「猫専用賃貸」増加中!猫と人の住環境をより良いものに

2017年4月9日、東京都葛飾区に完成した猫専用アパートメントMaison Nekoの内覧会を開催しました。当日は土砂降りにもかかわらず、なんと93名もの方々がご参加。はしゃぐ子供からご高齢の方まで、様々な方にご参加いただきました。「ここなら猫ちゃんも一杯運動できるね!」という声や、若い女性の「キャーこれ可愛い!」、「スゴーイ!(猫を)外に出せるじゃんここ!」と歓声がアチコチから響く、これまた世にも珍しい内覧会になりました。

「猫専用賃貸」に関心を持ってくださる方が増え、猫と快適に住まうことができる住環境が整うのはとても喜ばしいことです。一方で、猫と一緒に住みたいと思っている側にも心がけるべきことがあるのでは?と感じています。今回は、Maison Nekoの内覧会を通じて考えたことを書きたいと思います。

Maison Neko_572 Maison Neko外観(2017年6月5日現在、お陰様でMaison Nekoは満室です)

賃貸オーナー側の思惑「猫専用賃貸」が注目されているワケ

まずは賃貸オーナーや大家さん側から考察してみましょう。現在、貸家の着工件数は増加の一途をたどっていますが、同時に賃貸空室率もジリジリと上昇しています。2016年6月に不動産調査会社タスが発表した調査によると、東京23区の空室率は約34%、神奈川県では35%を超えたそうです。つまり首都圏の賃貸は、3戸に1戸は空室という計算になります。あなたの住まいの近くも、空き地になったと思ったらアッという間にアパートやマンションが出来上がった、なんて光景を眼にしていませんか?

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銀行の金利が安い、消費税率が引き上がる、などといった要素が重なったため、世の不動産業界はプチバブル状態。みんな「そろそろ弾けるよね」と分かっていながらセッセと新築の賃貸物件を建築しているのです。現在の日本の賃貸事情は、需要と供給のバランスが完全に逆転しているため、新築の物件であっても入居してもらえない、という状況に陥っています。家賃を安くしても入居者が集まらない場合、大家さんが打つ次の手の一つは、物件を「ペット可」にするということです。

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このような事情で産み出される「ペット可賃貸」が、本当にペットのことを考えているか?と言うとかなり疑問です。供給側の思惑としては、少ない出費で最大の収益効果を産みたいと思っています。投資目的で賃貸経営をしていれば尚更です。なので世のペット可は、ペット可と言っているだけで、大規模な、根本的なペット可対策を施している物件はほぼ皆無の状況です。

ところが私のような人間が声を大にして「猫と犬は違う生き物なんだから、猫には専用の装備を!」と喧伝したからかどうなのか、本格的な設備、人と猫が快適に暮らせる賃貸が徐々にではありますが日本全国に出来上がりつつあります。(中には『本格的』とは言い難いものの猫共生と謳った物件もチラホラと出てきています)

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「中途半端な設備投資では、猫好きの人たちを満足させることはできない」と、大家さん/賃貸オーナーが気付きつつある状況なのです。

借りる側の切実な声「猫を飼える賃貸がない!」

ペットフード協会の統計データによると、猫を飼いたくても飼えない最大の理由、それは「ペット不可の集合住宅に住んでいるから」なのです。一人暮らしをする世代の方々に、快適に猫と一緒に暮らすことができるお部屋を提供できれば、野良猫や殺処分される猫など不幸な猫を1匹でも多く減らすことができるかもしれない・・・そんな想いで1棟でも多くの猫専用賃貸ができるよう全国の賃貸オーナーのお手伝いをしています。

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お陰様で私が携わった物件、Gatos AptSeilan AptMaison Nekoは全室満室です。出来たばかりのMaison Nekoにもすでに入居待ちの方がいらっしゃいます。入居される方々は皆さん、猫を愛する良い人たちばかりなのですが、内見を申し込まれる方の中には、見学だけが目的で最初から入居する意志がない方などチラホラとマナーの悪い、残念な方がいるのも事実。

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中には「ここは猫専用だから壁紙をガリガリやって破いても良いんですよね?」と臆面もなく発言される方もいらっしゃいます。仮にも「借りている」お部屋の壁紙をガリガリすることを分かっているのなら、飼い主が責任を持って、定期的に爪を切る、専用爪とぎを用意する、保護材でカバーするなど然るべき対処をすべき、だと思うのです。

「猫を飼っている人はマナーが良い」→「猫専用賃貸が増える」

入居希望の方にお話を伺うと皆さん、色々と苦労しているのだなと気付くことが。その代表格が「猫と一緒に暮らしているけど、実は今住んでいるところはペット不可の賃貸」というもの。猫は吠えたりせず、散歩の必要もないため比較的室内で飼いやすい動物、つまり近隣住人や賃貸オーナーなどに飼っていることが「バレにくい」のです。

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私のところを訪れる方の中には「今のところは内緒で飼っているので肩身が狭くて…」とバツが悪そうに話される方も少なくありません。でも、こういう方は立派だと思うのです。だってちゃんと罪の意識を持ってペット可の物件を探されているのですから。問題は「ペット不可だけどバレないから良いよね!」と開き直っちゃっている飼い主さんたち。こういう飼い主さん、日本全国にものすごく沢山いると思うのですよ…

猫専用賃貸を増やすには、猫を愛するあなたの力が必要です

せっかく、全国の賃貸オーナーが「よし!ウチも猫専用にしてみよう!」と思い始めているのです。そういうオーナーたちに「猫を飼ってる人はマナーが悪い」と思われたくないじゃないですか?それにはこれをお読み頂いている皆さんそれぞれが「猫リテラシー」を高め、相互扶助の精神を養う必要があると思うのです。

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「貸して頂く、借りて頂く」とお互いを尊重する関係を築くことができれば、猫専用賃貸は確実に増えます。これからの不動産市場に「猫専用賃貸」の存在が当たり前のようになるには、皆さん一人一人の力が必要なのです。

木津イチロウ

猫専用賃貸コンサルタント、Gatos Apartment代表 レコード会社でディレクターとして12年間従事したのち、KDDI(株)ヘ転職、LISMO立ち上げに関わる。無類の猫好きが高じ、保護した野良猫たちのために家を建てることを決意する。2011年、世界初の猫専用デザイナーズ・アパートメント Gatos Apartmentを東京・杉並区に竣工。Gatos Aptを通じて知り合ったネコ好きな人々の声を聞くうち、人と猫が快適に過ごす社会を作りたいと、猫専用物件に関するコンサル業務のほか、猫に関するW…

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