シニア犬が健康診断「わんドック」初体験!12歳半の愛犬の健康状態は…?

愛犬のリンリンは12歳半なので、人間に換算すると60代半ば。なんだか最近、歳をとってきたなぁ……と感じるポイントも多くなり、特に大病はしていませんが、健康状態が心配になってきました。病気は早期発見と早期治療が大切です。
そこで、全国およそ1200の動物病院からなる TeamHOPE による、2016年から始まった 健康診断パックの受診を決意。「これだけ受けておけば安心!」という健診メニューがセットになったものです。また、王禅寺ペットクリニックでは血液検査をIDEXX(アイデックス)という機関に依頼しているそうで、腎機能(SDMA)と甲状腺ホルモンも含む18項目の結果が得られます。
今回は、その様子と結果をご紹介します。

 

まるで人間ドック!な、「わんドック」

 
今回リンリンが健康診断「わんドック」を受診したのは、TeamHOPE加盟病院の王禅寺ペットクリニックです。
人間ドックのように、検査当日は朝ごはんを抜いて、尿と便を持参していざ出発。到着すると、まずは木村真治院長から、TeamHOPEが飼い主さんに提供している 健康チェックシート「ウェルネスチェック」の質問項目と同じような、食事量や飲水量に変化はあるか、歩き方や行動に気になる点はないか、皮膚に異常がないかなど、 約20項目の質問を受けました。

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今回の取材でご協力いただいた、王禅寺ペットクリニック院長の木村真治先生

気になる点といえば、皮膚にフケが見られたこと。それを詳細に伝えようとしたところ、「 健康診断は、診察ではないんです。気になるポイントの詳細を聞いてしまうと、担当獣医師はそれにとらわれてしまいがちに。先入観を持たずに正確で客観的な診断ができるよう、ここはまず、淡々と進めていきますね。 健康診断の結果が出てから、あらためて治療が必要な病気かどうかをご説明します」と、木村先生。なるほど、納得です。

 

日頃のトレーニングの成果もあって、スムーズに、次々に検査が進行

 
続いて、一般身体検査です。目、口の中、皮膚の状態、股関節や膝関節やリンパ節、耳の中など、リンリンは次々と木村先生による 触診や視診をこなしていきます。体格をはじめ、脱水状態にないかのチェックや、お尻に体温計を入れての 検温、採血も無事に終了。

どこを触られてもOKなようにトレーニングをしてあるので、リンリン自身もそれほどストレスを感じている様子は見られません。「えらいね~、リンリン」と、看護士さんから褒められ、飼い主の私もついドヤ顔に。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 身体検査を受けるリンリン

聴診器をリンリンから離した木村先生の「心雑音はないようですね」とのコメントにも、ひと安心です。次は、レントゲン検査。 胸部と腹部のレントゲン写真を撮影するとのこと。

「レントゲン検査によって、臓器の大きさや形に異常がないか、お腹や胸に水が溜まっていないか、肺の状態などがわかります。腫瘍の発見にもつながります」と、木村先生は教えてくださいました。

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リンリンのレントゲン写真。心臓が肥大していないかどうかもチェック
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異物を飲み込んでいないかどうかなど、消化器官の状態も丁寧に診てもらいます

TeamHOPEの通常の健康診断パックはここまで。けれども、王禅寺ペットクリニックでは超音波(エコー)検査もセットになったコースもあるので、 シニアになって腫瘍や心臓病が気になるリンリンのために、腹部と胸部(心臓)の超音波検査も受診しました。

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超音波検査の様子。心臓の血流は、カラードプラーという機能で確認します

 

12歳のシニア犬、リンリンの結果は?

TeamHOPE健康診断では、外部の専門機関に血液検査を依頼していることや、A4で6ページの健康診断報告書(加えて3ページの血液検査報告書)が用意されることから、 検査結果は後日あらためて聞きに行くシステムになっています。

さて、健診から1週間後にうかがうと、木村先生は、30分以上かけて丁寧に結果を説明してくださいました。
「あ、取材だからではないですよ。病気が見つかった場合はもっと長時間の説明になるケースもあります」とのこと。

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詳しく説明してくださる木村先生

結論からいえば、リンリンに大きな病気は見つかりませんでした。
血液の腎機能(SDMA)の数値も、10歳を超える犬では悪くなっているケースも少なくないのですが、リンリンちゃんは問題なし。このSDMAの数値は、腎機能が3割ほど落ちると変化してきます。従来のクレアチニン(CRE)や血中尿素窒素(BUN)の数値の変化は、すでに腎臓病の一歩手前になってから、つまり腎機能が7割以上落ちてからしか見られませんでした。もしSDMAの数値が悪くなってきていたら、腎臓に負担をかけないように塩分やタンパク質が控えめのごはんにしましょうと、提案する予定だったんですよ」と、木村先生。

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簡単にいえば身体を元気にするホルモンとして知られる、甲状腺ホルモンの数値に関しては、「シニア以降に増えてくる甲状腺機能の低下が、皮膚炎の原因かと思っていたのですが、血液検査の結果からは問題ありませんでした」と、木村先生は語ります。 シニアになると、免疫機能が低下するので細菌感染などが起こりやすくなるそうで、「リンリンちゃんは膿皮症が疑われますが、免疫機能が落ちているところで皮膚炎の原因となる細菌に感染したのかもしれませんね」とのことでした。

血液検査のその他の結果から、肝臓、胆のう、膵臓なども異常は見られず、リンやカルシウムなどの栄養素のバランスも乱れていないと聞いて、飼い主としてもほっとしました。

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健康診断報告書。中のページにはイラストもあるのでとてもわかりやすい!

皮膚炎に関しては数日後の診察を予約。また、進行していた歯周病は、健診結果から全身麻酔が受けられるとの判断だったので、麻酔下での歯石除去などの治療を検討することに。

今回のこの検査結果は、 万が一いつか病気になったときに「健康な状態の正常値」として比較対象にしてもらえる点も、受診してよかったと思います。
さらに、今回の詳細な報告書は、 今後引越しなどがあった際には持参して新しい獣医さんにも見てもらえるので安心です。

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人間同様、シニアになってくると病気が心配です。 犬は痛みを口にせず、病気を隠そうとする本能を備えた動物です。今後も、フィラリア抗原検査の際のついでの血液検査を春に、そして秋には今回同様の詳しい血液検査とレントゲン検査や超音波検査がセットになった「わんドック」を毎年受けようとあらためて思いました。

病気は早期に発見ができれば、治療しやすくなるので、治療費の削減にもつながります。そして、 完治できる可能性を高めてあげられることにもなるのですから。

みなさんも、ぜひ、TeamHOPEの加盟病院をホームページなどで探して、 健康診断を受診してみてください。

 

<今回の取材でご協力いただいた先生>OLYMPUS DIGITAL CAMERA
王禅寺ペットクリニック 院長
木村真治 先生

獣医師。北里大学卒業。神奈川県川崎市にある本院、新百合ケ丘病院、予防注射と猫の診察室の総院長として、地域住民の方々が安心して動物と暮らせるよう一次診療の充実を計るとともに、様々なサービス提供に努めています。
王禅寺ペットクリニック

 

 

臼井京音

ドッグライター、写真家、東京都中央区の動物との共生推進員 ドッグライター・写真家として、およそ20年にわたり日本各地や世界の犬事情を取材。毎日新聞の連載コラム(2009年終了)や、AllAbout「犬の健康」(2009年終了)、現在は『愛犬の友』、『AERA』、『BUHI』など、様々な媒体で執筆活動を行う。オーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、2007~2017年まで、東京都中央区「犬の幼稚園 Urban Paws」」の園長・家庭犬のしつけインストラクターとしても、飼い主さんに…

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