今回取材させていただいたのは、哺乳類動物学者であり、猫の専門家として名高い今泉忠明先生。何を隠そう、私・富田が属する「日本動物科学研究所」の所長であり、動物学の師匠であります…!
《今回お話を伺った方》
今泉忠明先生
哺乳動物学者、ねこの博物館館長、日本動物科学研究所所長。著書・監修書に『最新ネコの心理』(ナツメ社)、『猫はふしぎ』(イースト・プレス)、『猫語レッスン帖』など多数。
カフェの猫たちから読み取る猫の関係図
-猫カフェの猫たちの様子から、読み取れる関係や気持ちなどはありますか?
「ありますよ。たとえば最も高い場所を寝床にしている猫は、ボス猫である可能性が高いんです。このなかでいえば、あそこに寝ているアメリカンショートヘアなどは、その可能性がありますね」
キャットタワーの高い位置に陣取る武蔵くん。触られようが何をされようが、一向に目を覚まさないツワモノです。
-猫の社会では、高い場所というのは周りを見渡しやすく、精神的に優位に立てる場所です。だから猫は高い場所を好むのですが、そういった「好ましい場所」はボス猫がなわばりとして陣取ることが多いのです。
カフェの店員さんに聞いてみると、「たしかに、武蔵はこのなかでは古参の猫で、ボス的な存在かもしれませんね」とのこと。さすが!当たっています。
店員さんが敷いた白いシーツの上に真っ先に飛び乗り、おやつをせがむレオンくん。
-次に、「おやつタイム」の合図である白いシーツが敷かれると、真っ先に駆け付けた体の大きなノルウェージャンフォレストキャット・レオンくんを見て、今泉先生はこう言います。
「食事の優先権があるのも、ボス猫です。このレオンくんも、ボス猫的存在かもしれませんね」
-先ほどの武蔵くんは、目をつむったまま起きようとしません。あれれ?いったいどっちがボス猫なの?店員さんに聞いてみると、「武蔵は一時、ダイエットのためにおやつを制限していたので、おやつタイムになっても来なくなりました。そうしたらおやつタイムにレオンが勢力を伸ばしてきた…という感じですね」
なるほど、武蔵くんがナンバー1で、ナンバー2のレオンくんが勢力拡大中、という感じのようです。
おやつタイム終了後、2匹の女子をはべらせるレオンくん(奥)
猫の「ごはんタイム」。
-猫カフェMoCHAでは、朝と夜の2回、猫の「ごはんタイム」があります。横一列になっての食事風景は壮観!
「こうやって仲良く食事できるのは猫ならでは。犬は基本、集団で1頭の獲物を取り合って食べますから、強い犬は弱い犬の食事を横取りすることもあります。猫は基本、食事をシェアするんですね。また、このように行儀よく並んで食事をするのは、子猫のとき、母猫のお乳を並んで飲んでいたことを想起させます。子猫は一度に複数産まれますが、お乳を吸うための乳首を各々決めるんです。決めることで、きょうだいと無駄な争いをしないような仕組みになっています」
猫の気持ちを読み取るコツとは
-ざっと見渡しただけで、さまざまな猫の心理や関係性を解説してくれる今泉先生。どうやったらそのように猫の行動から心理を読み取る能力をつけることができるのでしょう…?
「猫カフェは複数の猫がいますが、あちこちに目移りすると見えるものも見えてきません。1匹、観察しつづける猫を決めて、その猫をずーっと追ってみてください。その猫がなかなか動かないなら他の猫も観察してよいですが、一定の時間ごとに目を戻して。そうすると、おのずと何か見えてきますよ」
-動物園のサル山などでも同じで、1頭をずっと観察し続けると集団での立場などが見えてくるといいます。猫カフェではついつい、いろんな猫に目移りしちゃいがちですが、1匹をずっと追って観察してみるのも面白いかもしれませんね。
《取材させていただいた場所》
猫カフェMoCHA(池袋店)
池袋駅西口徒歩1分。天然素材に囲まれた柔らかな雰囲気の店内に、マンチカンやペルシャ、スコティッシュフォールドなどさまざまな猫たちが思い思いに過ごしています。
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