愛犬を皮膚病から守る第一歩。正しいシャンプーとは?|皮膚専門の獣医師が解説

梅雨が始まると、ワンちゃん達の皮膚病は一気に増えてきます。皆さんの愛犬も夏の時期になると、皮膚病にかかってしまうなんて事はありませんか!?なぜ、夏場になると皮膚病になってしまうのか解明していきましょう。
 

高温多湿の環境が皮膚に悪影響を及ぼす

ワンちゃんの皮膚には皮脂腺といった皮脂を作る分泌腺が豊富に存在し、皮膚の保護や保湿の働きをしています。犬種や皮膚の状態にもよりますが、皮脂と湿気が混ざり合うと肌はベタベタな状態になってしまいます。この状態を放置すると、皮膚常在菌であるブドウ球菌やマラセチアが過剰に増殖して、皮膚炎を招いてしまいます。日本の梅雨時期は湿度が非常に高くなるので、ワンちゃん達の皮膚はすぐにベタついてしまい、皮膚感染症が多くなります。

皮膚病の犬
ベタつきが原因によるマラセチア性皮膚炎

また、シーズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどの犬種は、生まれつきベタつきやすい体質を持っていますので、夏場は特に注意が必要です。

何かを見つめるアメリカンコッカースパニエル
 

夏場は週1回~2週に1回のシャンプーを!!

もし、あなたが夏場に何日間も頭を洗わずにいたら、どのような状態になるかは簡単に想像つきますよね!?べたつき、フケ、痒みがでてくると思います。

ワンちゃんは発汗する為のエックリン腺がないので、ヒトほどすぐにべたつく訳ではないですが、何週間も放置していれば、肌は徐々にベタベタしてきます。余分な皮脂やフケがベタベタの原因になり、それがブドウ球菌やマラセチアのような常在菌の増殖を招き、皮膚炎を引き起こします。皮膚炎が起こるとターンオーバー(皮膚の生まれ変わり)が短縮され余分な皮脂が更に分泌され、ベタつきが悪化し皮膚トラブルの悪循環が生じてしまいます。

痒がる柴犬

このような皮膚の状態を整えるのが、シャンプーの役割です。冬場は月1回でも良いですが、夏場は週1回〜2週に1回位の頻度をお勧めします。シャンプー剤の種類には抗菌シャンプー、角質溶解シャンプー、保湿シャンプーなどがあるので、獣医さんと相談しながら皮膚の状態に適したシャンプー剤を選ぶと良いでしょう。せっかくシャンプーしても、皮膚に適さないシャンプーで悪化してしまうケースもあるため、どのようなシャンプー剤を使用するかも重要です。
 

ゴシゴシ洗い、熱いお湯、すすぎ残しは、シャンプーの3大NG

「どのようにシャンプーしていますか?」と聞くと「ゴシゴシとしっかり洗ってます。」と回答する方が多いです。この方法は大きな間違いです。なかなか病院ではシャンプーの方法までは教えてくれないので、今回はシャンプーの方法をしっかりと覚えましょう。

まず知って欲しいことは、ワンちゃんの肌は薄いということ。肌は角質層と言って、角化細胞が整列して層状になっています。ヒトの角質層は10〜15層あるのに対して、ワンちゃんは2〜3層しかありません。ゴシゴシ洗ってしまうと、肌が簡単に傷ついてしまうのは理解できますよね。優しいシャンプーを心掛けましょう!!ヒトと犬の皮膚構造の違いの図

1.30℃以下の水で肌をよく潤す(目安は5分間)

角質層をしっかり潤すのが目的です。熱いお湯は絶対にダメ。理想は30℃以下(温水プールくらいの水温)でしっかりと皮膚と被毛を濡らしましょう。
※ 冬場などは多少水温を上げても構いません。

2.泡立てたシャンプー剤でマッサージするように洗う(目安は10分間)

泡立ちネットなどを使用すると、簡単にホイップ状の泡が作れます。この泡で包み込むように、マッサージしながら洗ってあげましょう。決して指を立ててゴシゴシ洗わないようにしてください。汚れがひどい場合は、下洗いシャンプーをすると良いでしょう。シャンプー剤を泡立てることでしっかりと汚れを浮かして洗浄力が増すだけでなく、薬用成分が皮膚に浸透しやすくなります。

シャンプーするトイプードル

3.30℃以下の水でしっかりとすすぐ(目安は5分間)

余分な成分をしっかりとすすぎましょう。シャンプー剤などが残ってしまうと、皮膚に刺激が加わってしまうこともあります。

4.保湿剤やコンディショナーで仕上げ

シャンプー後に皮膚が弱い子は保湿剤、毛のもつれが気になる子はコンディショナーを使用してあげてください。保湿剤の成分も重要でセラミドやリピジュアといった保湿成分が入っているものは、保湿効果が高いと言われています。このように仕上げの一手間をかけることで、シャンプーの効果が一段と引き立ちます。

5.しっかりとドライをしましょう

一番大変なポイントかもしれませんね。まずはタオルでしっかりと水気を取りましょう。ここを怠るとその後のドライヤーが大変になってきます。ドライヤーで皮膚が熱くなりすぎないように気をつけてください。温度調節できるドライヤーなどがあれば、温風を使用すると良いでしょう。またコームやスリッカーなどを使用するとドライがスピードアップします。

ブラッシング中の柴犬

飼い主様からの質問で「ワンちゃんってそんなにシャンプーしないほうがいいでしょ?」と聞かれることが多くあります。答えは『No!!』です。シャンプーはしてあげましょう。
シャンプー剤の種類やシャンプーの方法さえしっかり守っていただければ、シャンプーは皮膚の健康を保つ上で重要なケアになります。これからの梅雨時期は、皮膚トラブルが非常に増えてくる季節になります。シャンプーをすることで、愛犬の皮膚を守ってあげましょう。

もしシャンプーに不安を感じている方はトリミングサロンなどのプロに任せるのも一つだと思います。
hiff café tamagawa×pet skin clinicではトリミングサロンも併設しております。当サロンでは、ペット業界では国内初のマイクロバブルの1000分の1のナノバブル炭酸泉を使用したスキンケアシャンプーを行っています。またアーユルヴェーダのハーブパックやシルク泡パックなどの各種オプションメニューもとりそろえております。ワンちゃんの皮膚にお困りの方や、スキンケアにご興味ある方は、是非ご利用ください。

ナノバブル発生装置と泥パック中の犬
ナノバブル炭酸泉の装置と泥パック中のワンちゃん
小林真也

獣医師、皮膚・耳の専門病院「hiff cafe tamagawa」主宰、日本獣医皮膚科学会・日本獣医がん学会所属 2005年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業後、埼玉県内の動物病院で勤務。北里大学附属動物病院で2年間研修医として勤務し、現在はウッディ動物病院(寒川町)と川畑動物病院(横須賀市)で 皮膚科を中心に診療する傍ら、2016年10月に、東京農工大学皮膚科研修医で学んだ知識を生かし、東京都大田区田園調布に皮膚・耳の専門病院として「hiff cafe tamagawa」を設立。 ▶hiff…

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