遺伝子検査で愛犬の性格がわかる!DNA行動特性診断とは?

犬の「遺伝子検査」や「DNA検査」を行う団体や企業が増え、性格がわかる「DNA行動特性診断」まで登場!生まれ持ったさまざまな特性がわかるので、盲導犬などの作業犬候補は子犬の頃に検査を行い、適性のあるタイプを育成してきました。

家庭犬も子犬のうちに性格がわかれば暮らし方やトレーニングにも役立ちます。愛犬のサウザーが生後5カ月頃に受けた診断結果と共に紹介しますね。

 

遺伝子で性格が決まるってホント?

飼い主さんは、犬種によって性格が違うことを実感しているのではないでしょうか。トイ・プードルはフレンドリーだけどちょっと怖がり、柴犬は慎重で人見知り、ラブラドール・レトリーバーはおおらかで作業好き…など。さまざまな研究機関でも同じ犬種は似たような性格(行動特性)を持つと考えられてきました。

ところが最近の研究により、2つの遺伝子(ドーパミン受容体)の組み合わせによって性格に違いが現れることがわかってきたんです。2014年に設立された一般社団法人JAPAN DOG DNA CENTER(以下JDDC)では、9パターンに分けています。

我が家では、初代のジュウザに続き2代目のサウザーも甲斐犬です。犬種は同じなので似ているところもありますが、もちろん違うところもあります。漠然と「個体差」といわれていた違いが遺伝子で明らかになりつつあるんですね。学生の頃の生物の授業を思い出してワクワクします。

甲斐犬サウザーのDNA行動特性解析結果
イントロン2(SとL)とエリクソン1(PとQ)の組み合わせによって9パターンに分かれる。サウザーは「L/L×Q/Qタイプ」(表の右下の星印)。詳しくは後ほど!
<行動特性のタイプ>

●S/S×P/Pタイプ
おとなしく服従心が強い。訓練しやすく盲導犬や介助犬向き。

●S/S×P/Qタイプ
穏やかで社交的、集中力も高い。盲導犬などの作業犬に多い型。

●S/S×Q/Qタイプ
イタズラ好きな面もあるがおだやかで安定。マイペース。

●L/S×P/Pタイプ
とても社交的で優しく穏やか。遊び好きで服従心もある。

●L/S×P/Qタイプ
社会性、服従心、他者への反応などのバランスがよく安定。

●L/S×Q/Qタイプ
人懐こく服従心もあり、比較的しつけがしやすい。

●L/L×P/Pタイプ
適度な社交性と服従心を持ち、活発で感受性豊か。

●L/L×P/Qタイプ
機敏で遊び好き。テリトリー意識が高く番犬もできる。

●L/L×Q/Qタイプ
他人に慣れにくく他犬にも敏感。テリトリー意識の高い番犬。

 

検査は簡単!口内を綿棒でこするだけ

家庭犬でも簡単に検査を受けられます。まずはJDDCや提携している企業から、検査キットを取り寄せます。到着まではおおよそ1週間前後。届いた封筒の中には綿棒のようなものと保存容器、「検体識別番号」のシールなどが入っています。愛犬の口の中を綿棒でぐりぐりとこすって粘膜を採取し、保存容器に入れてJDDCや企業に返送すると、2〜3週間で結果が郵送されてきます。

JDDCでは検体識別番号で管理されているらしく、結果の用紙に犬の名前は書かれていません。控えの検体識別番号のシールは届くまで保管しておき、結果が届いたら犬種名などと合わせて確認したほうがいいですね。

犬のDNA行動特性診断のために口腔内の粘膜を綿棒で採取
検査キットの撮影を忘れたので綿棒で代用。ほおの内側あたりをこすって粘膜を採取する。

 

検査でわかるのは人への関心度や集中力など

JDDCの検査でわかる性格に関する情報は6項目。「人への関心度」「防衛本能」「集中力」「服従心」「食物・臭いへの執着心」「他犬への関心度」が10段階で示され、数字が大きいほどその傾向が強くなります。さらにアジリティーや有用犬(警察犬などの作業犬)の適性までわかるんです!これらの特性は良し悪しではなく、向き不向きですね。

サウザーが分類された「L/L×Q/Qタイプ」は、「恥ずかしがり屋で番犬タイプ」という傾向があるそうです。6項目の説明も「これぞ日本犬」という特性がちらりほらりと見受けられました。結果を紹介しましょう!

<サウザーの検査結果>

恥ずかしがり屋ですが、テリトリー意識が強く、番犬タイプとしても活躍できる遺伝子多型です。

●人への関心度
人間に対して、恥ずかしがり屋の一面もありますが、飼い主が気を付けながら、子犬の時から慣らしてあげると良いでしょう。

●防衛本能
防衛本能が高く、テリトリー意識が強い個体です。知らない人間に吠えることもありますが、番犬タイプの性質を持っている個体です。

●集中力
気が散らないようにしつけ、訓練することで、高い集中力を発揮し、沢山のことを覚えられる個体です。

●服従心
適度な服従心を持ち合わせており、人の動きに過敏になりすぎることはありません。ゆったりとした性質をもっています。

●食物・臭いへの執着心
与えすぎると食べ過ぎてしまう性質を持っています。ご飯は適量を与え、おやつなどはご褒美の際に与えることで、食べ過ぎ防止になります。

●他犬への関心度
他の犬に対して、敏感な性質を持っています。しつけや訓練を計画的に行うことで、他の犬とほどよい関係を築けるでしょう。

 
サウザーの行動特性結果※実際はこのような用紙で届きます。

ただしこの結果を受け取った生後6カ月頃は、「ちょっと違うかも?」と思う説明もありました。

例えば「恥ずかしがり屋で番犬タイプ」のはずですが、実はフレンドリーなほう。トレーニングでは人への跳びつきを直すのが課題というくらいです。生後2カ月で迎えてすぐに社会化を始めたので、シャイなところや警戒心が強く出ていなかったようです。「フレンドリーな家庭犬タイプに育っている」と安心していました。生後6カ月頃は、ですが…。

あとは「食物・臭いへの執着心」がMAXに高い結果でしたが、子犬の頃から少食と食ムラに苦労したことを考えると、やはり違うように思いました。繰り返しますが、生後6カ月頃は、ですが…。

甲斐犬サウザーの行動特性診断結果
サウザーはアジリティーや警察犬には向いていないようだ。運動能力は高いはずだけど、マイペースだからか?

 

生まれ持った長所や短所をしつけに生かす

そして1歳をすぎた現在のサウザーは…「ちょっと違うかも?」と思っていた特性が、ちょっとずつ「正しいかも?」に変わってきています。成長とともに自我が芽生え、素質がムクムクと目立ってきたようです。

例えば、作業服や制服を着ている方が手を伸ばすと後ずさりするように。子犬の頃から警備員の方たちにあいさつさせてもらっていたんですが、社会化が足りなかったかな…?吠えたり逃げたりするわけではないものの、他の服装の方と同じように作業服や制服の方にも慣れておきたい。例えば災害時、救援や復興などで作業服を着る方と会う機会があるはずです。
食欲も旺盛になってきて、ごはんをガツガツと完食するようになって感激!フードやオヤツがしっかりごほうびの役目を果たすようになってきました。

検査結果には、タイプに合わせた暮らし方のアドバイスも記載されていました。こちらも参考までに紹介しますね。

<サウザー(L/L×Q/Qタイプ)の暮らしの注意>

恥ずかしがり屋ですが、テリトリー意識が強く、番犬タイプとしても活躍できる遺伝子多型です。

●わんポイントアドバイス1
食べ物への関心度が非常に強く、集中力も高い、しつけや訓練のしやすいワンちゃんです。
しつけや訓練の際のご褒美は少量のおやつを与えたり、名前を呼んで褒めてあげましょう。誉め言葉も統一するとワンちゃんも理解しやすく効果的です。

●わんポイントアドバイス2
ワンちゃんにとって遊びは心の栄養です。信頼関係を築き、うまくしつけるコツも遊びの中に含まれています。
おもちゃは与えっぱなしにするとワンちゃんは早く飽きてしまうので、日替わりで別のおもちゃを出したりしましょう。

●食事メモ
よくある飼い主悩みでもある、食ムラがなく、与えた食事には喜んで食事をするワンちゃんです。食べ過ぎてしまうこともあるので、適量を守りましょう。

●しつけメモ
恥ずかしがり屋でマイペースです。しつけや訓練は短時間に集中させて行うことをお勧めします。出来たら褒めることを繰り返してください。

 

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検査結果を見れば、生まれ持った長所や短所(注意が必要なこと)がわかるので育成やしつけに生かせる。PANDPANDを運営している株式会社ORPではドッグトレーナー探しをサポート。

 

氏より育ち。結果と性格が違うことも!

遺伝子検査による診断結果は信頼できると思いますが、「氏より育ち」ということわざもあります。飼い主さんとの暮らしやしつけで、長所を伸ばしたり短所をほどよく抑えたりできるはずです。

サウザーは「防衛本能」がMAXでしたが、今のところ場所や物を守ることはありません。「ちょうだい」という指示を教え、取り上げて終わりにしない習慣にしていたからかな?でもまだ1歳なので、ここで安心してやめると「1歳までは良い子だったのに…」と後悔しそう。検査結果を意識してこれからも続けたいと思います。

芝生でこっちを向いて佇む甲斐犬
得意分野ではなくてもトレーニング次第で力を発揮できるはず。犬の個性に応じて育てることが大切では?

犬の性格に関する研究はこれからもどんどん発展していくことでしょう。冒頭に挙げた盲導犬の適性診断だけでなく、柴犬の攻撃的に見える行動や尾追い行動(常同障害)に関する遺伝子も明らかになりつつあります。
健全な犬を育成するために、遺伝子検査が大いに役立つ日が来るかも。「へぇ、おもしろい」だけで終わらない遺伝子検査の可能性に期待です!

金子志織

編集&ライター、愛玩動物飼養管理士1級、防災士、ヒトと動物の関係学会会員、いけばな草月流師範 前職はレコード会社でミュージシャンのファンクラブ運営を担当。そのときに思い立って甲斐犬を迎える。初めての子犬の世話に奮闘するうちに動物への興味が湧き、ペット雑誌や書籍を発行する出版社に転職。その後、フリーランスのライター・編集者として独立。飼い主さんと動物たちの暮らしに役立つしつけや防災の記事から、犬のウンチングスタイルなど雑学の記事まで作成。現在も犬と猫を中心に、ペット関連のさまざまな雑誌、書籍、We…

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