のポイント

首輪や胴輪と同様に、リードに様々な種類があります。用途に応じて使い分けましょう。

●スタンダードリード
普通のリードは、1〜1.5mぐらいの長さのものが多いようです。握ったときに、しっかり手の中に入り込む平たいものがおすすめ。筒状に編み込んだタイプは手にフィットしにくいです。持つときは親指にリードの輪を掛けてそのまま握り込みます。輪に手首を通すのはNG。大型犬だと引っ張られたときに飼い主さんが手首を折りかねません。
リードの持ち方

犬を横につけて座らせたときに、リードが「し」の字にたるむぐらいがちょうどいい長さです。

●フレキシブル(伸縮)リード
多くの人が持っているフレキシブルリードですが、私はおすすめしていません。手にフィットせず、コントロールしづらいことが一番の理由です。いろんな事故の話も耳にしています。夜、フレキシブルリードを長く伸ばして散歩していたら、自転車が間を横切り、その衝撃で首輪が外れ、犬が道路に飛び出して交通事故で亡くなった。フレキシブルリードは細いひも状のものが多いので、とくに夜間だと見えづらいです。

フレキシブルリードをつけた柴犬

またカチッとロックできていないと、犬が走り出したらシュルシュルと勝手にリードが伸びていき、向こうからやってきた他の犬に咬みついた。あるいは、あわててリード部分をつかんで止めようとした飼い主さんが手にケガをした…など。使いづらいし、危険でもあります。

●ロングリード
犬を自由に遊ばせたいなら、ロングリードで。太さがあり、着けているのがよく見えるので安全です。10m以上になると手繰るのが大変なので、5mぐらいまでのものがいいでしょう。

ロングリードをつけたポメラニアン

●ショートリード
ショートリードは40~50㎝程度の長さのリードで、私はアジリティの練習のときに使っていました。犬がまだ未熟で、フリーにしたとき、危ないなと思ったらすぐにつかまえられるようにという理由から。

訓練士さんのなかには、家の中でのしつけに利用する人もいます。そういう特殊な環境以外では、リードは長いもののほうが使い勝手がいいと思います。ただ、大型犬でリードが長いと手に余るというときは、そのままスッと持てる便利さはあるかもしれません。

●二頭引きリード
二頭引きは使いこなすのがむずかしい。歩く速度が違うから遅い子は引きずられるし、異なる動きをするから絡まってしまう。基本は別々の首輪とリードだと思います。一緒にお散歩に行くのは、それぞれがきちんと歩けることが前提。トレーニングの入っていない子は、そもそも二頭引きは無理です。

 
首輪、胴輪、リードは様々な種類があります。愛犬の性格や個性を踏まえて、適切なものを選ぶようにしてください。

石井 香絵

獣医師、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表、AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員 麻布大学獣医学部を卒業し動物病院で一般診療を行った後、動物行動学、行動治療を学ぶために渡米。ニューヨーク州にあるコーネル大学獣医学部の行動治療専門のクリニックに2年間所属し帰国。現在はワンちゃん、ネコちゃんの問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・講演活動など幅広く活躍。2013年からは、アニマル・クリスタルヒーリングのファシリテーターの養成を始める。愛…

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